17.ダンジョンに挑戦! その七
どうすればモンスターに魅了が効くのか。
それは、モンスターの見た目や行動に現れることが多いらしい。この時代で魅了を持つのは私だけらしいけれど、過去の魅了持ちはありがたいデータを残してくれた。
例えば、剣を持つ人型のモンスター。彼らは鍔迫り合いをした際に魅了されることが多い。
例えば尻尾の生えた動物型のモンスター。彼らは尻尾を掴むことで魅了されることが多い。
着ている服の見た目だったり、髪型だったり。構えている武器で魅了されることがないのなら、それらを疑ってかかかるべきだ。
その教えの通りに、私は数ある武器の種類を一通り手にして、大きな瞳二アピールしてみた。結果、特に反応は見られなかった。
と言うことは、何らかのアクションをしてみる他ない。
「バブルシューター!」
アンミィが放った巨大な泡が、勢い良く瞳に叩きつけられた。
軽く仰け反った巨人はたたらを踏み、頭を軽く振るとその瞳をアンミィに向ける。透かさずサナティスが弓を引いて矢を放ち、その視線を釘付けにする。
巨人のその身体的特徴から、私の取るべき行動はなんだろうか。
武器の類いは持っていないため、鍔迫り合いなどの行為は必要ないだろう。と言っても、あんな巨体と鍔迫り合いなんで出来っこないだろうけど。
尻尾はないから掴むところはなさそうだし……、と判断しかけたところで、私の視線は瞳のさらに上、その頭部へと向かった。
怪しいものが生えている。額から伸びる、立派な一本角。
あれを掴むべきだろうか。それも、候補に入るだろう。その前に、ある一つの選択肢を潰しておこう。
「おーい、一つ目の巨人! お揃いの虎柄だぞー!」
身に付けた虎柄のトレーナーは、一瞥しただけで直ぐに視線を逸らされた。
……注目もしないようなものを、身につけているんじゃないよ。
そんなふうに苛立ちもしつつ、直ぐにトレーナーを脱いでジャケットを身につける。もしもこれで黒い鳥籠のような傘を持っていたら、雲の上に建つ私はなかなか絵になったのではないか。
ちょっとした自画自賛。
ほんのりと笑みを浮かべつつ、私は軽やかに雲を渡って巨人の頭部へと近付いていく。
瞳から放たれる閃光の熱を感じる。アンミィが放った魔法の衝撃を感じる。足場となる雲から弾き出されてしまうような、そんな要素は幾らでもあった。
それらを耐え、着実に歩みを進めていく。そうして、私は雲から跳んで――。
「嘘だろっ!?」
槍のように伸びる角を身を捩るようにして躱し、巨大な瞳に見守られながら落下していく。
見つめられている。
閃光が来るのか?
瞼が下がる。
再び開いた時……。
私はその瞬間、藁にも縋る思いで目の前のものを必死で掴んだ。
私の落下を支えきれずに、それは私と共に落下していく。
腰蓑に隠された褌が露わになる。
私はじっと、それを見つめる。
その奥の瞳と目が合った。
頬が赤く染まっている。
私は、こう叫ぶしかなかった。
「見られて魅了されてるんじゃねーよっ!」
この場合、悪いのは私?




