タイトル未定2026/10/12 20:22
「朝早く、押しかけてごめんね」
白田流花は大学時代の友人、速水渚が住むアパートにいた。
「ううん。流花ちゃんが、来てくれて嬉しいよ」
渚は、台所に立ってコーヒーを入れていた。
相変わらず流花は、水色のティーシャツの上に薄手のパーカーを羽織って、ジーパンを履いたラフな格好をしていた。
見慣れた流花の服装に、渚はホッとしながらも笑った。
「流花ちゃんって、仕事に行く時もその格好で行くの?」
「まさか!それなりの格好をして行くよ。営業にだって、行くし」
「そうか……そうだよね」
少し羨ましげに言ったた渚は、お盆の上にカップを置くと、お盆を持ってゆっくり歩いた。
畳の上に座っている流花の側に行くと、「どっこらしょ」と言うように畳の上に座り、コーヒーカップが乗ったお盆をテーブルの上に置いた。
「私が、コーヒーを入れれば良かった」
申し訳なさそうに言う流花に、渚は慌てて言った。
「何言っているの!私に気を使わないで。一級建築士の学科試験、終わったんだよね」
「うん。佐野君もでしょ」
「佐野君、流花ちゃんと田中君に会えるかも!って、楽しみにしていた」
「そうだったんだ。佐野君に会えなくて、残念だったな」
「今日、仕事は休み?」
「うん。一次試験が終わったから、安達さんが気を使って休みにしてくれた」
「安達さん?」
「私の上司。優しくて、仕事も丁寧に教えてくれるんだ」
「当たりの上司だね」
「ほんと、そうだね。急に休みをもらって、どうしようかなって思っていたら、なぎちゃんを思い出して朝から押しかけちゃった」
「もうじき出産だから、今日流花ちゃんが来てくれて良かった。子供が生まれたら、なかなか会えないもんね」
「ねっ、さわってもいい?」
「うん、良いよ」
流花は手を伸ばすと、大きな渚のお腹をそっとさわった。
「女の子だっけ?」
流花が聞くと、渚は嬉しそうに答えた。
「そう!女の子。女の子って、主治医が言っていた。佐野君、凄く喜んでいた」
佐野の喜びようを想像した流花は、思わず笑ってしまった。
ふと、思い出したように、流花は言った。
「そう、そう!安達さんの奥さん。二人目出産したんだった。安達さんのお子さんも、娘さんだった」
「じゃあ、私の子供と同級生になるね」
「自分のことのように、嬉しいよ」
流花は渚が入れたコーヒーを、ゆっくり飲んだ。




