表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/102

No.39 草霊、進化の地は《水路迷宮 メイズ・ラビリス》


 この《深緑界(トネリコ) 》の世界にはなんと月が3つも存在する。赤、青、黄と色鮮やかに王都ラビリンスの夜空を照らしている。


 そして、今日の夜は一点の曇りもない満月だった。その月明かりは王都の路地裏暗き場所にさえ光が届き。王都の高層建物の壁に屈折し、その光を地下水路まで明るく照してくれるのだった。


 ──そう現在、私は宿屋から脱走し。王都の排水溝から地下水路へと流されながら、水路迷宮とやらに向かっている途中なのだ。


 そして、現在の時刻は深夜……何時だろうか? 分からない。そもそも、この世界には時間の概念というものは存在しているのだろうか?


 この王都に向かう旅時の時、シャーロット騎士をはじめ、懐中時計すら持っていなかった。時刻を知らせる鐘がある都市住まいならまだ分かる。


 だが、捜索隊として派遣された者達が時間の経過に敏感でないのは少し違和感を感じるものだな。ソフィア嬢は……時間の事など気にしない天然として除外するとしてもだ。


 そんな事を考えながら、下水に流されながら、少しずつ少しずつ下へ下へと地下水路へと流されていく。


 しかし、あの(ナヘマ)め。良くこんな事を思いつくものだな。あの様な提案をしてくるとは───


〈大まかな方針は決まったが、問題はどうやってこの宿屋から脱出するかだ。部屋には誰かを監視する為の水晶が置かれてしまっていて、シルの体内から出れば直ぐに私の存在がバレてしまうな。それに私が突然、居なくなればソフィア嬢はともかく、シャーロット騎士が不振がるかもしれん〉


「アホ。そんなの簡単に解決する話じゃない」


〈何? 私を今、アホと言ったのか? アホ(ナヘマ)よ〉


「ブフォー!……ナヘマちゃんがアホ……」

「誰がアホ(ナヘマ)よ。そうじゃないわよ。それとアーレは何、ツボってるのよ。またお仕置きするわよ」


「ゴ、ゴメン……でもツボっちゃって」


〈それで? ナヘマよ。簡単に解決するとはどういう事だ?〉


「まったく最近はいちいちいじって来る様になって……だから、簡単な話でしょう。あの幸運兎(ラックラビット)の体内に居る役はお仕置き好きの【智慧】に任せる。そんで私の《大罪スキル》で数分間の(あいだ)(ギエナ)を透明化してあげるからその隙に【智慧】と入れ替わって、この部屋の排水溝から下水路に流れて行けば良いのよ」


〈ほう。その《大罪スキル》とは何なのだ? 詳しく聞こ……む? どうしたアレゼル少年〉

「う、うん……あ、あのね。秘匿なんだそれ色々とね。余り話しちゃいけないんだ」

〈秘匿?……それはどういう事だね〉


「はいはい。アーレが困ってるでしょう。内緒よ内緒、秘匿なの。以上、アンタの好奇心は終わり。時間も惜しいんだからさっさと行動を開始するわよ。それに地下の水路迷宮までアンタが着いてくれれば、王族のアーレと賞金首の私も外で活動できるしね。ほらほら、さっさと行動するのよ。(ギエナ)


〈ムグ……私の頭(葉)を掴むのを止めたまえ。ナヘマよ……〉



 しかしだ。改めて賢い娘だと思った。この世界の知識もそうだが、私では考えつかないような柔軟な発想を思いつく()だ。やはり世界観測を止めておいて正解だった様だ。


 いくらナヘマを吸収し、彼女のこれまでの知識や経験などの力を私が得たところで余り意味が無かっただろう。その吸収が終わった瞬間。彼女はこの世から居なくなり彼女が発する考え、発想、答えが聞けなくなってしまうところだった。


 やはり、一度目の人生の頃の様にして良かった。教師時代の経験が生きたというものだろうか? 


 人というものは草木と一緒だ。長い時間をかけ枝葉を伸ばし成長して行くもの。


 ナヘマを彼処(あそこ)で吸収(枯らせず)に本当に良かったと思う。


 ……話を元に戻そう。《矯正(ナヘマ)の部屋》を出る前に、ナヘマに何かをされた私は【智慧】を連れ宿屋の部屋と戻った。そして、シルの体内に【智慧】を残し、精霊体としてシルの口から飛び出し、そのまま部屋の奥に設置されていた洗面所の排水溝へとダイブした。


 しかし、本当に私は王都の地下へと向かっているのだろうか? 水路の壁は特殊な石種(せいざい)なのだろうか。三種の月の光を反射させ、更なる地下を照そうと月明かりを下へ下へと伸ばしている。


 次の進化を目指さねば、敗れるか……何ともこの世界は色々と脅威と興味が尽きない世界だろうか。下へ下へと流されながら私はそんな事をボーッと考えていた。




《ハイエラ臨時収容所》


「脱走だあぁ!」「【狼眼】が逃げたぞ」

「捕まえろ! せっかく捕まえた大物。ここで逃げられたら。減給ものだぞ」


「ちっ! うるせえよ。もうじき始まる祭典に浮かれて警備をザルにしたお前等が悪いんだろうが……それよりもこの毒は何なんだ? 解毒スキルや解毒剤を使っても治らなねえ。もって後、数日か。その間にアレゼルの裏切り野郎をぶっ殺してやる」


「むっ! 貴様! 【狼眼】だな! 皆、ここに……」


ザスッ!


「……うるせえって言ってんだろ。スキル発動【嗅香(きゅうこう)】。あぁ?! 何でここの下に気配があんだよ? まさかアイツも依頼を失敗したくちか? 俺を置いて教会から一人で逃げた卑怯者がよう……丁度良い、俺も追われる身だ。下りて狩ってやるぜ! エルフの王族様よう」


 そして、その日の深夜、とある収容所から凶悪犯が脱走。地下迷宮へと逃亡をしたと、翌朝の王都ラビリンスで発表された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