表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~  作者: 有木珠乃@2/6『ヒロインの弟に迫られています』配信中
第3章 乙女ゲームの始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/42

第40話 公爵の執念

 王城に向かったのは、それから一週間後のことだった。

 公爵の話を聞けば、早い方がいいことは分かりきっている。それなのにもかかわらず、なぜ遅くなってしまったのか、というとギルバートだ。


 カーマイン公爵家の騎士団にギルバートが入ったのはいいものの、団員たちは代々公爵家に仕えている者たちが多い。だからエリアルが公爵家にいたことや、ボクがミルドレッドの姿に変えていたことなど、事情を知っていた。お陰で、随分と(しご)かれたらしい。


 幼い頃のエリアルは、ミルドレッドの姿をしていたわけではないから、古参の団員には思い入れがあるのだろう。訓練以外にも、エリアルの昔話を聞いたとか聞いていないとかで、痴話喧嘩をしている二人を何度か見た。

 おそらく遅れた理由の中の一つなのだろう。


 そんな経緯があって、やっと王城にやって来たのに、今度は国王の説得で足止めを食らった。

 王城にある祭壇は、ほぼ建国祭でしか使われないため、かなりの年数を誇る代物なのだ。国宝級といってもいいだろう。だからこそ、贄を欲したのかもしれない。


 ここは異世界だが、乙女ゲームの舞台だ。前世で、古い物には命が宿る、という迷信を引き継いだのだろう。その力が王都の郊外にある街の豊穣祭にまで及んだ、とは考え辛いが、それ以外、思いつかなかった。


 ボクたちはまず、祭壇のある部屋へ通る許可を、国王に求めた。けれどそこは一国の王。簡単に返事をしてくれなかった。


「まず、理由を聞こうか。ただ見学したい、というわけではないのだろう?」

「カーマイン公爵令嬢が、王都の郊外にある小さな街の祭りで、贄に選ばれたんだ」


 国王はボクの言葉を聞き、顔色を変えた。これがブルーノの言葉だったら一蹴されていたかもしれない。もしくは世迷言だと笑われていた可能性だってある。

 だけどボクは魔女だ。わざわざ国王を混乱させる悪戯を仕掛けることはしない。魔女だって暇じゃないんだ。


「……郊外、というと豊穣祭のことか? そんな近くにカーマイン公爵令嬢がいたとはな」

「最近戻って来た、ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢のことじゃないよ。その前に公爵家の養女となっていた、エリアル・カーマイン公爵令嬢の方だ」

「エリアル……あぁ、ひと月前に魔女殿が言っていた人物か」


 そう、ここ謁見の間で、国王がボクにブルーノの子守を頼んだあの日に語った、カーマイン公爵令嬢の入れ替え話。国王が覚えていてくれてよかった。


 エリアルは一歩前に出て、国王に挨拶をした。ピンクの髪によく似合う、アイボリーのドレスを身に纏ったエリアル。数年間、郊外にいたとはいえ、長いこと公爵家で淑女教育を受けてきたのだ。その所作は、一週間前まで平民だったとは思わせないほどだった。


「この姿ではお初にお目にかかります。カーマイン公爵家の次女、エリアルと申します」

「ほぉ。そのような可愛らしい姿だったとは。始めからその姿で会いたかったな」

「過分なお言葉、痛み入ります」

「そのような堅苦しい言葉はせんでいい。姿は違えど、幼き頃のそなたを知っているのでな。だが、魔女ユニティほど砕けられると困る」

「さすがにそこまでは……けれど、ありがとうございます」


 目の前にボクがいるというのにいい度胸だな、二人とも、と思ったが、今はそれに構ってはいられなかった。


「話を戻すけど、このエリアルの右手の甲を見てもらえるかい?」


 早速ボクは、エリアルを国王の傍まで寄せ、白い手袋を外させた。一週間前、カーマイン公爵邸で見た時とあまり変わらない、バラの大きさだった。

 ホッとしたボクとは逆に、国王の顔は険しくなった。


「魔女ユニティの言葉なのだから、真実なのだろうと思っていたが……本当だったとはな。このことはカーマイン公爵も知っているのか?」

「無論だ。そして解決方法は祭壇の破壊。だけど祭壇は王城にあるし、国王の所有物だ……協力を得たい」


 シンプルで且つ、直球で要求してみた。これが正しいのかは分からない。下手したら国王だけでなく、この場にいる宰相たちから怒りを買うだろう。

 だけどそれ以外の方法が思い浮かばなかった。あるとすれば……強行突破だろうか。


「破壊……随分と過激だな。穏便な方法はないのか。祭壇は確かに私の管轄下だが、祭事を執り行っているのは大司教だ。破壊すると言ったら、大聖堂と対立することになる」

「そこで私から提案があるのですが、よろしいでしょうか」


 白い手袋を付け直したエリアルが進言した。贄の証を見せた直後だというのに、堂々とした振る舞いを見せるエリアル。それが好印象だったのか、はたまた目を奪われたのか、皆の視線がエリアルに集まる。


「まさかそなたからあるとはな。申して見よ」

「ありがとうございます。まず、国王様は古いものと新しいもの、どちらがお好きですか?」

「ん? そうだな。やはり新しいものの方が好きだな。古いものは脆く、壊れやすい……なるほど、そういうことか」

「これだけでお分かりになるとは、さすがです。そう、古いものはいずれ壊れます。私たちが壊さずとも。ですから、事故に見せかけてしまえばよろしいかと」


 実はこの提案は、公爵から授かったものだった。だから……。


「新たな祭壇をこちらで用意する、といえば、大司教様も文句は言わないでしょう」

「だが、資金はどうする? そんな余裕など……」


 国王の視線が、宰相へ向けられる。「絶対に通すな、許可するな」という圧力が、こちらにも伝わってくるほど睨んでいた。


「ご心配なく。資金は養父が出す、と申していますので」

「なんとっ! さすがはカーマイン公爵だな」

「その代わり、妻に近づくことも、娘たちの婚姻に口出すこともやめていただきたい。そう養父から伝言を預かっています」


 つまり、その条件が飲めなければ資金は出さない、と言っているのだ。そして「娘たち」の中にはエリアルも入っている。祭壇を壊さずに見殺しにしたらどうなるか、とここにはいないが、無言の圧力もかけるという、二段構えだった。


 この伝言を聞く限り、国王はまだ公爵夫人に未練があったようだ。それを断ち切らせるために、使えるものはなんでも使う公爵もまた、公爵である。


「……分かった。その要求は呑もう。家族を守るために、公爵はそこまでするのだ。後始末の方も、また。宰相、構わぬな」

「はい。もしも問題が起これば、魔女様。お手伝いくださいますよね」

「いいよ。一度、どちらが上か、教えてやろうと思っていたところだから」


 あの生意気な大司教にね。ボクがニヤリと笑って見せると、宰相も笑顔で応えてくれた。すると周りが少し引いているような気がしたが、ボクは意を介さなかった。


 だって本当のことを言っただけなんだからさぁ。さっさと祭壇を壊しに行こうよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【コミカライズ作品】


ヒロインの弟に迫られています
ヒロインの弟に迫られています~モブでいたいので、溺愛は遠慮します!~
漫画:水月ミキネ先生
原作:有木珠乃
コミックシーモア様にて先行配信中
よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