タイトル未定2026/10/12 20:27
携帯の着信音でマスターは目覚め、無意識に携帯に手を伸ばし、画面をしっかり見ないまま目をこすりながら、マスターは携帯に出ていた。
「……はい」
「まだ、ベッドの中ですか?」
携帯越しに流花の声が聞こえ、マスターは慌てて起き上がった。
「えっ、あっ、流花?お……おはようございます」
受話器を握りしめ、マスターは無意識にベッドの上で正座をしていた。
「おはようございます。マスター、バイトをずっと休んでいてすみません」
マスターは、少しずつ目が覚めてきた。
流花がbar「ジェシカ」のバイトを休んでいる間、店はずっと閉めていた。
「今週から、またバイトに行きます」
この流花のひと言で、マスターは完全に目が覚めた。
「わかりました……流花」
「はい」
「バイトが終わったら、そのままボクの所においで」
「マスター良いんですか?」
「やっと流花に、会えるんだ。ずっと、流花の側にいたい」
流花は、思わず吹き出した。
「マスター朝っぱらから、よくそんな恥ずかしいことが言えますね」
マスターも、思わず笑い出した。
「電話、ありがとう」
「マスター行ってらっしゃい」
「行ってきます。流花、行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます」
流花は、携帯を切った。
短いひとときだったが、流花は幸せな気分に浸っていた。
携帯を大きなカバンにしまった流花は、既にスーツ姿に着替えていた。
流花は部屋を出て、居間に行った。
居間に入ると、敷きっぱなしの敷き布団の上で、母親が電子タバコを吸っていた。
流花が母親の前を通り過ぎる時、母親が突然言い出した。
「朝からいちゃついて、仲が良いわね」
「聞いていたの?悪趣味」
「トイレに行った時、聞こえたのよ。口が悪い」
「母さんの娘よ。当然でしょ」
台所に行った流花は、言いながら冷蔵庫を開け、パンとマーガリンと牛乳を出した。
台所の前に立つとお皿の上にパンを置き、パンにマーガリンを塗った。
コップに牛乳を注ぎ、パンの袋とマーガリンと牛乳を冷蔵庫にしまった。
流花は台所で立ったまま、パンを食べだした。
その姿を見た母親は、顔をしかめた。
「パンを焼いたら、どうなの。立ったまま食べて、行儀が悪いわね」
「万年床の上に座り込んで、ボサボサの頭でタバコを吸う人に、言われたくないわね」
「本当に、口が悪い娘だ。よく、男がいるわね。逃げられる前に、結婚したら?」
「結婚なんて、しないよ」
「しないの?」
「こんな家庭で育ったから、結婚する意味なんてわからない。結婚なんて、めんどくさい」
「母さんが、悪いって言いたいの?」
「そうは言わないけど、縛られるのが嫌なだけ」
パンを食べ終えた流花は、お皿とコップを洗い出した。
「流花の男。流花の本音を聞いたら、流花から離れていくんじゃないの?」
「もう、話したよ」
「結婚したくない。縛られるのが嫌って、言ったの?」
「うん」
「流花も変わり者だけど、流花の男も変わり者だ。似た者同士」
お皿とコップを洗い終えた流花は、歯を磨き始めた。
「流花の男に、会ってみたいわ。連れてきなさいよ」
歯を磨き終えた流花は、母親の方を振り向き、にっこりして言った。
「冗談は、顔だけにしてよね」
そう言うと母親の横を通り過ぎ、自分の部屋に入ると、すぐ玄関に向かった。




