選ばれる側
中心の奥で、
師匠の存在とグランの視線が交差していた。
だが、そこに“会話”はなかった。
言葉はすでに過去に置き去りにされている。
今ここにあるのは、
“結果だけ”だった。
レインはその中心に立たされている感覚があった。
自分は関係者ではないはずだった。
ただの同行者のはずだった。
それなのに、
空間は明確に“自分を含めている”。
師匠の声が響く。
「まだ……選ばせるつもりか。」
グランは答えない。
その代わり、一歩だけ前に出る。
その瞬間、
空間がわずかに収束する。
レインは息を飲む。
“何かが決まる直前”の圧。
中心が動いているのではない。
“判断している”。
そのことに気づいた瞬間、
レインの背中に冷たいものが走る。
「レイン。」
グランの声が低く響く。
振り返ると、グランはもうレインを見ていた。
「ここから先は、お前も関係者だ。」
レインは言葉を失う。
関係者。
その意味が一番重かった。
師匠の声が続く。
「連れてくるべきではなかった。」
その言葉は、グランに向けられていた。
グランは静かに答える。
「分かってる。」
その一言で空気が変わる。
レインは気づく。
自分は“巻き込まれた存在”ではない。
最初から、
ここに入る条件を持っていた。
中心がゆっくりと反応する。
空間の奥に、
もう一つの“扉のようなもの”が浮かび上がる。
だがそれは出口ではない。
レインは直感する。
あれは“分岐”だ。
師匠の声が低くなる。
「選べ。」
グランの視線がレインに向く。
初めてだった。
明確に“選択を委ねる目”。
レインは息を飲む。
選ぶ?
何を?
なぜ自分が?
中心が静かに圧を増していく。
まるで、
答えを待っているのではない。
“答えを出させるために存在している”。
レインの中で何かが揺れる。
夢。
光。
夢を終えた少年。
夢を追う人々。
それを見てきた自分。
グランが言う。
「ここでは、誰も逃げられない。」
レインは一歩後ろに下がる。
だがそこにはもう何もない。
戻る道は消えている。
選ぶしかない。
師匠の声が響く。
「お前はどちら側だ。」
その瞬間、
レインの前に二つの“感覚”が現れる。
進むか。
止まるか。
だがそれは選択肢ではない。
“存在の方向”だった。
中心が、静かに応える。
レインの胸の奥で、
何かが確かに動いた。




