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リボルバーの試射

翌日、蒼一とブリ雄の二人はスルクの街の外、南に向かう街道を時速に換算すればおよそ六十キロ、自動車並みの速度で二人は街道を駆け抜けていた。

蒼一は素体となった海神由来の身体能力によって、ブリ雄は世界が内包していた魔術の知識を利用して、それぞれが異なる手段で移動しながら平然とした様子で会話をする。


「その森まではどれくらい時間が掛かるんだ?」

「そうですね、今のペースですと後一時間くらいでしょうか」

「結構距離があるな。その森に居るモンスターはリボルバーで対処できるレベルなのか?」

「正直言って難しいでしょうね。あの森は基本的に戦士や術師の上の等級である重戦士、魔術師が立ち入るような場所なので」

「となると出来れば途中で威力検証もかねて適当なモンスター相手に使いたいんだが」

「でしたら目的地の手前にある段丘で試しましょうか」

「よし、そうと決まればちょっと速度を上げるか。行くぞブリ雄!」


寄り道するのだから先を急ごうと、蒼一とブリ雄の二人は更に速度を上げ段丘を目指し街道を駆け抜けていく。

目的地よりも手前だった事、速度を上げた事もあり二人は三十分後には段丘地形に辿り着き、早速そこで手頃なモンスターを探し回る。

程なくして蒼一の知覚にモンスターが引っ掛かり、二人はモンスターに気付かれないよう姿勢を低くしてモンスターに忍び寄っていく。


「居たな……これ有効射程距離ってどんなもんなんだ?」

「安物ですからね、恐らく二十メートルも無いかと」

「予想以上に短いなそれ」

「それは仕方ないでしょう。飛ばしているのが金属のような固体ではなく、魔力という気体のような物ですからね」

「要は水鉄砲みたいなもんで、威力減衰がえげつないって事か」


小さく零すように言いながらも、事故が起きないよう弾を抜いていたシリンダーに弾丸を一発だけ込めてシリンダーを回し銃身へと弾を送り込み、段丘の地形を利用して段丘の上の方からゆっくりと顔を出し眼下に見えるモンスターに照準を合わせる。


「すぅ……ふぅ……」


音を立てぬようゆっくりとハンマーを起こし、意を決してトリガーを引く。


――パシュン!。


火薬ではなく魔力由来による発射機構の為か、音や反動は殆ど無く銃口から放たれた魔力の塊は真っ直ぐ狙い通りにモンスターの後頭部に命中し、その一撃を受けたモンスターは短い悲鳴を上げ前のめりに倒れ込む。

数秒、モンスターが一向に動く気配が無い事を確認してから蒼一とブリ雄は段丘を一段降りて倒れ伏したモンスターを確認する。


「呼吸は……ありませんね。お見事です、蒼一様」


初めて扱う武器で見事モンスターを仕留めた蒼一をブリ雄がそう称える一方で、当の蒼一は微妙な顔を浮かべていた。

その理由は言わずもがな、自分がイメージしていた元居た世界のリボルバーと魔力を撃ち出すこのリボルバーとの間に存在する差異に関してである。

発射音に手に伝わる反動、そのどれもが蒼一がイメージしていたものよりも遥かに軽く、派手さに欠けていたという事実は否めない。

それでも発射音と反動に関してはまだ良い、音が小さいというのは発砲音で居場所がバレにくいという事だし、反動についても撃った気がしない事を除けば反動が無い事に越した事はなく、唯一にして最大の問題はその威力の無さであった。


蒼一とブリ雄が頭部への命中を確認した後、数秒間様子見したのは倒れ込んだモンスターに目立った外傷が見受けられなかったからだ。

これが普通の銃ならば頭部に銃創が出来るなり相手を仕留めたという確証を即座に得る事が出来ただろうが、蒼一の持つリボルバーは魔力を圧縮して撃ち出すだけの貫通力も何もない、言ってしまえば雪玉を死ぬほど硬く握り締めて投げつけたのと殆ど変わりない為、相手にちゃんとダメージが通っているのか確認が難しかった。


「今のは一番安い弾でしたからね。まぁ威力としてはそんなものでしょう」

「あぁそっか、弾の種類にも左右されるのか」


そういう事となら安物の銃と安物の弾で遠距離から安全にモンスターを仕留める事が出来ただけ上出来なのかも知れない。

そう自分を納得させる蒼一を他所に、ブリ雄は昨日の武器屋で蒼一の銃とは別に解体用にと購入していたナイフを取り出し、モンスターの亡骸を解体していく。

素材となる部分だけを粗方取り終え、最後に胸を掻っ捌くと胸から拳大の水晶を取り出す。


「それがモンスターの核か?」

「えぇ、このモンスターの核なら蒼一様が今持っている弾よりも数段階上の威力の物が作れますが、どうします?」

「弾てそんな簡単に作れる物なのか?」

「弾自体は本当に形を整えてあるだけなので簡単に用意出来ますよ。今後も銃を使用する予定なら購入するよりも倒したモンスターの核を直接自分達の方で加工した方が安く済みますし」

「じゃあそれで頼むわ。流石にこの威力はちょっと悲しすぎる」

「畏まりました。それと蒼一様、先程一発撃ったので魔力を撃ち出した核がありますよね」

「ん?それならあるけど」


ブリ雄の言葉に蒼一はそう返しながらシリンダーを回し、ローディングゲートから魔力と共に色の抜けた真っ白の核を取り出す。


「これなんかに使えるのか?」

「はい、実はそれ肥料になるんです」

「え?この水晶がか?」


肥料という言葉に蒼一は思わず手の中にある色抜けした弾丸を見やる。

こんな物を撒いたところで本当に肥料になるのだろうかと一瞬疑問が頭を過ったが、元を正せばこれもモンスターの身体の一部、つまりは有機物でありそう考えれば有り得ない事でもないかと納得し、ブリ雄にその空になった弾丸を手渡す。


「種を購入したら島でも農作物を育てる予定ですからね。こういう物も可能な限り集めていきましょう」

「本当、ブリ雄って先を見据えて無駄なく色んな事考えるよな……俺とは大違いだ」


情報処理能力では圧倒的に蒼一に軍配が上がる筈なのに、それでもブリ雄の思考能力に及ばないのは肝心のその扱い方が下手という事の証明だろうと、そんな情けない自分を恥じ入る蒼一にブリ雄はどうしたものかと苦笑いで返す事しか出来ないのであった。

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