ラーメンは依頼の後で
皆さま、はじめまして。
『ラーメンは依頼の後で』 を手に取っていただき、ありがとうございます。
この作品は、「どんなにお腹が空いていても、人との約束を大切にする」という、一人の便利屋・涼真の小さな信念を描いた物語です。
依頼先では笑いあり、涙あり、ときには思いがけない出来事に巻き込まれながらも、依頼人の笑顔のために奔走する涼真。
そして、すべての依頼を終えたあとに食べる一杯のラーメンは、どんな高級料理にも負けない特別な味になります。
日常の中にある小さな幸せ、人とのつながり、そして一杯のラーメンの温もりを感じていただけたら幸いです。
それでは、涼真と一緒に、今日も新たな依頼へ向かいましょう。
ラーメンは依頼の後で
昼下がりの商店街。
暖簾から立ち上る豚骨の香りに、青年・涼真の腹は盛大に鳴った。
「……腹減った。」
目の前には、行列のできる人気ラーメン店。
今にも店へ飛び込みたい。
だが、その時だった。
スマートフォンが震える。
「至急お願いできますか?」
依頼主からのメッセージだった。
涼真は空を見上げ、大きくため息をつく。
「ラーメンは……依頼の後で。」
そう呟き、店を通り過ぎた。
店主は寸胴をかき混ぜながら、その背中を見送る。
「兄ちゃん、また来いよ。」
涼真は軽く手を振った。
「必ず来ます!」
⸻
依頼先は古びたアパート。
玄関の前には困り果てた女性が立っていた。
「本当に助かります……。」
話を聞くと、亡き祖父が残した古い木箱がどうしても開かないという。
鍵はなく、壊したくもない。
涼真は工具箱を開き、慎重に鍵穴を調べ始める。
「なるほど……。」
数分後。
カチッ。
乾いた音とともに木箱が開いた。
中には一冊の日記。
そして家族写真。
女性は涙を浮かべながら写真を抱きしめた。
「ありがとうございます……。」
「いいえ。開いてよかったですね。」
依頼は無事終了。
時計を見る。
午後二時半。
「まだ間に合う!」
涼真は全力でラーメン屋へ向かって走った。
商店街を駆け抜け、暖簾をくぐる。
「いらっしゃい!」
店主が笑う。
「兄ちゃん、本当に戻ってきたな!」
「約束しましたから。」
湯気の立つ一杯が目の前に置かれる。
黄金色のスープ。
香ばしいチャーシュー。
輝く麺。
涼真は箸を持ち、小さく笑った。
「いただきます。」
一口すすった瞬間、疲れが一気に吹き飛ぶ。
「……うまい。」
依頼を終えてから食べる一杯は、何よりも格別だった。
その日、涼真は心の中で静かに決めた。
「どんなに腹が減っても、依頼は先。ラーメンは、その後。」
登場人物
涼真
本作の主人公。24歳。
困っている人を放っておけない便利屋。
どんなに空腹でも依頼を優先する真面目な性格で、ラーメンが大好物。
⸻
桜井 美咲
祖父の遺品である木箱を開けてもらうため、涼真に依頼した女性。
祖父との思い出を大切にしており、優しく礼儀正しい。
⸻
山岡 健蔵
人気ラーメン店「麺処 山岡」の店主。
豪快な見た目とは裏腹に人情に厚く、涼真のことを応援している。
⸻
山岡 翔太
店主の息子。
父の店を手伝う青年で、明るく元気な性格。
涼真とは顔なじみ。
⸻
木村 大介
涼真の友人。
「腹が減っては戦はできぬ」が口癖。
依頼より先にラーメンを食べろと毎回勧めるが、いつも断られている。
⸻
神崎 誠
依頼を紹介する仲介人。
困っている人と便利屋をつなぐ存在で、涼真にさまざまな依頼を持ち込む。
⸻
故・桜井 恒一
美咲の祖父。
木箱の中に家族写真と思い出の日記を遺した人物。
物語では回想を通して登場し、家族への深い愛情が描かれる。




