依頼一件、ラーメン一杯
皆さま、『ラーメンは依頼の後で』を読んでいただきありがとうございます。
この物語の主人公・涼真は、「どんなにお腹が空いていても、依頼を終えるまではラーメンを食べない」という少し変わった信念を持つ便利屋です。
第一話では、小さな依頼を通して、人を助けることの喜びと、約束を守ることの大切さを描きました。
忙しい毎日の中でも、誰かの笑顔のために走り続ける涼真の姿を、温かい気持ちで見守っていただけたら嬉しいです。
それでは、第一話をお楽しみください。
第一話 依頼一件、ラーメン一杯
朝八時。
便利屋「涼真サービス」のシャッターがゆっくりと開く。
「今日も頑張るか。」
青年・涼真は工具箱を肩に掛け、依頼帳を開いた。
そこへ一本の電話が鳴る。
「はい、便利屋・涼真サービスです。」
『すみません……猫が木から降りられなくなってしまって。』
「分かりました。すぐ向かいます。」
電話を切ると、腹の虫が鳴いた。
「……そういえば朝飯食べてないな。」
商店街には、行きつけのラーメン店『麺処 山岡』。
暖簾から漂う醤油スープの香りが食欲を刺激する。
店主・健蔵が笑顔で手を振った。
「おーい、涼真! 朝限定ラーメンあるぞ!」
涼真は店の前で立ち止まる。
「食べたい……。」
だが、すぐに首を横へ振った。
「ラーメンは依頼の後で。」
そう言い残し、依頼先へ走った。
⸻
公園では、一匹の三毛猫が高い木の枝にしがみついて震えていた。
下では少女が泣いている。
「ミルク……。」
「任せて。」
涼真は脚立を立て、慎重に登り始めた。
猫は警戒しながら後ずさる。
「大丈夫。怖くない。」
優しく声を掛けると、不思議と猫は大人しくなった。
そっと抱きかかえ、地面へ降りる。
「ミルク!」
少女は猫を抱き締めて涙を流した。
「ありがとうございます!」
「無事でよかった。」
依頼完了。
⸻
時計を見る。
午前十時。
「さて……。」
再びラーメン屋へ向かおうとした、その時だった。
プルルルル……
また電話が鳴る。
「もしもし。」
『すみません! 家具を運ぶのを手伝ってもらえませんか?』
涼真は空を見上げた。
腹が鳴る。
「……分かりました。すぐ行きます。」
ラーメン屋の前を通る。
店主が苦笑いした。
「また食べないのか。」
「依頼が終わったら必ず来ます。」
「兄ちゃん、それ毎回言ってるな。」
二人は笑い合う。
涼真は工具箱を持ち直し、次の依頼へ向かって走り出した。
その頃、ラーメンはまだ少しだけ湯気を立てながら、涼真の帰りを待っていた――。
(第二話へ続く)
第一話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
便利屋という仕事は、人の数だけ物語があります。
次回は、涼真のもとへさらに難しい依頼が舞い込みます。果たして彼は無事に依頼を終え、念願のラーメンを食べることができるのでしょうか。
この作品は、一杯のラーメンをきっかけに、人とのつながりや優しさを描いていくヒューマンドラマです。
皆さまの日常にも、小さな幸せや温かい出会いがありますように。
次回もぜひお付き合いください。




