18.ダンジョンに挑戦! その八
中ボスである一つ目の巨人からドロップしたのは、なかなかの数値を誇るバリアが自慢の兜であった。
一つ目の瞳がデザインされたその兜を身に着けるつもりはさらさらないのだけど、スマートフォンから装備をすれば、なかなか有用な防具となる。
さっそく装備をして、私達は次の階に降りてその性能を確かめてみた。
「うわー、全然減ってない。凄いわー」
「ええなー、確定ドロップ。ホンマ羨ましい。ウチはドロップせんかったのに」
恨みがましいアンミィを横目に、私は意味もなく木のモンスターが繰り出す鞭のようにしなる根っこを腕に受けた。
スマートウォッチで確認すれば、さほども減っているようには見えない。どうしようもないモンスターだと思ったけれど、ここだけは感謝しておこう。
「いや、見られて喜ぶド変態の割に、いい装備を落としてくれたよ」
「棘のある言い方やなぁ。もしかしたら、あちらにはあちらの事情があるかもしれへんやろ?」
さっくりとモンスターを倒したアンミィが、呆れながらそう言った。
「どんな?」
「腰蓑を奪った相手の実力を認めるのがルールとか」
あぁ、なるほど。そういった文化のようなものがあるのなら、一概にド変態と表すのは失礼にあたるか。
「モンスターにもそういう生態があるのなら、魅了が効くかどうかの目安にもなりそうだよね」
「せやせや。それを調べて図鑑に纏めたら、後世の役に立つんとちゃうか?」
立つのだろうけれど、私がそんなマメな性格ではないという現実。
「二人とも。話すのは構わないけれどもう少し緊張感は持ってね。何があるか分からないのがダンジョンなのだから」
「はーい」
そうアンミィに合わせて返事をしてみたものの、私の心はどこか浮足立っているような、落ち着かないような。むしろこれは、一息ついたという感じなのだろうか。
「でもさ、無事に中ボスも倒したんだし、一度休憩してもよくない?」
「それもいいのだけど、中ボスが出たということは折り返しなのよ。ここで更に進んでおくと、日が暮れるまでに最深部へ辿り着けるかもしれない。そうすれば、次の日はひたすら狩りに充てよう。なんて出来るでしょう?」
言いたいことは解るけど……。と、私はため息をついた。
アンミィは、と隣を見れば、気持ちを切り替えたようでやる気満々の表情。切り替えの速さは見事だなぁ、と感心してしまう。
そう言えば、と彼女が日頃から行なっているレトロゲームの配信を思い出した。
どんなに難解な謎で、自力で解くのが不可能なようなものでも、その時はイライラと感情を爆発させていたのに、いざコメントなどで攻略法を教えられると、打って変わってにこやかにゲームを進めてしまう。
その素直さが、視聴者に愛されるコツなのだろうか。動画では顔を出さずに、自身で描いたという可愛らしい猫をモチーフにしたイラストを使っているのも、もしかしたら功を成しているのかも。
「そう言えば、アンミィが配信している動画って基本的に生配信だよね? 体当たりで挑戦して、行き詰まったら視聴者に教えてもらう感じの」
「せやで」
「今日はやらないの?」
「別に、毎日やっているわけでもないしね。それに生配信だけじゃなくて、普通に動画として作ったやつも配信しているから、こういうタイミングでは自動でアップされるように設定しとる」
へぇ。そんな機能もあるんだ。事務所からはそういったこともしてみたらどうだ、なんて話もあるのだけれど、なんとなく、そういうコンテンツの操作って苦手なんだよなぁ。
「サナさんは動画の配信とかしたことある?」
「ないけど、アンミィの動画で一緒にゲームをしたことならあるわよ」
「え、そうなの?」
「格闘ゲームの相手をしてもらった。サナさん、あの手のゲーム強いから」
わー、ボタン連打の私には代わりが務まらないパターン。だからまったく羨ましくない。
「私でも出来るゲームとか、ないの?」
「ボタン連打するだけでクリアできるゲームかぁ。……クリアするのに運しか必要としないゲームとか」
そんなのあるんだ。……え、それって運次第では一生クリアできないパターンもあるのでは?
「後はアドベンチャーゲームなんかもいいかもしれへん。謎を解くために、ひたすら話を訊くだけだけだから。今度やってみいひん?」
それ、連打して会話を飛ばしてしまっては一生謎が解けないパターンでは? そして、そんな私の姿を見て笑いたいがためだけの提案では?
「うーん、気が向いたらね」
曖昧に返事をして、今度こそちゃんとダンジョンに気を向けた。




