タイトル未定2026/10/12 20:38
やがて、山盛りのチャーハンを流花は完食した。
「ごちそうさまでした!」
両手をあわせて流花が言い、ニッコリしたもえは、お皿やれんげを片付けた。
厨房で洗い物を終えたもえは、冷酒の準備をして流花と向かい合わせに座った。
おちょこに冷酒を注ぎ、流花ともえは乾杯をした。
冷酒を飲んでいると、流花は不意に切り出した。
「一級建築士の資格に向けて勉強しているから、マスターとは会っていないんです」
「そうなの?マスターに、会えなくて良いの?」
冷酒を飲みほした流花は、おちょこに自ら冷酒を注いだ。
「会いたいです。でも、自分から言い出したから」
黙り込んで冷酒を飲んでいた流花は、ポツリと言った。
「同じ大学の友人で、同じ事務所で仕事をしている彼がいて……」
「その彼のこと、好きなの?」
黙る流花に、もえは問い詰めるように繰り返した。
「好きなのね」
流花は小さくゆっくり頷き、まるで懺悔をするように言った。
「大学生の時知り合って、彼とはいつも口喧嘩ばかりだけど、同じ資格を習得する同士、励ましあったりして……いつの間にか彼のことが好きになって、抵抗なく自然に彼とキスをしていた」
冷酒を飲み続ける流花を、もえはとめなかった。
「流花ちゃん、自分を責めているのね」
冷酒を飲んでいた流花は、顔を上げた。
「アタシは、流花ちゃんを責めないわ。流花ちゃんは若いんだし、彼以外の男性にときめくのは自然なことよ」
流花は、もえをじっと見つめていた。
「自分を、責めないで。流花ちゃんは若いんだから、たくさんの恋をしなさい」
「でも、それじゃぁ……」
「それで、マスターが流花ちゃんから離れて行くような男なら、それまでの男よ。あら、なんだか浮気を推奨しているみたいだわ。アタシったら、やぁね。まぁ、羽目を外しすぎないでね」
もえは、流花に向けてウインクをした。
もえの店を出た流花は、肩にさげていた大きなカバンから携帯を取り出した。
携帯にはマスターからの電話の着信とラインの着信が入っていた。
流花はすぐ、ラインを開いた。
マスター
『さっきは、電話に出れなくてすみません。週末、会えるのを楽しみにしています』
流花はマスターに、すぐ返事を送った。
流花
『私も、マスターに会えるのが楽しみです。マスター……早く会いたい』
流花は穏やかな気持ちに包まれ、歩きだした。




