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魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~  作者: 有木珠乃@2/6『ヒロインの弟に迫られています』配信中
第2章 悪役令嬢との出会い

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第17話 魔女の嫌な予感は当たる

 やって来たのは、ヴァルクの商店街の中でも、一際目につくブティック店。いかにも高級だと感じる洗練された外観と、入口の横に並べられたドレスなどの展示の数々。王都でも、これほど大きな店はないだろう、と思わず感心してしまった。


 けれど王都では、逆にそれほど大きな規模の店を構える必要はないのだ。貴族はそれぞれ仕立屋を自宅に招くケースが多く、直接店に出向くことはない。だからブティックというよりも、工房という役割が占めていた。


「ここがウチの店、セジヴェルよ」


 家名のセジベンスを弄った店名か。なるほど。パティが大きな顔をするのも理解できる。名前もそうだが、チラッと中の様子を窺っただけでも、店内にはお客の姿があった。それも、身なりの良い男女が二組も。


「ちょっと、何しているの? こっちよ。あと、あまり店の前で立ち止まらないで」

「すまない。なかなかの店だと思ってね」

「今更、おだてても無駄よ。裏口からって約束したでしょう?」

「ただ感想を述べただけだよ。表から入りたいとは思わないし」


 するとパティに睨まれたが、別に嫌味を言ったわけではない。単に、毛色が合わない店に、好きこのんで入りたいと思わなかっただけだ。どちらかというと、ボクは魔法薬店の方に興味がある方だからね。


 ブルーノはどうだろうか、と視線を向けると、やはりそこは王子だからなのか。パティに指摘を受けたのにもかかわらず、セジヴェルの方を見ていた。けれどボクの視線に気づくと、すぐにその態度を改める。


 パティの言動にも、目立った反応を見せていなかったから、中には入っても、面倒事は起こさないだろう。そういう部分は、生まれの良さを感じざるを得なかった。


「さぁ、さっさと入ってちょうだい」


 店の脇にある小さな扉を開けながら、パティが催促する。その間も、周りに人がいないか、きょろきょろを顔を動かしていた。よっぽどボクたちが、中には入るのを見られたくないようだ。


 だけど扉をくぐると、その憂鬱が吹き飛んだ。いきなり中庭に続く小道が現れたからだ。


「工房はこの先よ。住まいも一緒だから、あまりウロウロしないで」

「あぁ。それにしても、意外に綺麗にしてるんだね。こういう場所はゴミ置き場になり易いのに、花壇が並んでいるとは思わなかったよ」

「……お客の見えないところでも、ちゃんとしているのが一流ってもんだからね。当たり前でしょう」

「確かに。植えられている花も素朴な感じがしていいな」


 ブルーノも珍しく感心している。さらにその場で跪き、白い花に手を差し伸べている姿など、様になり過ぎていて、パティが顔を赤らめていた。


 普段、ボクが粗雑な扱いをしているせいもあって忘れられているが、これでも一国の王子である前に、乙女ゲームの攻略対象者だ。黙っていれば、爽やかイケメンなのである。


「き、気に入ったのなら、あげるけど?」

「いらん。ここにあるから、美しさを感じるのだ」

「っ! あっ、そ! あとで欲しいと言ってもやらないからね」


 ブルーノに断られたのが、そんなに癪に障ったのか。パティは速足で、ボクたちの横を通り過ぎ、奥へと向かっていってしまった。


「どうやらこの花の世話をしているのは、あの女ではないらしいな」

「だね……何か気になるかい?」

「分からない。ただ、会ってみたいと思っただけだ」


 そういうと、ブルーノは立ち上がり、パティの向かった方へと歩き出す。ボクはボクで、ブルーノとは違った意味で、その白い花が気になった。


 けれどそれ自体は、珍しい花ではない。前世でも見たことがあるデイジーだ。白のデイジーの花言葉は「無邪気」だけど、デイジーのみの花言葉は「希望」や「平和」がある。


 手を差し伸べるほど気にかけるブルーノと、自分が育てたものではないのに気安く差し出そうとするパティ。


 嫌な予感がしつつ、ボクも二人の後を追った。



 ***



 そういう予感ほど、当たってほしくはないのに、当たってしまう。


 工房の扉らしき入口で、足を止めているブルーノを見つけた。どうして中に入らないんだろう、と思った瞬間、その理由が耳に飛び込んで来た。


「私が買い物に行っている間に、これを全部やっておきなさいって言っておいたでしょう! 半分もできていないなんて、今まで何をしていたのよ!」


 パティの怒鳴り声が聞こえてきたのだ。思わずボクは、ブルーノに小さく問いかけた。


「何があったの?」

「さぁな。俺も扉を開けたら、突然、始まったんだ」

「ボクたちを連れて来たことを忘れたのかな」

「もしくは、忘れるほどの案件なのかもしれん」


 パティの物言いからすると、仕事関係なのが見て取れた。だからブルーノも、遠巻きにしているのだろう。部外者が口を出していい案件ではないからだ。


 だけどボクはブルーノを押し退けて、さらに中には入る。すると、遠巻きに見ていたのが、ボクたちだけではなかったことに気づく。


 おそらくこの工房で働いている針子なのだろう。ボクたちの姿を捉えたものの、パティを刺激したくないのか、追い出そうする素振りさえ見せなかった。

 お陰でボクは、パティが誰に怒鳴っているのかを、見ることができた。


「ほんと、愚図なんだから」

「っ!」


 パティの前で頭を垂れているから、顔までは見えない。だけどその髪の色は銀髪。後ろで一つに束ねたその髪に艶はなく、床についている手や腕の傷。着ている物の汚れから、いい扱いを受けていないことは一目瞭然だった。


「ちょっと今、取り込み中なのが見て分かんないの? 誰か、そこの二人を中庭に連れて行って」


 ボクの息を吞む声が聞こえたらしく、パティが振り向いて、近くの針子に指示を出す。その時、銀髪の少女が顔を上げた。青い瞳と目が合った瞬間、ボクは確信した。


 この少女はミルドレッド、だと。

憎まれ口を叩く魔女ユニティのお話を読んでいただき、ありがとうございます。

毎日追ってくださっている方がどれほどいるのか分かりませんが、18話からは一日置き更新に変更します。


本物のミルドレッドを発見した後、ユニティとブルーノがどう動くのか。どう感じるのか。

また、ブルーノはヒーローに昇格できるのか、など楽しんでもらえたらな、と思います。

因みにこの作品は、恋愛要素は本当に少ないです。

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【コミカライズ作品】


ヒロインの弟に迫られています
ヒロインの弟に迫られています~モブでいたいので、溺愛は遠慮します!~
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原作:有木珠乃
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