第3話 灰被りのオークとデミゴッド
出発準備。
その日のうちに村人が戻る前に出発する事にした俺たちは準備をする。
オークは自己治癒力を高める魔法陣の上で胡座で精神統一。
ライラは自宅から大切なものや役に立つものを集めると。
因みに俺は何もしていない、指示されていないし自分から動いて何かする事もないからね。
......無能って思われそうだから、その辺でも漁るかライラの手伝......
「ってうわ、痛て......」
背が高くなったせいで木の根っこに引っかかって転けちゃったよ......
って何だこれ?ロケットペンダントか?
なんて思い開けて見るとライラと恐らく両親が写った写真が入っていた。
「この世界にはカラー写真があるのか?科学か?魔法か?どちらにせよ楽しみだなぁ」
俺は電子工作やプログラミングなどをしていた科学オタクであるのでウキウキだ。
とりあえず、ライラにペンダントを渡さないとと思い彼女の家に向かった。そうすると瓦礫を投げ飛ばして焦るライラを見た。
「ライラ!」
「ちょっと待って、大切な物がないのっ。私の真名魔法はちょっと理性が飛んだり乱暴になるから落としたのかも......」
少し泣きそうな声色で手を土で汚しながら必死に探すライラの前に開いたペンダントを差し出した。
「これだろ?大きな傷はないよ、安心して」
見せた瞬間、手を拭いてペンダントを受け取り写真を見る。
「あぁ、良かったぁ......貴女って肝心な時に的確に助けてくれるわね、ありがとう」
ライラは少し涙を流しペンダントを握る。
心に余裕がないからなのか貶しているのか褒めているのか微妙な事を言う。
「良かったよ、他に手伝えることは?」
仕方ねえよ基本的にドジだから......まあそのドジで見つかったから良いかな。
「大丈夫、必要な物は集めたわ」
「そりゃ何よりだ、村人は?どうするんだ?」
「いいのよ、王国から派遣されたレリエル家をぞんざいに扱ったのだから。......と言っても、私の魔法のせいだけどね、両親に罪は無かったのに」
派遣というよりは左遷だが無自覚にプライドが高いライラだが自嘲気味に笑う。
元を辿れば己のせいだと思い詰めてしまう繊細さもある。
「まるで自信に罪がある様な言い方だな?罪は生まれ持つモノではない、行動で生まれる。だからライラとご両親に罪は無い、勝手に決めつける方が悪だ!」
明るくライラの肩に手を置き励ます。
「だと良いなぁ......」
下唇を噛んで呟いたライラを見て悲しくなる。
「そうだよ、ほら行こう......っとそうだ。魔法と真名魔法について気になっていたんだ、何が違う?」
「貴女の世界だとお伽話の力なのよね?こちらでは当たり前にあるモノで学んだり我流で編み出したりと様々よ」
「ひょ〜夢があるなぁ」
なんて呑気に返す。
「そして真名魔法、これは誰しもが生まれ落ちた時にもっているもので、親から名をもらう前に魂に刻み込まれたモノだか真名魔法と言うの、諸説ありよ」
「じゃあ俺の真名魔法はなんなんだ......?腕をクロス!......出ないや」
やはり模倣なのか?でも今は出来ない......
この世界にワクワクするが俺のは少し変な真名魔法だな。
「イレギュラーよ。普通は同じ真名魔法の人間はいない、死後に被ることはあるわ。貴女が私の真名魔法を使った時、私に魔力が戻ってきたの、そこも変」
「変......か......」
俺は顎を触り悩む。
「ああ!別に悪い意味じゃないのよ!ポーションよりも回復した気がするし......そうね、私の真名魔法を代償、つまり魔力を払い使えるのかしらね」
「ほお......ビデオ屋でレンタルするみたいだなぁ」
金、つまり魔力を払って他人の魔法を使うのかぁ、多分強いけど、どの範囲までなのだろうか。
「ビデオ屋?」
そうかビデオ屋なんてあるわけないか。そもそも俺もネットでレンタルするかサブスクだしな。
「ビデオ屋は映像作品をお金払って借りるモノ、私は魔力を払って相手の魔法を借りる者」
「あー動画ね。そっちにもカメラはあるのね?こっちではカラーの動画がやっと撮れる様になったのよ!画質も悪いしお金もかかるけど」
やはりこちらの世界にも科学の力はあるのだなと驚いた。
「こっちは科学の世界だからもっと進んでる。目で見る世界と同じで誰でも使えるほど安い」
「あら、羨ましいわ」
「魔法の方が羨ましいけどね、互いに無い物に惹かれるのは仕方ないな」
「そうね〜、今は魔力で動いているらしいけど部品だけで動く様になるとかなんとか」
「おお!詳しく知りたいな」
「そうね、王国を乗っ取るのだから技術の資料はよめるんじゃないかしら?」
それを聞いて思い出した王国についても知りたかった。
「そうだ!王国についても教えて欲しい!あと一般常識も!」
「常識は今既にあるのじゃないかしら?ヒカリに腹が立つ事は今の所無いから」
割と怖い事を言うな......意外にも素で怒りっぽいのだろうか?
