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仲間と踏み台

基本的にギャグ寄りで始めたのに前話辺りからなんか真面目な雰囲気になっちゃってる。

日暮れ前、スルクへと戻って来る者達の流れに逆らうように正門に到着した二人は正門で簡単な手続きをしていた。

依頼書があればそれが通行証のように使えるのだが、そういう物が無い場合は正門で目的地や理由、スルクには戻って来るか、その場合は何時戻る予定か等を簡単に書き記す。


「あれ、蒼一とブリ雄じゃねぇか」

「ん?」


書類を書いていた二人がその声に後ろを振り向くと、そこにはルドルフと見慣れない何人かの姿があった。


「ルドルフさん、どうも」

「書類書いてるって事は依頼とは関係無しに外に出るのか?それもこんな時間に」

「えぇ、今日受けた依頼の事でちょっとしたやり残しがあったので」

「やり残しだと?」


依頼のやり残し、それを依頼を受けていない状態で処理しようとしているという事はつまり未完のまま依頼の達成を報告した事になる。

依頼の内容にもよるが、それが本当ならば重大な規約違反でありその事を咎めようとしたルドルフよりも先に別の人間が三人の会話へと割り込む。


「はっ、期待の新人だなんだと騒がれてても、結局はその程度かよ」

「ちょっと、お前何いきなり喧嘩売ってんの!?」


ルドルフの後ろに居た数名の内の一人が鋭い視線を蒼一とブリ雄へ向けながら辛辣な言葉をぶつけ、その仲間と思われる一人がそれを諫める。


「やり残しって要は失敗って事だろ?様は無いな」

「お前はなんでそうやって……悪い、コイツも俺らもヘマやらかしてルドルフさんに助けて貰ったばかりでさ。ちょっと情緒が不安定なんだ」


意気揚々と依頼へと飛び出したは良いが、そこで何かしらのミスを犯し危うく死に掛けた所をガルフ達同様ルドルフに救われてスルクへと連れ戻された。

そこで根拠もない自信は砕かれ、意気消沈して戻って来た所に最近ニーヴァ内外問わず噂になっている期待の新人である蒼一とブリ雄を見つけてしまい劣等感に苛まれたというところだろう。


「いや、良いよ」


何となくそんな事情を察した蒼一が穏便に事を済ませようとぎこちない笑みで返すも、食って掛かって来た男はそんな蒼一の余裕の態度が気に食わないのか、身を乗り出さんばかりの勢いで口を開く。


「何余裕ぶってんだよ!お前だって横に居るソイツの力にあやかってるだけの金魚の糞の癖によぉ!!」

「お前!いい加減に――」

「いい加減にしやがれてめぇ!!」


暴言を吐く男を止めようと仲間の一人が声を荒げて制止の声を掛けようとした時、それを上回る怒声がルドルフから発せられ、その場に居た全員がピタリとその動きを停止させる。


「……はぁ、悪いな蒼一、ブリ雄、こいつらが迷惑掛けた」

「い、いえ、俺は大丈夫ですから」

「そうか……俺はコイツらをニーヴァまで連れて行かなきゃならんから、今度会った時にでも飯を奢らせてくれ。おら、行くぞてめぇら」


そう言ってルドルフは保護した新人達を引き連れてニーヴァの方へと歩き出す。

その際、蒼一に食って掛かった男と蒼一は互いの姿が見えなくなるまで無言で睨み合っていた。

そんな険悪な雰囲気を肌で感じ取りながらも取り合えず二人を引き剥がす事に成功したルドルフは安どのため息を吐き、そして直ぐに蒼一にやり残した依頼について問い質し損ねた事を思い出す。


(しまったな、コイツらほったらかしにして今から戻る訳にもいかねぇし、取り合えずニーヴァで蒼一達が受けた依頼と状況を確認してみるか。大した依頼じゃなけりゃあ良いんだが)


そんな不安を胸に抱きながらも、ルドルフは新人達を引き連れてニーヴァへと足を向けるのだった。


一方、蒼一とブリ雄は無事正門での手続きを済ませ霧隠れの山に向かって街道を北上していた。

先程の男との間に発生した険悪な空気は件の男が居なくなった今もその影響を残し、二人の間に微妙な空気が流れる。


「蒼一様、彼の言った言葉ですが」

「分かってる、力を見せつけてるのは常にブリ雄だからな。客観的に見れば俺がそういう評価を下されるのも……まぁ仕方ないんだろうなって気はするよ」


そう告げる蒼一だったが、納得と理解はまるで違うものだ。

あの男がそういう風に蒼一を見ていた事は理解出来ても、自分が周囲にそう思われているという事に納得が出来る訳も無く、蒼一は静かに苛立っていた。

しかもその苛立ちはただ単純に自身がそう思われている事に対する苛立ちだけではない。

ニーヴァの為に、ニーヴァに所属する者達の為にと今回の行動を起こしたのに、その相手からあんな感情を向けられては正直今こうして霧隠れ山に向かっている事が馬鹿らしくなってくる。

それでも蒼一が歩みを止めないのはそこは自分の為でもあるからだろう。

この問題を解決できる力があるのにわざと見逃すような真似をしたら後になってその事を自分が後悔すると分かっているから、それが嫌だからというその感情だけが蒼一の歩みの原動力となっていた。


「はぁ……同じ組織に属する仲間だって、親しみを持っていたのは俺の方だけって事か」

「彼に関して言えば依頼失敗の直後で気が立っていたというところもあるでしょうし、正直何とも言えないところですが、ニーヴァに属する者全てが蒼一様のように考えているかと言われれば、それは間違いなく在り得ないでしょうね。ニーヴァの本質は新人が経験を積む為の組織、ニーヴァを足掛かり程度にしか考えていない者達からすれば一時凌ぎの仲間でしかないのでしょう」

「分かってたけど、そう言葉にハッキリ出されるとしんどいな」


つまり今から自分はそういうニーヴァやその仲間達を踏み台程度にしか考えていない連中を手助けするような真似をしようとしているのだ。

ニーヴァに所属する者全てがそういう者達ばかりではないという事は理解しているが、それでもやはり気分の良いものではない。


「蒼一様、周囲に人影はありませんし、ここからなら空を飛んで向かっても宜しいかと。但し街道は避けていきましょう。時間的にまだスルクに向かっている人達が街道を移動している可能性がありますから」

「……分かった、行こう」


内心にどうしようもないモヤモヤを抱えたまま、蒼一は黒鉄を展開し、ブリ雄と共に霧隠れの山を目指し飛び立った。

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