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王子様系女子達が僕の家に入り浸って楽しんでいる秘密のこと  作者: ヤマモトユウ(スケ)


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第55話 王子様系女子達が僕の家に入り浸って楽しんでいる秘密のこと(3)


 食用油を揚げ鍋にたっぷり注いで加熱しておく。

 取り分けておいたサーモンを取り出す。表面の水分をキッチンペーパーで拭き取り、軽く塩胡椒を振る。

 薄力粉をまぶして余分な粉を落とし、卵液にくぐらせ、パン粉をつけて、熱した油へ、身や衣が崩れないよう、そっと投入する。

 揚げ時間は、ごく短く。中まで火が通らない(・・・・)ように、三十秒ほどで揚げ網に引き上げる。

 油が切れたら、ざく、ざくとカット。


 ――うん。断面はきれいなピンク色。サーモンレアカツの完成だ。


「おおー……。なんて美しいんだ……。はやく食べたい……」


 いつも通り、キッチンカウンターに近づいてきた玲音が、うっとりした瞳で断面を眺めている。もう我慢の限界っぽい。

 レアカツに取りかかっている間に、薫が作ってくれたタルタルソースも添える。

 潰したゆで卵に、マヨネーズ、刻んだらっきょう、乾燥パセリを混ぜ、塩胡椒で味を調えたものである。本来はピクルスを使うのだけれど、らっきょうを使うと日本人好みの味になるのだ。


 ……野菜が全然ないな。

 レタスをさっと洗って水気を取り、ちぎりながら考える。

 あとは鮭の頭と中落ちだ。

 頭は塩焼きもありか……と思ったけれど、中落ちと一緒に鍋にすれば、いい出汁が出そう。でも、今日はさすがに多すぎる気がする。


 ぴー、ぴー、と炊飯器から炊き上がりの音がした。

 頭と中落ちはまた今度だね。仕上げるとしよう。


 刺身の大皿を冷蔵庫から取り出し、いくらをスプーンでばらばらと散らして盛り付ける。

 サーモンポキにはごまを、ユッケには刻み海苔と卵黄を。

 サーモンレアカツはレタスと一緒に盛り付け、タルタルソースを添える。


 ローテーブルの上が、豪華なサーモン料理でひしめき合っている。

 贅沢すぎてめまいがしそうだ。


「超映えてますよ、こと先輩! すごい!」

「本当に凄いな、これは。私も写真を撮ろう」


 薫が嬉しそうにスマホのシャッターをパシャパシャ切りまくっている。

 一輝先輩も、一枚だけ撮った。

 玲音も撮るかな……、と思ったら、スマホなんて知ったことかと言わんばかりに、もう箸を握りしめていた。

 夏の日差しよりもまぶしい笑顔で、玲音は言った。


「ことか君! ご飯、特盛りで!」


 ●


 僕ら四人、盛大に食べた。

 もちろん、玲音が一番たくさん食べたけれども、とはいえ、普段は少食な一輝先輩ですら、白米をおかわりしたのである。それくらい、みんないっぱい食べた。

 ……ちなみに僕もおかわりした。

 ローテーブルの上のお皿はすっかり空になっている。


「美味しかった……! 人生でこんなにサーモンを食べた日は初めてだよ」


 玲音がお腹を撫でながら言った。彼女は三回もおかわりした。玲音専用の大ぶりなご飯茶碗で。炊いた白米が全滅である。気持ちいい食べっぷりであった。


「お刺身といくらはもちろん、ユッケもポキもご飯泥棒で困ったよ。ユッケはサーモンの脂に甘辛いタレと卵黄が絡んでご飯が止まらないし、ポキはサーモンの旨味とアボカドと醤油がクリーミーに調和してご飯が止まらないしで。それに、極めつけはレアカツだ」


 思い出したのか、ぺろりと唇を舐める。……え、まだ食べられるの?


「サクサクの衣に、中身はレアなサーモン。外側の少し火が通ったところもほろほろ(・・・・)で最高だった……! もちろん、タルタルも超美味しかったよ、薫。らっきょうがポイントだね、あれは」

「えっへっへ。刻んで混ぜただけっすけどね」


 薫は謙遜するけれど、一輝先輩も「タルタルも見事だった」と追撃の褒め言葉を繰り出した。


「刻んで混ぜただけかもしれないが、具材の大きさが揃っていたし、塩味の調整もカツにぴったりだった。成長を感じるぞ」

「褒めすぎっすよー、にゃへへ」


 半分溶けたみたいな笑い声だ。

 わかるよ。料理を褒められると嬉しいよね。

 ……と、そうだ。


「そんなに喜んでもらえたら、なのちゃんも喜ぶと思う。味の感想を伝えておくよ、たぶんそれが聞きたくて送ってきたんだと思うし」

「んふふ。本当に素晴らしいサーモンフェスだった。まさか、サーモンをまるっと一匹分もご馳走してもらえるなんてね。何かの機会に、恩返しをしなければ。ああ、僕個人からも味の感想とお礼のメッセージを送っておくよ」


 うん。……って、いつの間に個人の連絡先を?

 いや、先日、会ったときなんだろうけれども。コミュ力お化けだな、やっぱり。


 さりとて、これで終わりではない。

 コーヒーメーカーのスイッチを押して、昨日作っておいたスイーツを取り出す。

 白い、マグカップ大の円柱状のケーキだ。上には軽く焼いて焦げ目を付けたトウモロコシの粒をトッピングしてある。

 一輝先輩がきらり(・・・)と目を光らせた。


「ほほう。トウモロコシのレアチーズケーキだな。韓国で一時期流行ったやつだ」

「よく分かりますね、一目で……」



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