常識は国によってすら違うが、ここは日本の常識で大丈夫なのかな......
「そりゃ何よりだ」
少し変な汗が出る。
「あとシュベリ王国は鉱物資源で成り上がった倫理観も道徳も追い付いてないクズが王サマで王政よ。ここは特にカスで特に大切にされているわ」
と腕を組みながら嫌そうに言うライラ。
「特に大切?」
カスでクズなのに大切なのか?そんなに権力があるのか?
「あいつはラッキーだったの、何も無い荒野を占領して王国樹立宣言した時はバカにされたけど、そこには鉱山資源が大量にあったの。だからバックには更なる大国がいるわ」
えっ?それって叛逆したらだいぶマズいんじゃないんですかね?ライラさん??
「叛逆したらマズいのでは......?」
「いいえ、どの国も貿易が出来れば良いだけ。シュベリを好いてないの......そろそろ行きましょう、村人が戻ってくるわ」
そう言いながら手を伸ばして来た彼女の手を取り壊れた家から出た。
オークは折れた牙も治ったようて同族を焼いて食べていた。
「マジか......共食いって治療不可能な病気になっちまうんだぜ?それも末路は脳みそがスポンジみたいにスカスカだぜ?」
俺はかなり焦って話すもコイツは呑気に脊髄を齧りながら話す。
「俺は突然変異だから問題は無い、それよりも両親を実質殺した俺を見逃して頂いた事に改めて礼を言う」
さっきの様な蛮族さは無く丁寧に頭を下げるオーク。
やはりコイツは本当はやりたく無かったのだなと再確認。
「......いいわよ。王に尻拭いをさせるから。それよりも丁寧に話せるのね、蛮族は演技?」
言っちゃうんだ......
「殺したくも無い人間2人を殺し、そのあと子供まで殺せだなんて正気でやってられなくてな。自分を鼓舞する為にオークらしく野蛮にしていた」
人間より人間味強いんじゃねぇか?こいつ?
「かなり人間味が強いな、あんた......。てかライラは逆に野蛮っぽかったけど......」
普通は逆よな。
「アレはバーサーク使ったから......逆に私より使いこなしていた貴女は理性が割とあったわね」
ライラは不思議そうにこちらを見て言う。
「そ、そうなのか?」
「腕の模様も私より広かったしね。私はまだ理性を保ち切れないわ。そのせいで村に飛ばされたんだけどね......」
遠い目で話すライラ。
「何が関係あるの?」
なんにもこの世界の事情に詳しくないので理由がわからない。
「ベルセルクは強いが危険、王族は近くにそれを置いておくと破滅が待っているって迷信というか伝承ね......それよりもオークって呼ぶの不便だし、ほら!あなた自己紹介しなさい!」
とオークの方に手を向けた。指を刺さないところに育ちを感じるな。
「俺は言った通り異端者で名前もない。はみ出しもののクズたちからも長かリーダーと呼ばれていた。一度も名前なんて聞かれなかった」
おっ!命名チャンス!要らないって言われたらどうしよ......まあいいか言ってみよ。
「じゃあ俺が名前を考えようか!」
「そうだなぁ、ファーストネームだけ頼もうか。見逃してもらった第2の生の様なものだしな」
やったー!名前つけるの好きなんだよね、なんでか知らんけど支配欲が強いのかな?
