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購入した屋敷

屋敷の権利書と鍵を受け取った蒼一はブリ雄を含む九人(・・)で自分達の屋敷へと向かっていた。


「たった一晩でお屋敷が買えるだけのお金を稼ぐなんて」

「ふふ、私達を助けて下さったブリ雄様ならそれくらい造作も無いという事ですよ!」

「雨風凌げてベッドで眠れれば何処でも良い」


ブリ雄を呼びに行った際、ブリ雄を看護していた三人娘も当然のように同行し


「お部屋の大きさはどれくらい」「でしょうか。可能であれば三人」「一緒の部屋が良いです」


外に出る為にエントランスホールを通った時に流れで三つ子にも声を掛け


「何処にしろあの穴倉よりはずっとマシだよ」


ここまで来れば年長組にも声を掛けるかと倉庫に寄り、グラファもこれに同行し合計九人の大所帯で屋敷を見に行く事になった。

ちなみにクラリッサはまだ職員の仕事を見学したいという事で、夜にレミィを連れて屋敷に来るという話になっている。


「なんか、凄い目立ってないか?」

「致し方無いでしょう。屋敷に着くまでの辛抱です」


九人の集団というだけでも目を引くが、その全員が目鼻立ちが整っているとなれば視線が集まってしまうのも無理からぬ話だ。

蒼一もブリ雄の肉体も魔術によって構築されたもの、意図的に不細工に作る理由も無かったのでそれならと顔立ちは整っている。

盗賊に捕らえられていた娘達も商品として売り払う事を考え事前に選定していたのか、皆例外なく顔立ちは平均以上に整っており、それも注目を集める要因となっていた。


そんな風に視線を集めつつも蒼一達は中心街を抜け、貴族街との境までやってくると途端に人の目は少なくなってくる。


「中心街と貴族街の境にある二階建ての青い屋根でL字の屋敷って、どれだ?」

「確か隣には黄色い屋根の凄い目立つ屋敷が立ってるからそこまで行けば分かるとの話でしたが……あぁ、あれではないですか」


ブリ雄が指差す方向を見ると他の屋敷と比べても異彩を放つ真っ黄色の屋敷が目に飛び込んできた。


「確かにアレは目立つな……という事はその左隣に立ってる青い屋根の屋敷がそうか」


異彩を放つ屋敷から目線をズラし、隣に立つ屋敷の方へと視線を向けながら蒼一達はそっちの方へと近づいていく。


「間取り図から大体の大きさは予想していたが、思ったよりも一回りは大きいな」

「ここは中心街との境、貴族街の顔と言っても良い場所ですから対外的な見栄えを重視しているのかも知れません」

「対外的って何に対して何だよ……俺としてはこじんまりとした屋敷の方が好感が持てるんだが」


そう言いつつ蒼一は手の中にある鍵の内、格子扉の鍵を使って正門を開く。

人自体は住んで居なかったが以前の館の所有者が売り払う為に管理自体はしてあったのだろう。

中庭は綺麗に整備されており、草は綺麗に切り揃えられていた。


「綺麗な中庭ですねー」

「この状態を維持する為にも私達が頑張りませんとね!」


マリンとネーナの二人が中庭を見て早速やる気を出している中、蒼一達は屋敷の玄関前に着き、早速玄関用の鍵で扉を開錠して屋敷の中へと入る。

入って直ぐは開けたエントランスホールで、正面に二階に上がる為の階段が見えた。


「さてと、最初は何処から見て回るか」

「確か右に進んで突き当りを曲がったところに食堂にキッチン、冷蔵室がありましたよね。まずはそちらを確認しましょう」


ブリ雄のその言葉に特に反対意見も出なかったので蒼一達はまず一番手前にある食堂へと足を踏み入れる。

屋敷が予想より大きかったので当たり前だが食堂も間取り図から予想していたよりも広く、中央に鎮座する縦長のテーブルと椅子が二十脚、椅子の間隔が広めに取られている事を考えればもっと大勢の人間と食事をする事も可能だろう。


