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魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~  作者: 有木珠乃@2/6『ヒロインの弟に迫られています』配信中
第2章 悪役令嬢との出会い

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第14話 魔女の心配事と楽しみ

 ボクが公爵夫人を苦手とするのは、おそらくミルドレッドを連想させるからだろう。ずっとミルドレッドを救いたい、と思って行動していたから尚更である。

 だからブルーノに対して、意味なく嫌悪し、悪態をついているのだ。ブルーノはただ、乙女ゲームのことも、カーマイン公爵家のことも知らない、というのに。


 けれどその片鱗を見ただけで対応できるのは、さすがは攻略対象者の一人だといえよう。ただのポンコツ王子ではない、ということだ。


「これなら、ミルドレッドを見ても大丈夫かもしれない」


 なんの確信も根拠もなかったが、そう思えた。


「おい。何をごちゃごちゃ言っているんだ。さっさと行くぞ」


 偉そうに。だが、カーマイン公爵邸では、この強引さに助けられたのだ。今は目を瞑っておこう。


 なにせボクとブルーノは、今からカーマイン公爵領にいる、ミルドレッドの様子を見に行くからだ。いつもぶっきらぼうな口調をしているボクだが、いざとなると、ミルドレッドの姿を見る自信がない。だから長いこと、ミルドレッドの様子を見に行くことすらできなかったのだ。

 もしも躊躇ったり、足がすくむようなことがことがあったりしたら、そんな時は今のように、ブルーノが助けとなるだろう。


「えーっと、カーマイン公爵領に行くには、こっちか? おい! どっちだ?」


 前言撤回。何を弱気になっているんだ、ボクは。こんな右も左も分からない奴に頼ろうとするなんて……。


「バカげている」

「なんだと! あまり王都から出たことがないんだから仕方がないだろう」

「そういう意味で言ったんじゃないよ。あと、ブルーノ王子様の恰好は目立ちすぎる。着替えることも含めて、今日は一旦、王城に戻った方がいいだろう。出発はいつでもできるんだから」


 ボクは着の身着のままでも行動できるけど、ブルーノは人間だ。きちんと準備をした方がいいだろう。


「だが……」

「ただ様子を見に行くといっても、何が起こるか分からない。ブルーノ王子様のことは、国王から預かっている身だから護衛はするけど、自分の身は自分で守ってもらわないと困るからね」


 そもそもブルーノに捕まった時、ボクは金髪の少女の様子を見に行ったのだ。しかもあの場所は、子爵家の領地。王都から離れている場所だ。


 そこに護衛も付けずに一人で現れた、ということは、運が良かったのか。もしくは乙女ゲームの攻略対象者らしく、それなりの腕を持っているのかもしれない、ということだ。

 これまでのブルーノの印象が悪すぎて、想像すら脳が拒否していたのかもしれない。


「念のために聞くけど、剣の腕は?」

「自信はある」


 一瞬、箒を出現させようか、どうしようか、葛藤した。


「根拠のない自信を、誰が信じろと?」

「なら、どう答えればいいんだ」

「簡単なことだよ。毎日、どれくらい剣に触れていたとか。謹慎処分を食らっていたから、何カ月、剣に触れていないとか。そんな些細な出来事でも図れるものだよ」


 金髪の少女と遊んでいたようだから、あまり期待していないけど。


「……剣を持たずとも、鍛錬はできる。毎日やらないと、体の調子が狂うんだ」

「へぇ~。意外だね」

「俺への認識が低いのは知っていたが、感心されると腹が立つな」

「ごめん。でもそうだね。鍛えていなければ、あの時、ボクを捕まえることなんてできなかったと思うから」


 油断していたボクも悪いんだけどね。でも、納得できるだけの材料であることには間違いない。


「納得してもらえて何よりだ。これで多少は道中、国民に醜態を晒さずに済みそうだからな」

「醜態?」

「この間から俺の頭を、箒でバシバシ叩いているだろう。アレのことを言っているのだ!」


 ふむ、とボクは首を傾けて問いかけた。


「……それのどこが醜態だと?」

「王子としての威厳がな――……」

「それだ!」

「はぁ~。突然、何を言いだすんだ。ボケたのか?」


 その瞬間、条件反射ともいえる速度でボクは箒を出現させて、ブルーノの頭に一発、お見舞いしてやった。


「言った傍から何をするんだ!」

「いくらボクが百歳を超えた魔女でも、言ってはいけないことくらいある、とわざわざ教えてあげたのが気に食わないというのか?」

「……す、すまん。以後、気をつける」

「よろしい」


 若かろうが、老齢だろうが、女性に対して言っていいことと悪いことがある。特に年齢に関することは。


「分かってくれたところで、これから共に行動する上で、大事なことを思い出したんだよ」

「大事なこと? なんだ、それは」

「呼び方だ。今までボクはブルーノ王子様、と呼んでいた」


 内心は呼び捨てにしていたが。


「これまで通り、道中でも同じ呼び方をしていたら、マズいだろう? 政治的なことは知らないけど、色々とさ」

「……そうだな。国民にどのくらい、今回の出来事が知れ渡っているのかは分からない。色々とあることないこと、噂されるのも嫌だしな。敬称はない方がいいと思う」

「うん。それはボクの方も同じでね。魔女って呼ばないでほしいんだ」

「なるほど。では、これからは敬意も払わなくていいんだな」


 ん? 敬意などあったか? まぁ、今は置いといて。


「ならボクも、同様に扱わせてもらうよ。構わないよね。そっちが先に言い出してきたんだから」

「ど、同様とは?」

「そんなに警戒しなくていいよ。ただ……」

「ただ?」

「ちょっと荒っぽくなるかな」

「これ以上にか!? それはダメだ。敬称は外すが、態度はこれまで通りで頼む!」


 えー、と思ったが、ブルーノの必死な態度に、思わず吹き出してしまった。そんな乱暴なことをしていたつもりはない、というのに。


 なんだかんだで、意外とこの子守も楽しいな。最初は面倒事を押しつけられたと思っていたが、これはこれでからかい甲斐がある。

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