第4話 旅の幸先が悪い件について
もう夜だ、村からも離れたし野宿するらしい。アッシュも魔法を使い続けてくたびれてる。
そんな彼は木々の間のかなり広いスペースを見つけると地に手をつけた。
「この辺りだな」
「何すんの?テントでも出すの?」
我ながら先ほどまで殺し合いしていたとは思えないノリで話しかけている。
「帰宅しなかった事を疑問に思わなかったのか?俺は家を持ち運んでいるんだよ」
そう言いながら前方に巨大な魔法陣が現れた途端に、かなり大きい家が現れた。
「すごい芸当ね、生活必需魔法でも面倒な方ね」
「生活必需品みたいなノリの魔法があるのね......」
「あら?鏡を出すのもそうよ、つまり既に見ていたって事ね」
そう呑気にしているとアッシュが倒れそうになる。
「おいおい!大丈夫かよ!」
肩をクイっと持ち起こした。
「ああ、デカい家出すのは疲れるんだ......そして警備の代わりに俺の狼を出す」
「......?そいつを出していると疲れるから休むんだろ?」
「アンチェインって言ったよな?俺の手から離れると周囲から魔力を吸収するんだ。だが欠点がある、力は半減し俺から50m以上離れられない。そしてその状況で狼がやられるとクールタイムが発生する」
何故だかかなり深刻そうに言う。
「なんでそんな深刻そうにする?林道から少し離れたところじゃないか?」
「私の村が辺境の地と言われる理由がね、魔物が強いからなの。この辺で単独行動をすれば並の人間は直ぐに死ぬわ」
そんなハードなのか......
「こんなに穏やかな雰囲気の森なのにか」
つまりアレだな?レベル1でスタートしたのに中盤の森に放り込まれたって事だな?
助けて〜!!なんでこんな場所に転生させたんだよ!!ありがちなウハウハ異世界ライフは何処に〜!!
俺は少し視界がぐらっとして気分が悪くなる。
「この穏やかさは森を害するモノが直ぐに死ぬからだな、早く家に入れ。今更取って食っちまうなんて無いのだから」
アッシュはドアを開けてくれた。
「デッケェドアだな」
「俺は320センチくらいあるからな」
「私の2倍以上......」
そんなこんなで入るとハーブの様な芳香剤が虫除けの匂いがする。
家具は揃っており本当にこの家だけで気軽に旅ができそうだ。
「こりゃあ快適でいいな」
「だがあまり使いたく無いがな、本当に疲れる......そうだムラサメ、ちょっとこっち来い。ライラは風呂を使って良いぞ」
彼は、ちょっとうんざりした感じで言いながら手招きしてくる。
俺はキョロキョロしつつ着いて行くと武器庫に通された。
「お前に礼をと思ってな、俺にとっては小さいから使えない、くれてやる」
そう言うとリボルバーみたいに中折れしている剣を渡された。
「ありがとう!これは?カートリッジ?」
「そのカートリッジに魔法を込めて使える、だからお前の真名魔法の劣化版武器だ。無いよりは良いだろう」
俺は目を輝かせて持ち上げ眺める。
「こんなモノどこで?この世界ではありきたりな武器?」
「俺を襲ったやつから命の代わりに奪ったが他に類似した武器は知らないな。それと王国の印があるから国の試作武器だろうな」
「要はプロトタイプかぁ、いいねぇ!じゃあ自分の魔力を......ってどうやるの?」
「馬鹿!やめろ!お前の魔力量的に家が吹き飛ぶ!この魔導書を読め、魔法文字の読み方だ。一応魔力の扱い方を伝えると心臓から放つ末端の部位の神経を連結させる感じだ」
ピカピカの本を渡された。
「ピカピカだな?」
「ああ、俺のガキが出来たら使う予定だから綺麗に使えよ」
結婚願望とかあるんだ......そりゃあそうか。
「ちゃんと綺麗に返すよ」
「そうしてくれ、お前も俺と戦って疲れただろう。ライラは風呂を出たらしいし入れ」
めちゃくちゃ普通の人間的な生活しているんだなぁ。
俺なんて風呂キャンする時あるのに。そう思いつつ入ってさっさと出た。
「ふぅ、異世界って風呂入れないイメージだったから良かったな。でも湯船に浸かりてえ......」
呑気に上裸で使っていいと言われた部屋に向かう途中に家が揺れた。
「おー震度4くらいか?」
なんて呑気に日本人マインドでいるとライラの悲鳴が聞こえたので走った。
「おいどうした!?」
「いや、今かなり揺れたよね?それにっ!服を着て!もう男じゃないんだから!!」
赤面しつつも手のひらから魔法陣を出しつつ私の服を高速で編み上げた。
すごい手捌きに無言で立ち尽くしていたら無理やり着せられた。
「すげぇ!ありがとう!魔法の天才じゃん!」
「真名魔法は戦闘用だけど素質はこっちよりなのよね〜というか貴女の服は全然無い余分に作るわ」
何故だかライラはかなり親切にしてくれるし可愛いので勘違いしそうになるっ!!
と揺れを忘れていたタイミングでどすどすと足音が近づく。
「アンチェインウルフが交戦中だ!襲撃だ!」
そうアッシュが焦っているとアンチェインウルフが家を突き抜けて転がってきた。
「この傷はガロウッドかっ。同じ狼型だから縄張り争いに発展したか......すごくマズいぞ」
ウルフには太い枝が刺さっており、足は棘の枝で動けなくなっていた。
「マズいって?そんなに強いの?2人で頑張ったら1匹くらい勝てないの?」
そんな楽観的なバカの思想を打ち壊す事を言う。
「こいつらは群れる、そして俺は真名魔法が実質封印状態」
それに続いてライラも言う。
「1匹の強さは兵士約5人分、雄を囲う様に合計5匹で群れるのよ......ほら、もう手前にいるわ」
壊れた壁の闇の向こうに赤く目を光らせる樹木が絡まって形を成している狼がいた。体高はライラ並みでもう横に広がり始めた。
「囲まれるっ!真名魔法ッ!バーサーク!!ヒカリッ!早く私に触れろォ!!」
腕をクロスさせ発動したライラの手をタッチする為に手を伸ばした。
「わかっ、うわっ!!ライラァア!!」
「ぐわぁあ!!」
こいつら賢いッ!ライラに2匹飛び込んで向こう側に吹っ飛んでいってしまった!
「クソッ、子供のライラに加勢する。お前は1人で粘れ。素質はあるんだ、中の下レベルの魔物はやれる筈だっ!」
嘘だろっ!?ビギナーの俺を放置!?
し、仕方ない......剣を構えるしかない。
「はぁ、やるだけやるか。さぁ早く来なよ!俺が相手だ!3匹まとめてきやがれってんだ!!」
でも殺したくないな......そんな生ぬるい事言ってられそうにないが......
ガロウッドは3匹、目を光らせる唸りながら俺にヘイトが向いた。
ソロでの初陣が始まる




