一方その頃
本当なら前回の最後にちょろっと入ってる予定でしたが、前回が長くなったのでこっちを分割しました。
ブリ雄がニーヴァに素材の換金をしに向かった一方で蒼一は商業区を一人で歩いていた。
蒼一がブリ雄とわざわざ別行動してまで商業区にやってきた理由、それは食料の買い足しである。
孤島を発ってから二日半が経過し、生ハムという土産も出来た事だし一度転移で孤島に戻ろうという話になり、流石に生ハムだけは寂しいので何か生ハムの付け合わせになりそうな物を買っていこうという話になった。
「色々買って帰りたいけど一万九千円でそれなりの量が買える物ってなるとなぁ」
孤島で留守をしている者達の人数を考えると質より量を重視せねばならず、その上で生ハムと一緒に食べても良さそうな何かを蒼一は探す。
「お?あれは」
店を色々と見て回っていた蒼一の視界に一つの店が目に留まる。
「チーズの店か」
蒼一が見つけたのはチーズの専門店で生ハムと一緒に食べるというなら相性は間違いなく良い筈だと、蒼一は値段確認の為に店に近づく。
どうやら測り売りされているらしく、基準として適当にカットされたチーズの塊に対し値段が設定されていた。
「グラムで売られるよりはこっちの方が量が分かり易いな」
過去に肉屋で何グラム欲しいか尋ねられた時、ひよって二百グラムと注文し思いの外少なくて失敗した時の記憶を思い出し、そんな独り言を呟く。
(ステーキは二百グラムだと丁度良いのに、こま切れ肉になった途端足りなくなるのは何故なのだろうか)
そんなどうでも良い疑問を思い浮かべつつ、蒼一は生ハムに合いそうなチーズ選びをする。
「すみません、生ハムに合うチーズってどれですかね?」
「そうさね、生ハムの種類にもよるがプロシュートならハーブの入ったこれなんかがオススメさ。プロシュートの独特な肉の風味が苦手って人でもその風味を抑えつつ美味しく食える。燻製したもんなら逆に風味の少ない味も舌触りもまろやかなコイツがオススメだね」
蒼一がどんな生ハムに合う物を欲してるのかが分からない為、取り合えず一般的な二種類の生ハムを基準に説明してくれる店主に対し、蒼一は控えめに口を挟む。
「あー普通の生ハムじゃなくて、トレントの根っこの奴なんですけど」
「おや兄さん良い物食べてるね!そうなると、そのトレントの根は調理されてる奴かい?」
「いえ、今日獲って来たばかりで一切手を加えて無いです」
「獲って来た?もしかして兄さんがトレントを狩ったのかい?」
「はい、仲間と一緒にですけど」
蒼一がそう答えると店主の女性は関心したように頷くと、トレントの根に合うチーズを教えてくれる。
「それならこっちのチーズがオススメだね。調理してないって事は塩気が付いてないって事だから、塩を多く使って作ったこのチーズがピッタリな筈だよ」
「おぉ、なるほど」
店主のその説明に蒼一は感心したように同意する言葉を呟く。
普通生ハムは調味液の関係で塩辛く、それ単品で食べる事は可能だが大抵の場合はその塩気に合わせてチーズだったり野菜だったりと合わせる事で塩辛さがマイルドになり、かつ相方となった素材の味を塩気で引き立てる事でより美味しく食べる事が出来る。
それがトレントの根の場合は生ハム自体に塩気が付いておらず、その状態で普通の生ハムのようにチーズや野菜と合わせても塩気が足りずどこか物足りない味になってしまう。
流石チーズを売ってるお店の店主なだけはあると、蒼一は頻りに関心しながらもオススメされたチーズを残金である一万九千円分購入し、大量のチーズを両手に抱えながらホクホク顔でお店を後にする。
「いやー良い買い物が出来たな。ブリ雄の方はもう終わってっかなぁ」
持ち込んだ量が量だったのでまだ終わってないかも知れないなと考えつつ、長時間拘束されるよりはウィンドウショッピングが出来た分こっちに来て正解だったなと蒼一は一足先に宿への帰路に着く。
なお一方その頃のブリ雄はニーヴァの倉庫内にて絶賛注目を集めている真っ最中であり、ブリ雄がテンプレ展開を巻き起こしてる共知らず、蒼一はウキウキ顔で今夜の生ハムパーティに思いを寄せるのであった。




