残るということ
世界は静かだった。
だがそれは空白ではない。
“整理された静けさ”だった。
レインはその中に立っている。
もう何かを選ぶ必要はない。
何かを壊す必要もない。
ただ残っている。
それだけだった。
グランは隣にいる。
だが以前のような輪郭はない。
はっきりしているのに、
どこか透けている。
レインは小さく息を吐く。
「終わったのに……まだあるんですね。」
グランはすぐには答えない。
しばらくしてから言う。
「終わったから、ある。」
レインは顔を上げる。
その言葉は矛盾しているのに、
一番しっくりきた。
中心はもうない。
だがその“空いた場所”が、
逆にすべてを支えているように感じる。
レインはゆっくりと歩く。
足音がする。
それだけで少し安心する。
グランが後ろから言う。
「お前は残る側だ。」
レインは振り返らない。
「残る側って……何ですか。」
グランは少し間を置く。
「終わった世界で、まだ見ているやつだ。」
レインは歩き続ける。
その言葉に否定はできなかった。
自分にはまだ“視界”がある。
まだ“感じるもの”がある。
それは救いではない。
ただの残機能だった。
グランが静かに続ける。
「俺はもう長くはない。」
レインは足を止める。
振り返る。
グランはそこに立っている。
だがその存在は、
少しずつ薄れていく。
レインは小さく言う。
「どこに行くんですか。」
グランは答えない。
少しだけ空を見てから言う。
「戻る場所はない。」
その言葉で、
レインは理解する。
グランは“終わりの中に残された結果”だった。
そしてそれも、
いずれ消える。
レインは何も言えない。
ただ、その事実を見ている。
世界は静かだ。
だがその静けさは、
もう怖くない。
レインはゆっくりと歩き出す。
残るということは、
終わりを否定することではない。
ただ、
そこに在り続けることだった。




