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仮面少女と騎士さま。  作者: 小椿 千冬
二章 名ばかり御子様の不思議な日常
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第二十話

「さっきここを通ったから・・・次はこっちだな」


「えっと・・・、多分こっちから来たので向こうだと思います」


「ははは、そうだっけか?」


陽はすっかり高くなり、気がつけばもう夕暮れ。一通り街を見て回り、そろそろ帰ろうかと帰路に着いたのは昼過ぎだったから・・・あれから、かれこれ三時間は経っていることになる。


「もしかして・・・迷った?」


「おそらく」


少し憶測を間違えたらしい。端的に言えば「迷子になった」とも言う。街中を外れ、緑豊かな風景が広がる。先ほどから誰ともすれ違わない。不安げに前を行く彼を見ると、にっこりと笑みを返される。それがかえって不安を煽るなんて、言ってはいけないのだろう。


(・・・・でも)


立ち止まり、緑色の景色を眺める。草木の匂い。澄んだ空気。街を一歩出たらこんなところもあるのか。案外、迷ってみて良かったのかもしれない。


「ねぇ、シキちゃんのいた世界ってどんなとこなの?」


前を行く彼が、唐突にそんなことを言った。どんな、と言われても。

取り敢えず、この世界とは全く違う。魔法もないし、住んでいるのは人間だけで。習慣も、文化も殆ど重なるところはない。上手く言葉にできなくて考えていると、ふわりと声が降ってきた。


「いや、難しく考えなくていいよ。・・・オレさ、いろんな世界を旅してまわるのが夢なんだ。でも、この国から出られなくて」


忙しいから、と笑い飛ばす背中に漂う哀愁は気のせいだろうか。


「この国って、いろんな世界から人が来るだろ?だから、こうやって話を聞くのがオレの趣味ってワケ」


旅行パンフレットを見て、旅行をした気分に浸るようなものだろうか。


「結構面白いぜ?前聞いたのは、悪者に惚れた勇者様の話とか・・・あと、間違えて不老不死になっちまった魔法使いの話ってのもあったな」


「御伽噺みたいですね」


勇者に魔法使い。まるで、御伽噺の中の世界だ。

もしかすると、御伽噺の住人からしてみれば、こちらの世界の方が御伽噺に見えるのかもしれない。

そんなことを考えてふっと笑うと、ジークが唐突に立ち止まった。


「あー、そろそろ時間切れか」


バツが悪そうに、後ろ頭をガシガシと掻いて見せる。

手を翳して背後を見やり、そして何かに気がつくと、彼はくるりと踵を返した。


「続きはまた今度な」


後はあいつが連れて帰ってくれるから、と言い終わらない内に彼は走り出した。


「えっ?」


遠ざかっていく背中。呆気に取られていると、背後からぽん、と肩を叩かれた。



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