「そんな重く捉えなくていいよ、ただあまり人には死んでほしくないだけだから。んで名前は......アシュグリムなんてどうかな?」
「灰の別名のアッシュに恐ろしいと言う意味のグリムとは直球だな。気に入ったぞ!灰被りを怒らせるとどうなるか示そう。そうすれば同胞は差別されない」
そうか、コイツにとって同胞は突然変異個体だけの事を言うのだな。
「いやー良かったぁ!んじゃあ、もう仲間なんだし真名魔法が何か詳しく教えてよ!あと自己紹介の続き!」
「ん?ああ、名はアンチェインウルフ、巨大な狼で武器にもなる。1番の利点は応用が効く事だな、詠唱や予備動作がほぼ無く色々できる」
「ほへー......いや、年齢とか好きな食べ物とか趣味は?」
「馬鹿以外と話すのは久しぶりでそんな発想が無かったな。年齢は40半ば、好きな食べ物は骨髄、趣味は読書や新たな知見を得る事だ......終わっていいか?」
はやっ!俺とライラは間違いなく同じこと思ったはずだ、さすが高知能個体なだけあると。
「かなりの年長者ね、驚きよ。頼りにしているわ、アシュグリム。じゃあ次は私、私の名前はライラ=レリエル、17歳。好きな食べ物はヒカリの作ったハンバーガーモドキってモノとお酒かなぁ。趣味は思いつかないわ、両親とよくボードゲームをしたかしら。じゃあ次!ヒカリよろしくね!」
この発言にアシュグリムは目に見えて後悔していた、本当に人間よりヒトだよアンタ。
それと17で酒飲んでもいいんだなぁ。
「えーっと何から言えばいいかな?実は異世界から来たんだよね。容姿は全然違うし前は男、今は両性で人間」
それを聞いた彼は目に見えて驚く。
「異世界!?そして人間!?嘘だ、容姿と性別からしてお前は亜神だ!神の権威の色をした髪に、雪の様に透き通る白肌に極め付けは金銀の眼だ」
訳がわからない、俺に神が混じっているのか?どこでいつそうなった?
転生する時に誰かと会話した気がするがその時か......?
「マジか......」
俺が唖然としている間にアシュグリムはヒートアップしている。
「模倣した魔法を本人より使いこなす素質、そして亜神特有の強靭な肉体と魔力量......これは鍛錬すれば最強の魔王の誕生だ!!」
「そんなに?照れるなぁ〜」
「そうだ!こんなに本を読み漁って良かったと思った事はない!でなければ目の前の巨躯の女がデミゴッドだと気づかなかった!」
マッドサイエンティストみたいな喜び方をしているな......。
「魔王ね......勇者とかの方が憧れるけど平和に繋がるならなんでもいいかぁ」
それに対して釘を刺すライラ。
「独善のクズにはならないでね?必要悪もあるし世の中そんなに簡単じゃないのよ......」
不安がるな、俺はわかっているさ。
「誓うよ。でもデミゴッドって決め切れなくない?」
「もう俺からしたら決まった様なモンだ。根拠としては......その木を殴ってみろ、簡単に折れるだろう」
拳に巻く布を渡され準備をして大木の前に立つ。
「拳擦りむけて怪我したら回復してくれよな......はぁ!!」
弱気に俺は殴ったが驚愕、大木は容易く折れて前方に吹っ飛んでいく。
「わあ、村のシンボルが真っ二つね。この怪力にバーサークを上乗せしたから瞬殺したのねでも慢心しちゃダメよ!何も鍛えてないのだからね!」
「そ、そうだね」
「でも逆にいえばここからすごい伸び代があると思うと頼もしいわね〜」
「ははっ」
もっと褒めて......創作物の異世界転生みたいにもっとチヤホヤして......
そうしているとアシュグリムは装置を取り出してきた。
「それは?」
「これは魔力量測定装置だ、お前に向けて......ん?ダメだ、お前の魔力量は相当らしい」
「マジで!わーい!!」
そんな俺を微笑んで見てくるライラ。お母さんかな?
「だが気をつけろよ、魔力量が少なくても回復が早いやつの方強いこともあるからな。特にそう言う奴は搦手に特化してやがる、無策に殴り込むなよ」
「は、ははっ」
乾いた笑いしか出ない、無双は出来なさそうだ。まあそれなりに活躍はできるだろう、険しい道のりだろうが。
アシュグリムは馬車とウルフを召喚し荷物を詰め込み彼が手綱を握り旅立った。
「ねぇ?アシュグリムっていい名前だと思うのだけど長くない?愛称とか作らないかしら?」
そうしていると前方から即返事をする。
「じゃあアッシュで頼む。グリムはその辺に普通にいる名前だからな」
「わかったわ〜」
そう直ぐに決まると俺は道のりがどれくらいか尋ねていない事に思い出す。
「そう言えば何キロくらいあるの?」
「正確な長さは知らないが楽々に進めても何日かはかかるぞ」
「ガーン......」
こうして一つ目の世直しの旅が始まった。
ここから旅が始まります。




