15.ダンジョンに挑戦! その五
宝箱の中身は、焼きたてのパンだった。
がっかりしてしまうような中身なようで、時間を確認すればちょうど良さそうでもある代物。私達は、簡易的なモンスター避けの結界を張って、食事を摂ることにした。
「酷いよなぁ。なんでウチを受け止めてくれへんの?」
「いや、咄嗟の判断だったから仕方がないでしょ? あのコウモリのモンスターの事を考えていたから、それが飛び出してきたのかと思ったんだから」
一応は申し訳無さの表れとして、一番高級感を漂わせるサンドイッチは献上した。にこやかに眺めているサナティスに助けを求めるけど……。
「ああいう時に、ぎゅって抱きしめないのがあなた達兄妹よね」
私に兄の面影を見ないでもらいたい。
「この話はもう終わり! もし次があったら、今度はアンミィが先に入ってよね」
「その時は、しっかりと受け止めたる」
本当かぁ? と怪しい目で見ながら、私はクロワッサンを頬張った。
簡単に食事を終えたら、二層目の探索である。
木の根に足を取られないように気を付けながら進み、時折現れるモンスターの相手をしながら進んでいく。
一層目の探索と違いがあるとすれば、それは地図を描くようになったことだろうか。
今回から、虚は二つあることになる。入ってきた虚を区別できるように、地図に記して分かりやすくしておこう、というわけだ。
「ねぇ、ダンジョンに生えている植物って食べられるの?」
ふとした疑問をサナティスに投げかける。
「スマートフォンのカメラで写してみると、食べられるかどうかを判断してくれるわ。例えば――」
そう言って、サナティスは道端に生えている草にスマートフォンを向けた。
「大根の葉っぱ。引っこ抜いて今晩の食事の一品にしようかしら」
案外、ダンジョンの中で自給自足も出来るのかも。
「じゃあ、その辺の木に巻きついている蔓の先に、芋がなっているかもしれへんのやな」
「可能性なら、もちろん。これで肉がドロップするモンスターでも出れば最高なんだけど……」
などと願望を言ってみたところで、次に現れたモンスターは動き回る不気味な樹木。
サナティスが注意を引きつけている間に、私とアンミィがひたすら魔法を叩きつけてフィニッシュである。魅了に挑戦していなかったせいか、ドロップはない。
「肉の代わりにするなら、キノコが良いかしら」
「肉なら買っておいたものがあるし、ショッピングサイトでも買えるでしょ」
「リル。そういう楽な考えは良くないわ。その場で手に入るものを活用してこその冒険なの。だって、楽しいじゃない。これをどうしたら美味しい料理に出来るかなぁ、って考えながら探索するの」
……それ、目的が変わってない? と感じながらも、終わりが見えない状況であるなら、そういう事に楽しみを見出すのも一つの手か、と納得することもできた。
ダンジョンの最深部に辿り着くまでに、幾つの階層を踏破しなくてはならないのか。それは、誰にも分からない。
モンスターを倒すことに楽しみを見出すのもいいだろう。サナティスのように、そこに行き着くまでの食事に楽しみを見出すのもいいだろう。
私としては、装備を集めたいからドロップに期待したいところだけど……。
魅了に期待するには、戦闘が間延びしてしまうからなぁ。
「アンミィはこういう時、何を楽しみにする?」
「ウチは結構、景色を楽楽しみにするタイプやで。おまけに仲良しのリルと一緒なんやから」
基本的に、こうやって良い子ムーブを自然とやってのけるのがアンミィの強みだと思う。私には無理だ。悪態しか出ない。
付き合い始めた頃はあざといだけかと思ったけれど、その裏側は本当になくて。
でもまぁ、楽しく遊んでいられれば他のことは割りかしどうでもいい。そんなだらしない一面は、私と共通するところか。
「そういうリルは、どんな事を楽しみにするんや?」
「うーん、そうだなぁ。撮影に使えそうなスポットはないかを探してみる、とか? 例えば――」
例を挙げようとして、視線を彷徨わせる。すると、他の木とは少し質感の違う木が生えているのが見えた。
「この木に寄り添うようにして、アンニュイな表情を浮かべてみるとか――」
そうやって、木に寄り添うようにしてみると……。
「なんでぇぇぇ!?」
木肌が崩れて虚に飛び込んでしまうというね。




