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消えていく輪郭

世界は変わらない。


だが確実に、“薄くなっている”。


レインはその中を歩いていた。


足音はする。


空気もある。


それでもどこか現実ではない。


そんな感覚がずっと続いている。


グランは隣にいる。


だがその存在は、


もう昨日よりもさらに薄い。


レインは小さく息を吐く。


「もう、見えなくなってきてますね。」


グランはすぐには答えない。


少しだけ間を置いて言う。


「それでいい。」


その言葉は、説明ではない。


確認だった。


レインは顔を上げる。


グランの輪郭は、揺れている。


まるで“記憶の方が現実を侵食している”ように。


レインはゆっくりと問う。


「どこまで行くんですか。」


グランは空を見ない。


地面も見ない。


ただ、どこか遠くを見ている。


「もう行かない。」


その言葉は静かだった。


だが重かった。


レインはその意味を理解してしまう。


“移動しない”ではない。


“存在の終点にいる”ということだ。


風が吹く。


だが何も動かない。


ただ、揺らぎだけがある。


グランが静かに続ける。


「俺は、ここで終わる。」


レインは息を止める。


その言葉は別れではない。


すでに起きている事実の確認だった。


グランはゆっくりとレインを見る。


その目はもう役割ではない。


ただ一つの意志だけが残っている。


「お前は残れ。」


レインは何も言えない。


その言葉の意味は重い。


命令ではない。


願いでもない。


ただ“構造の最後の配置”だった。


グランの輪郭がさらに薄れる。


レインはそれを止めない。


止める理由がない。


そして止められない。


グランが最後に言う。


「悪くなかった。」


その一言で、


すべてが終わる。


輪郭が消える。


存在が薄れていく。


だがそれは悲しみではない。


ただ“役割の終了”だった。


レインは一人になる。


それでも世界は静かだ。


そして確かに、


まだ続いている。


レインはゆっくりと空を見上げる。


そこには何もない。


だがそれが、


今のすべてだった。


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