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換金と相談

生ハムパーティの翌日、無くなったムーの木の実を多めに作り昼頃に西の大陸へと戻って来た蒼一とブリ雄は昨日渡した素材の代金を受け取るべくニーヴァに訪れていた。

ニーヴァで代金を受け取り、その後はそれぞれ一着しか服を持っていない蒼一とブリ雄を含め襤褸布で過ごしている孤島の者達にもちゃんとした衣服を用意しようという事で街に繰り出す予定、だったのだが。


「なんで俺達はまたここに居るんだろうな」


二人が居るのはニーヴァの応接室であり、蒼一にとっては大変胃が痛い場所であった。


「あの数のトレントに更にはエルダートレントが四体ですからね。受け渡す金額的に受付でポンと渡せるような物では無いのでしょう。あんな人目の多いところで大金の受け渡しをするなんて良からぬ事を考える輩が出て来る可能性がありますからね」

「輩って、ニーヴァに所属する同僚だろ?。そんな真似する奴居るのかね」


これが普通のテンプレ的な冒険者ギルドであれば蒼一も同意したかも知れないが、ニーヴァはそれに近い形態ではあるがニーヴァという一つの明確な括りが存在する。

故に単なるギルドよりも仲間意識を強く、仲間を裏切ったり自身の所属する組織に反するような真似をするのだろうかと考えれば――きっとそういう輩は少数であれ存在するのは否定出来ないだろう。

それは蒼一も理解はしていたが、その仲間意識からそんな人間が居ると思いたくなかったのだ。


「我々はニーヴァ以外に所属する気が無いので帰属意識が強いのでしょうが、そうでない者達もニーヴァには大勢います。ニーヴァで経験を積んで経験者しか雇わないような条件の良い会社に転職する為に、そんな者達からすればニーヴァは単なる足掛かりでしかない以上、蒼一様が抱く仲間意識を共有してくれる事は無いでしょう」

「なんか寂しいな」


自分が所属する組織が同僚と思っている仲間からそんな風に認識されているかも知れないという事実に、蒼一が寂し気な表情を浮かべていた時だ。

コンコンとドアがノックされる音が応接室に響き渡り、遅れて扉が開かれるとニーヴァのスルク支部の支部長であるアイゼンと鑑定士であるサンジスが中へと入って来る。


「どうも、お待たせしてしまい申し訳ありません」


アイゼンがそう平謝りしつつ、二人は蒼一とブリ雄の対面のソファーへと腰掛けると、二枚の羊皮紙を取り出した。


「さてお二人をここにお呼びしたのには二つ理由があるのですが、まずは昨日持ち込まれたトレントの精算からやってしまいましょうか」


理由が二つというところに蒼一とブリ雄は一瞬引っ掛かるも質問する間も無くアイゼンが話を進めてしまったので二人は口を挟む事はせず、とりあえず説明を受ける事にする。


「こちらが以前にブリ雄さんと結んだ契約に基づき、測定器の代金を一部引いた金額になるのですが、今回は額が額でしたのでもう一枚、測定器の代金を一括で支払って頂いた場合の書類も用意しました」

「なるほど、何方を使って話を進めるか、私達に選べという事ですか」

「そういう事になります。私達としても些事とはいえ書類仕事の中にこういう細かいものが何時までも残っているのは喉の奥に小骨が刺さったようなものでしてね。一括で済ませられるなら済ませてしまいたいというのが本音ですし、それに」


それ以降アイゼンは言葉を濁すように口を噤んだが、ブリ雄はアイゼンが何を言いたいのかを理解していた。

この職業は命の危険を伴う以上、何時死んだって可笑しくはない。

そして相手が死んでしまっては請求も出来なくなってしまうのだから払って貰える内に金を受け取りたいという事なのだろう。


「えぇ、そのお気持ちは分かりますよ。こちらとしても何時までもそちらに貸しを作っているのも気持ちが良い物ではありませんからね。この機に一括で払いましょう」

「あぁそう言って頂けると助かります」


するとアイゼンは不要になった方の書類をしまい、残った方をブリ雄の方に差し出しそれにブリ雄が署名をし、アイゼンは秘書を呼び付けて署名の入った書類を手渡すと明記された金額を持ってくるよう秘書に指示を出す。

