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16.ダンジョンに挑戦! その六

 虚を抜けると、そこは円形の空間だった。


 転がるようにその場に降り立った私は、今度は無事だったおでこに無意識に擦りながら、周りの状況を確かめる。


 木々が円形にくり抜かれるようにして、地面が広がっている。言い表すなら、それは広場か、それとも闘技場か。


「おぉ、……結構広い空間やなぁ」


 着地によろけたアンミィを支えながら、私は周囲の観察を続ける。上空に、久し振りの空を見た。お日様は見られないけれど、まだまだ沈むような時間ではない。その明るさは、この場をスポットライトのように照らしていた。


「あら、三層目にしてその空間。結構短いダンジョンなのかも」

「サナさん、ここがどういう場所か知ってはるん?」

「所謂、中ボス戦ね」


 武器を構えるサナティスに習って、私も武器を取り出す。戯れで設定したままの弓であったけれど、攻撃力には不安はない。けれど……。


「うーん、森の中に現れたら、弓だと狙いにくい」

「この空間が闘技場やったら、都合がいいんやけどね。サナさんを盾にして背後から放つ!」

「それが上手くハマる相手なら良いわね。……来るわよ」


 地面が軽く振動している。それに合わせて、木々の葉が擦り合わされるような音が響く。


 円形の空が、巨大な瞳によって塞がれた。


「ちっ、あそこから木の上に出ろってことだったか。二人とも、一度森に入って!」


 サナティスの声に合わせて森へ入ると、先ほどまでいた円形の空間に、巨大な拳が打ち込まれた。


 その振動は大地を揺らし、罅が入り、周囲の木々が軒並み倒されていく。波のように広がるそれから逃れるように、私達は必死に枝に飛び乗って駆けていく。


「相手は巨人、か。ってことは、空を飛べるサナさんは有利かな?」

「そうなるわね。けれど、それが出来ないあなた達は、相手の体を駆け上がるか、木の上に立って攻撃をするしかない」


 あの攻撃で、すべての木が倒されてしまうようなことになれば、私たちの攻撃の機会は減ってしまう可能性があるわけだ。


「先ずは攻撃のパターンを確認しましょう。地面にいることを確認されたら拳が振ってくる。だとすれば、木の上に出れば違う行動を取るかもしれない」


 そう言って、サナティスは空を飛んで上空へ躍り出る。それを追って、私達も木の枝を跳んで葉の影から顔を出した。


 上空は、何やら硬そうな雲がところ狭しと浮いている。木の先端からならそれほどの距離はないけれど、地面から見れば相当な位置にあるだろう。


「なるほどなぁ。木を伝ってあの雲に乗って、そんであの巨人と戦えばええんや」


 アンミィの言葉に頷いて、私はその巨人を見る。 


 木々の先端は膝丈程だろうか。四つん這いの格好から立ち上がったそれは、なかなかの背丈を持つ一つ目の巨人であった。


 腰蓑は虎柄。筋骨隆々の上半身はパンプアップしているようで、見るまでもなく暑苦しい。立派な角は強さの証、なのだろうか。


 大きな瞳は真っすぐに、攻撃しようとしているサナティスに向けられている。その目は、一際明るく輝いた。


「サナさんっ!?」


 二人で同時に叫ぶ。


 光の閃光に包まれたかに見えたサナティスは、どうやら更に上空に逃れたようで、戦闘を迂回するようにぐるりと回って私たちの元へ降り立った。


「ああやって素直に反応をするということは、瞳が弱点の可能性もあるわね。あの手の巨体は弱点がある場合が多いの。注意深く探すといいわ」

「はい、先生」


 その返事も同時だった。


 その背後では、巨人が次のアクションを起こしている。どうやら腕を横薙ぎにして振るってくるようで、こうなってくると逃げ場は上が下かしかない。


 攻撃の手段を稼ぐために、私達は揃って上空の雲へと跳び移った。その真下を腕が通り過ぎていく。


「すっご。鞭みたいやん。関節ないんかな?」

「伸びたりもしそうな雰囲気があるよね。同じ場所に留まるのは危険そう」


 同じく、一か所に集まるのも危険かもしれない。


 ターゲットを分散させる意味も込めて散開すると、私は弓を番えて瞳に向けた。的は大きく、放てば当たる。すると巨人は嫌がるように地団駄を踏む。


「うわぁ、木がどんどん倒れてく。これ、一度足を踏み外したら戻ってこれないかも」


 こちらを睨みつけるような瞳に悪寒が走り、別の雲に飛び移ると背後を通り抜ける閃光を感じる。


 なるほど、これがパターンか。瞳を攻撃すれば閃光が放たれる。それを避けて瞳を攻撃。そうすれば木が倒される心配はない。足を踏み外しても、また戻ってこれる。


「アンミィ! 瞳全体を攻撃できる魔法の方が、ダメージが大きくなるかもしれないわ! 私が弓で注意を引くから、あなたは杖を使って!」

「了解やっ!」

「リルも魔法! 余裕があったら魅了も狙ってみて!」

「分かった!」


 目が合ったら回避。それさえ肝に銘じておけば、何とかなるだろう。瞳が私から逸らされるのを感じて、私はスマートフォンの操作を始めた。


 さぁて。一つ目の巨人は、どんな私がお好みかな?

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