「テーブルと椅子があるというのはこちらで用意する手間が省けて助かりましたね」

「流石に前の住人もこれを運び出すのは手間だろうしな」


大きなテーブルに手を触れながら蒼一がそう告げてから手を放すと、テーブルの上に薄っすらと蒼一の手形が残る。


「ぱっと見分かんなかったが、ちょっと埃被ってるな。中庭と比べて屋敷の中の清掃は手抜きらしいな」

「草木は放置するとかえって手間になる事が多いですからね。それに貴族街の顔の一つとして外観だけでも綺麗に保たないといけないという考えがあったのでしょう」

「まぁ咳き込む程に埃が舞ってるって訳じゃないし、軽く拭くだけで済むだろうからこれくらいは良いか。じゃあ次行くぞ」


食堂を見終えた一同は次に食堂に隣接するキッチンの方へと足を踏み入れた。

一面鈍色の輝きを放つキッチン、それは生前の蒼一も知るレストランなどの厨房に非常に似ている。

と言っても蒼一はそんな厨房に一度も入った事はないので漫画やアニメ、ドラマなどから得た知識でしかないのだが。


「おぉ~ここは現代的なんだな」


料理が趣味だった蒼一としては一度で良いからこういうところで思いっきり料理をしてみたいとも考えていたので、ついついテンションが上がってしまう。

そんな一人テンションが上がっている蒼一を他所に、ブリ雄は棚などを一つ一つ確認していく。


「やはり何も無いですね。こうなると調理器具に食器も買いに行かないと……」

「それがないと」「今晩の御夕飯も」「作れません」

「そういう事です。後で皆で買い出しに行きましょう。でもその前に後から追加で必要な物が出て来られても困りますからね。買い出しは一通り屋敷を見てからです。という訳で蒼一様、次行きますよ」

「ん?おぉ、了解」


ペタペタと石窯を触っていた蒼一がその言葉で我に返り、一同は続いて隣接する冷蔵室へと向かう。


「当たり前だけど全然冷えてないな。というかどうやって冷やすんだ?魔術?」

「その通りです。この屋敷のどこかに魔力のタンクがあるのでそこにモンスターの核を入れておくと作動する仕組みになっている筈です。ちなみにその魔力はこの屋敷の照明、水回り等々色々な場所で活用されるようです」

「灯りも水も魔術頼りって訳か。電気やガスが全部魔力だけで賄えるって考えると本当に魔術って反則だな」

「それを言うなら現代の科学技術もこちらから見れば反則物ですよ」

「御二人共、何のお話をしているのです?」

「ん-俺の故郷の話かな。まぁ色々と落ち着いたら話すよ」


蒼一とブリ雄の会話の意味が理解出来ない娘達を代表してマリンが訪ねて来るも蒼一はそう言って適当にはぐらかし、次の場所へと移動する。

冷蔵室の次に向かったのは脱衣所であった。


「そこそこ広いなこの脱衣所、それ以外に特に言うべき事もない」

「まぁ所詮脱衣所ですからね。別段見るべき所もないので浴室の方を確認しましょうか」


という訳で脱衣所はサラっと流し、蒼一達はすりガラスの扉を引いて浴室へと足を踏み入れる。


「「「「「おぉぉ」」」」」


すりガラス越しで最初は見えていなかったが、目の前に広がる光景にその場に居た全員が思わず驚嘆の声を零す。

広く清潔な浴室、マーブルの浴室タイルに奥の方にはとても大きな浴槽があった。


「これは凄い。俺の居たアパートの浴室の十倍以上はあるぞ」

「これなら足も伸ばし放題ですね。但しお湯を溜めるのにもかなり時間が掛かりそうですが」

「あ、確かに……今夜入ろうと考えるともう今の内からお湯を溜めておく必要があるか?」

「この浴槽に合わせて給湯口が一般家庭のよりも大きめとはいえ、時間が掛かる事に違いは無いですからね。一先ず魔力タンクを見つけてお湯張りだけでも済ませておきましょうか」

「でしたら」「私達は浴槽を」「掃除しておきます」

「それではお願いします」


浴槽の掃除を三つ子に任せ、蒼一達は魔力タンクを探しつつ屋敷全体を見て回るのだった。

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