そうして秘書が退室するのを待ってから、アイゼンはもう一つの理由について話出した。


「さて、代金の用意が出来るまでの間に残ったもう一つの理由についてお話しましょうか。実は御二人の実力を見込んで依頼をしたいのです」

「依頼ですか?」

「はい、ここから北西に向かったところに霧隠れの山と呼ばれる場所があるのですが、ご存知ですか?」


アイゼンの問いに蒼一とブリ雄は顔を見合わせた後、そんな場所は知らないと首を横に振るとアイゼンが説明をする。


「霧隠れの山はその名の通り、常に山の上部が霧に隠れた山の事です。その場所はスルクから歩いて三時間程と比較的近く、その麓は戦士や術師など等級の低い者達が依頼で向かう場所なのですが、困った事に五ヵ月前から様子が変わってしまいましてね」

「変わった、と言いますと?」

「今まで中腹以上まで登らなければ遭遇しないような厄介なモンスターが麓に現れるようになりまして……どうやら山頂に強力なモンスターが住み着いたらしいのです」

「なるほど、そのモンスターに縄張りを追われたという事ですか。しかし"らしい"というのは?」


その曖昧な言い方に引っ掛かりを覚えたブリ雄がそう尋ねる。


「そのモンスターが居ると言われているのは常に霧に覆われた山頂です。遠目からでは分からないしその存在を確かめるには山頂まで実際に向かわねばなりません。しかしこれまで何度か調査に向かった者達は誰一人としてその存在の確固たる証拠を見つけられていないのです」

「存在する証拠が見つからないって事は存在しないって事なのでは?」


何ヶ月も調査してその存在を見つけられなかったのであれば、それは存在しない事の証明になるのではと問う蒼一に対し、アイゼンは首を振ってその考えを否定する。


「その可能性は在り得ないでしょう。実はこれまで調査に向かった者達は誰一人として山頂に辿り着く事が出来ていないのですよ。それもモンスターに襲われて撤退したとかそういう話ではなく、どれだけ進んでも山頂に到達出来ないのです」

「それって単純に迷ってるだけとかそういう話では無いんですか?」

「いえ、それは無いでしょう」


蒼一の考えを否定したのはアイゼンではなく隣で同じく話を聞いていたブリ雄であった。


「山頂を目指すだけであれば勾配を登っていけば自ずと山頂に辿り着ける筈です。それなのに何ヶ月もの間、誰一人として山頂に到達する事が出来ていないとなると、山頂に近づいて欲しくない何者かが山に踏み込んだ者を迷わせている可能性があります」

「流石ブリ雄さん、その通りです。この五ヶ月間、我々は何者かの存在を証明する証拠を見つける事は出来ていませんが、少なくとも山頂に何かがあるという確証は得ています。そこでお二人にお願いしたいのが霧隠れ山の調査なのです」

「そういう事ですか。しかし我々が向かっても結局は他の者達と同じように山頂に辿り着けぬまま終わる可能性もありますが」


正直な話、蒼一とブリ雄であれば恐らく調査を成功させる事は出来るだろう。

その何者かがどのような手段で迷わせているかは知らないが、魔術的なものであればブリ雄も見破れる自信があるし、蒼一が意識体になれば肉体の感覚器官に惑わされる事無く用意に山頂に到達出来る筈だ。

それでもブリ雄が敢えて失敗する可能性があると仄めかしたのはどうしてアイゼンが自分達にこの依頼をしようと考えたのか、何を根拠に自分達なら依頼を達成出来ると考えたのか、その理由を知りたかったからに他ない。


「確かに山頂に辿り着く事は難しいやもしれません。しかし話によれば蒼一さんは短時間であれだけの数のトレント、しかもエルダートレントを四体も見つける程に索敵が得意だとか。そんな蒼一さんであれば山頂まで到達出来なくても山頂に何が居るのか、もしくは誰も山頂に辿り着く事が出来ない原因を探る事が出来るのではないですか?」

「……なるほど、だから我々に依頼したいという訳ですか」


その内容に得に矛盾や違和感を感じられず、ブリ雄は取り合えず真っ当な依頼のようだと判断してこれなら受けても問題ないのではないかと蒼一に最終判断を委ねる。


「蒼一様、如何いたしましょうか。私としてはこの依頼、受けても問題は無いと考えていますが」

「ブリ雄がそういうんなら俺としても問題ないぞ。別にその原因を見つけて解決してくれって訳じゃないし」

「可能ならそこまでお願いしたいくらいですがね、高望みはしません。危険は冒さず自分の身を最優先に確実に持ち帰れる情報だけを持ち帰って下さい」


という訳で蒼一とブリ雄はアイゼンからの指名依頼を受ける事となったのであった。

査定回りをするつもりでサンジス出したのに、いざ書いてみるとアイゼンが主導で動いて全然サンジス動かねぇ!。

そりゃ支部長の言葉を遮って会話に割り込むなんて出来んわ。

まぁ次話になったら話し出すえしょう。

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