依頼「子を守れ」
『ラーメンは依頼の後で』をお読みいただき、ありがとうございます。
第六話では、これまでとは少し違う、命と未来に向き合う依頼が描かれます。
突然の出来事に戸惑い、一人で悩み続ける少女。そんな彼女に寄り添い、支えることも便利屋の大切な仕事の一つです。
今回は、家族との絆や命の尊さ、そして「一人で抱え込まないこと」の大切さをテーマに物語が進んでいきます。
涼真と麗華が依頼人にどのように寄り添うのか、最後まで見届けていただければ幸いです。
第六話 依頼「子を守れ」
朝の商店街。
「今日は朝から静かですね。」
麗華が微笑む。
「こんな日もあるさ。」
涼真は店主・健蔵から受け取ったラーメンを前に箸を持つ。
「いただき──」
プルルルル……
「やっぱりか。」
店主は苦笑いした。
「行ってこい。」
涼真は頭を下げる。
「ラーメンは依頼の後で。」
⸻
依頼先は、小さな公園だった。
ベンチには制服姿の少女が一人座っている。
年齢は十七歳ほど。
不安そうにお腹へ手を添えていた。
「あなたが依頼人ですか?」
少女は小さく頷く。
「……はい。」
名前は美咲。
高校二年生だった。
「誰にも相談できなくて……。」
震える声で話し始める。
「私……赤ちゃんがいます。」
麗華は驚きながらも、美咲の手をそっと握った。
「怖かったよね。」
美咲は涙を流した。
「産みたい気持ちはあります。でも、家族に言えなくて……学校もどうしたらいいか分からなくて……。」
涼真は静かに話を聞いた。
「君が一人で抱え込む問題じゃない。」
「でも……。」
「まずは信頼できる大人と話そう。」
⸻
その日の午後。
美咲は勇気を出して母親と向き合った。
最初は驚き、言葉を失った母親だったが、やがて娘を抱きしめた。
「どうして一人で悩んでいたの……。」
美咲は泣き崩れる。
「怖かった……。」
母親も涙を流しながら言った。
「これから一緒に考えよう。」
⸻
その後、家族は病院を訪れ、医師や助産師、学校とも相談することになった。
涼真は病院の外で空を見上げる。
「少し安心しましたね。」
麗華も微笑む。
「守るって、戦うことだけじゃないんですね。」
「そう。」
涼真は頷いた。
「誰かが一人にならないように寄り添うことも、大切なんだ。」
⸻
帰り道。
麗華が小さく笑う。
「今日はラーメン、食べられそうですね。」
「そうだな。」
二人は「麺処 山岡」へ向かった。
店主は笑顔で迎える。
「今日はちゃんと食べられるな!」
「はい。」
熱々のラーメンが運ばれてくる。
「いただきます。」
湯気の向こうで、涼真は静かに思った。
「今日守れたのは、一つの命だけじゃない。未来への希望だった。」
店の外では夕日が街を優しく照らしていた。
――第七話へ続く。
第六話を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の依頼は、物を探したり修理したりするものではなく、一人の少女が未来へ踏み出すための勇気を支える物語でした。
人生には、誰にも相談できず、一人で悩み続けてしまうことがあります。しかし、勇気を出して誰かに気持ちを伝えることで、新しい道が見えてくることもあります。
涼真と麗華は、答えを押しつけるのではなく、依頼人が自分で未来を選べるよう寄り添うことを選びました。その姿勢こそが、二人らしい便利屋のあり方なのかもしれません。
次回も、新たな依頼が二人を待っています。どんな出会いがあり、どんな笑顔を取り戻すことができるのか、ぜひお楽しみください。




