タイトル未定2026/10/12 20:19
翌朝起き出してパジャマから制服に着替え、洗所で顔を洗った大門は、リビングに入るなりしかめっ面をした。
テーブルの上には、包みの上に乗ったキーホールダーとマスターの携帯が置いてあった。
それより、大門をしかめっ面にしたのは、飲み終えたビール缶二本とハイボールのロング缶一本がテーブルの上に、転がっていたからだった。
リビングのソファーに、マスターが大の字になって眠っていた。
大門はマスターの側に、しゃがみ込んだ。
酔いつぶれてソファーで眠るマスターを、大門は初めて見た。
信じられない気持ちで大門は、マスターをじっと見つめていた。
……こんなに、酔い潰れて。何か、あったの?ねぇ、僕に見せる笑顔は、作り笑いだったの?いつも気を張っているの?何か、隠しているの?七海、教えてよ……。
酔い潰れて眠っているマスターを見ている内に、大門は切なくなり泣きそうになった。
大門は手を伸ばし、マスターの頬にそっと触れ、小さな声で言った。
「……お父さん」
大門の声が届いたように、マスターは
目をゆっくり開けた。
マスターの頬に触れていた手を、大門は離した。
マスターは、ソファーから身体を起こした。
側でしゃがみ込んでいる大門を、マスターは眩しそうに眺めた。
「おはよう。昨夜は、飲んで寝ちゃったんだね」
大門は、優しく言った。
マスターは、テーブル席に座って飲み続け、ソファーに倒れ込んで眠ってしまった事を思い出した。
「あっ……ああ。……すみません」
「なんで、謝るの?いい大人なんだから、好きなことをすれば良いじゃん。それとも、悪いことでもしたの?」
大門の言葉に苦しくなり、マスターは大門をまともに見ることが出来ない。
「僕が遅く帰って来た時、七海が安心をする気持ちがわかった」
マスターは大門から視線をそらしたまま、大門の言葉を聞いていた。
「酔い潰れて眠っていたけど、七海の顔を見たらホッとした」
マスターは黙ったままソファーから立ち上がり、台所に向かって歩きだした。
流し台の前に立つと、勢いよく顔を洗い出した。
顔を洗い続けるマスターの背中に向けて、大門はマスターに聞こえるように声を張り上げた。
「部活の朝練はないけど、僕もう行くね!」
大門は、リビングから出て行った。
顔を洗っていたマスターは手を止め、マスターは背中で大門の声を聞いていた。




