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魔女ユニティの誤算 ~悪役令嬢の役を降りたら、婚約破棄してきた王子が追いかけてきました~  作者: 有木珠乃@2/6『ヒロインの弟に迫られています』配信中
第2章 悪役令嬢との出会い

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第10話 魔女と王子は犬猿の仲(?)

 その後、カーマイン公爵邸に度々訪ねに行っていたが、ボクが心配するようなことは何一つ起こらなかった。また、公爵邸の者たちも事情を知っているため、もうボクの訪問を訝しげに見る者もなく、自由に出入りすることができるようになったのである。


「なんだと! つまり俺が、初めてカーマイン公爵令嬢に会った時はすでに、別人だったとでもいうのか!」

「……もう一回説明しないと、この頭は理解できないのかな?」


 謁見の間にブルーノの声が響き渡った瞬間、スパーンと乾いた音が後に続いた。


「痛いじゃないか!」

「そりゃ、痛いと感じるように叩いているからね」


 逆に痛みのない叩き方をしてなんになる。


「俺はただ、確認のために聞いただけだ。理解はしている!」

「だったら、わざわざ叫ぶことはないだろう」


 うるさいんだよ、という言葉が出かかったが、すぐにブルーノが応戦してきたお陰で言わずに済んだ。


「これが叫ばずにはいられるか! ずっとカーマイン公爵令嬢だと思っていた人物が、カーマイン公爵令嬢じゃなかったんだぞ」

「……まぁ、そうだね」

「しかも、ここにいるお前ではなく、別の人物とか……あり得ないだろう」


 そうか。ボクとミルドレッドの間に、もう一人いることに驚いたのか。しかも会ったことはあるけれど、ボクが変身魔法をかけたせいで、本来の姿を知らない。

 ブルーノからすれば、ある意味、幽霊と変わらない存在に思えたわけか。


「悪かったね。ブルーノ王子様の言うことも一理ある」


 頭を押さえるブルーノに向かって、ボクは手を向けた。先ほど箒で叩いたからか、何か攻撃されると思ったらしい。


 攻撃なんてしないのに、とほんのちょっと傷つきながらも、ボクは回復魔法をブルーノにかけた。


「今度はなんだ」

「叩いた詫びだよ。まだ痛む?」

「いや、痛くはないが……」

「何?」

「気味が悪い。何か企んでいるんだろう!」


 人の善意をなんだと思っている。いや、ボクをなんだと思っているんだ。これまでブルーノにしてきた態度を棚に上げて、ボクは内心悪態をついた。


 さらにもう一回叩いてやろうか、と箒を振り上げた。


「待て待て。早まるな」

「それはこっちのセリフだよ。まったく。見直したと思ったけど、やっぱり間違いだったみたいだね」


 ボクはため息を一つ吐き、玉座に体を向けた。


「国王、またブルーノ王子様が脱走しないように、ちゃんと監視をつけてくれよ。追いかけて来られても困るんだ」

「ふむ。時に魔女ユニティ。一人になって、これからどうするのだね?」

「これから? 直近だと、カーマイン公爵に挨拶をしに行く予定だけど……国王。ボクの話を聞いていたか?」

「勿論。だからこそ尋ねたのだ」


 なんだろう。次の言葉を待たずに、ここから立ち去った方がいい気がする。


 けれどここは謁見の間。魔法の使用を禁止されている。それは魔女であっても例外ではない。国王よりも上であるためには、人間のルールも重んじるように、と他の魔女たちから口を酸っぱく言われていたからだ。


 人間と程よい距離で、上手に付き合っていくやり方なのだと。力はこちらが上でも、数は圧倒的に人間が多い。それがたとえ有象無象であっても、集団の力は大きな波となり、中にいる者でも止められないほど力となることがある。


 前世で見たSNSの誹謗中傷がまさにそれだ。言葉の刃が本物の刃物になったら、ボクたち魔女は、きっと太刀打ちできないだろう。


 だからボクは踵を返し、静かに謁見の間から立ち去ろうとした。だが、隣にいるブルーノに腕を掴まれてしまった。


「まだ父上の話が終わっていない。いくら魔女でも無礼だろう」

「……ブルーノ王子様に礼儀を教わるとはね」


 世も末だと思った。いや、末なのはボクの方か。聞きたくもない言葉を聞く羽目になってしまったのだから。ニヤリと笑う国王が憎たらしい!


「魔女ユニティ。ブルーノがそなたを追ったのは、責任を取らせるためだと聞いた。間違いはないか?」

「はい。ありません」


 どうしてお前が答える!


「俺と件の令嬢は謹慎処分。カーマイン公爵も、しばらくは登城しないということなのに、元凶である魔女ユニティに何も下さない、というのは不公平です」

「ボクに謹慎処分なんて、ほぼ意味を成さないんだからいいんだよ。この国からしばらく距離を置く。これなら、皆と同じくらいの罰だろう?」


 ミルドレッドやエリアルの様子を見に行きたかったけど、仕方がない。こうでも言わないと、収拾がつかないと思ったのだ。


「意味を成さない罰などあり得ん!」

「いいんだよ。ボクは魔女なんだから!」

「……ではこうするのは、どうだろうか」


 ボクとブルーノが睨み合っていると、玉座から穏やかな声が降ってきた。


「魔女ユニティよ。しばらくの間、ブルーノを預かってはもらえないだろうか」

「嫌だね!」


 何を親子揃って同じことを言うんだ。血迷ったのか?


「ふむ。それだけキッパリ言うのだ。罰としもちょうどいいだろう。嫌いな相手としばらく行動を共にすること。ブルーノもまだまだ()()()()()()()()()について知りたがっているようだし」


 それはお前だろう、と言いたかったが、隣にいるブルーノも満更ではない顔つきだった。


「共に行動をし、見届けるのも一興。魔女ユニティに見聞を広げてもらうのもいいだろう」

「何をめでたしめでたし、と締めているんだ。ボクは子守なんてしないぞ」

「誰が子守だ!」

「お前のことだ!」


 そしていつまで腕を掴んでいる気だ、とばかりにボクは箒をブルーノの手を目がけて振り下ろした。

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ヒロインの弟に迫られています
ヒロインの弟に迫られています~モブでいたいので、溺愛は遠慮します!~
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