タイトル未定2026/10/12 20:30
一日の業務が終わったが、流花は安達と話し込んで、職場を出るのがすっかり遅くなってしまった。
「あぁ、もうこんな時間か。引きとめちゃって悪かったね」
「大丈夫です。お疲れ様です、お先に失礼します」
「お疲れ様」
職場を出ると辺りは真っ暗で、貧弱な灯りしかなく、人通りもなかった。
夜道を一人で歩いていると、いつの間にか流花の側に田中がいた。
「田中君も、今帰りなんだ」
田中は何も言わず、流花の手を握ってきた。
黙ったまま流花は、田中の手を振りはなそうとしたが、田中は構わず流花と手をつないだまま歩いた。
強引な田中に少し呆れながら、手をつないだまま歩き、田中に聞いた。
「どうして、私を好きになった?」
「佐野がなぎちゃんに一目ぼれをして、なぎちゃんに近づいていた時、なぎちゃんの隣に流花ちゃんがいた。凛として立っていた流花ちゃんを、いつの間にか追うようになっていた」
「そうだったの?そんな風に、感じなかった」
「だろうな。それまでの俺は、異性に全く興味がなかった。流花ちゃんが、初めてだった」
「夢を壊すようだけど、私はめんどくさがりやの大食いだよ」
「それも含めて、流花ちゃんが好きだよ」
不意に田中は、流花をキツく抱きしめキスをした。
長いキスの後唇を離した田中は、流花をそっと抱き寄せた。
流花は、田中の胸の中にいた。
「俺のキスを、拒んだりしいよな。嫌いだったら、俺とキスなんてしないよな」
流花は何も言わず、黙ったまま田中の言葉を聞いていた。
田中はそっと流花を離すと、流花と田中は見つめ合い、どちらともなく唇を重ねた。
長いキスの後田中の唇は、流花の首すじを這った。
さすがに流花は、田中を拒んだ。
「好きなら、良いだろ」
「これ以上は、駄目。戻れなくなる」
田中から離れた流花は、思いきり駆け出した。
息が切れそうなほど走った後、流花は息を整えながらゆっくり歩いた。
……あのままいたら、流されるとこだった……。
田中の想いを断ち切るように流花は、大きなカバンの中から携帯を取り出し、通話ボタンを押した。
電話は、すぐつながった。
「マス……」
「すみません。今、手が離せないので、すみません!」
それだけ言ったマスターは、流花が言葉を言う暇を与えず通話を切った。
……今の、マスター?……。
あっという間に切れた携帯を見つめていた流花は、携帯を大きなカバンにしまい歩きだした。




