タイトル未定2026/10/12 20:24
流花と渚は、少し早めのランチを食べてゆっくり過ごした後、大手スーパーで夕飯の材料を仕入れ、アパートに戻った。
渚が洗濯物を取り込み、洗濯物をたたんでいる間、流花は夕飯の下ごたえをしていた。
「買い物に付き合ってもらったり、重い荷物を持たせたり、夕飯を作ってもらったり、みんな流花ちゃんに任せちゃってごめんね」
洗濯物を、たたみながら渚は言った。
「私がいる時くらい、のんびりしてよ」
「ありがとう」
寝室に行った渚は洗濯物をしまい、夕飯の下ごしらえをしている流花の所へ行った。
「流花ちゃん、彼氏に料理を作ったことがある?」
「ちゃんとした物は作ってないけど、一段落したから作る。マスターも、楽しみにしているし」
「このぉ〜のろけちゃって!流花ちゃん、彼のこと名前で呼ばないんだ」
「出会ったのが高校三年の時で、その時から『マスター』って、呼んでいたから。今さら、って感じ」
「高校三年の時に、出会ったんだ。付き合い長いね」
「ちゃんと付き合い出したのは、大学生になってからだけど」
「わぁ、懐かしいなぁ!大学の入学式が終わった時、彼が流花ちゃんを迎えに来たんだよね。あんなかっこいい人が、流花ちゃんを迎えに来た時は、びっくりしたよ」
入学式後のことを思い出した流花は、自然と笑顔になった。
しかし笑顔はすぐ影を潜め、胸の中は暗い影が刺していた。
夜の七時を過ぎた頃、大きな声が聞こえた。
「ただいまぁ!」
渚と一緒に暮らしている、佐野が仕事から帰ってきた。
「お帰り!」
流花と渚は、声を揃えて言った。
久しぶりに見た佐野は、身体が大きく日に焼けたせいか、以前より逞しかった。
「流花ちゃんが来てるって、なぎちゃんが送ってくれたラインを読んで、慌てて仕事から帰ってきたよ」
「遅くまでお邪魔して、ごめんね」
「気にするなって!」
「夕飯の支度をするから、先にお風呂に入ってきて」
「わかった。速攻で、入ってくるよ」
佐野が浴室から出てきたタイミングで、流花はテーブルの上に食事を並べた。
「流花ちゃん、ありがとう」
畳の上で座っていた渚が言った。
「なぎちゃん、今日くらいゆっくりしてよ。大事な身体なんだから」
「流花ちゃんの、貴重な休みを取っちゃって申し訳ない」
「貴重な休みに、なぎちゃんと佐野君と過ごせて、有意義な休みになったよ」
流花の言葉に渚がホッとしていると、浴室から佐野が出て来た。
「あぁ、サッパリした。おっ、うまそう!」
テーブルの上に並べた料理を見て、佐野は言って、畳の上にどかっと座り、あぐらをかいた。
「食べて良い?」
佐野が聞くと、流花は笑顔で頷いた。
三人でテーブルを囲んで、料理を食べだした。
食事が進む中、流花は思い出したように切り出した。
「なぎちゃんと佐野君、大学在学中にいつの間にか付き合っていたけど、付き合うきっかけって?」
「俺、なぎちゃんに一目ぼれしちゃって、ずいぶん強引だったよ」
「えっ、そうなの?」
流花は驚きの声を上げ、渚は佐野に不満な声を上げた。
「でも、その割には、告白の言葉を聞いていない」
「えっ、俺言ったよ」
「聞いてない!」
流花は、笑いながら言った。
「じゃあ、今ここでちゃんと告白したら?私、立会人になる」
「わぁ〜佐野君言って!」
「ったく。しょうがねぇなぁ。言うから、ちゃんと聞いていろよ」
箸を置いた佐野は、正座をして真っすぐ渚を見つめた。
「ずっと、なぎちゃんを見ていました。俺と付き合ってください。それから……佐野渚になってくれて、ありがとう。俺はなぎちゃんと、生まれてくる娘をずっと守ります」
渚の目に涙が溢れ、両手で口を押さえると、流花にしがみついて泣き出した。
渚を受け止めた流花は、いたずらっぽく、佐野に言った。
「男だねぇ〜」
「けしかけた本人が、何ぬかしてる」
佐野はお茶碗を持つと、お茶碗をかき込んだ。




