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王子様系女子達が僕の家に入り浸って楽しんでいる秘密のこと  作者: ヤマモトユウ(スケ)


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第54話 王子様系女子達が僕の家に入り浸って楽しんでいる秘密のこと(2)


 大変ありがたいことに、なのちゃんは――いや、おそらく、なのちゃんに配送を頼まれた人が――配送直前に、エラと内臓をとって三枚におろし、皮を引き、右身左身それぞれから細い骨を抜き、腹骨をすいてからパッキングしてくれていた。

 本当にありがとうございます……、北に向かって感謝の念を送っておこう。


 さて。

 配送前に冷凍してあるようだけれど、配送過程で若干解凍が進んでいる。

 素人的には嬉しいところ。半解凍くらいの、包丁で切れるけれど、身が崩れるわけでもないくらいの柔らかさが扱いやすいのだ。


 まずは、うちで一番大きなまな板を出す。こうやってみると、料理ってかなりスペース使うよなぁ、と思う。

 右身、左身をそれぞれ背側、腹側に切り分ける。背骨が入っていたラインに包丁を入れるだけだから、これは簡単。

 背側の分厚いところを切り分けて、冷蔵庫へ。レアカツ用に置いておくのだ。


「薫、ゆで卵作ってもらえるかな。タルタルソースにするから」

「了解っす! あ、米も炊きますよね?」

「そうだった。絶対必要だよね。お願いしていい?」

「もちろんです!」


 まだ一ヶ月だけれど、薫は頼りになる。基本的に要領がいいのだ。包丁の扱いも、時間をかけて慣れていくことだろう。サーモンもちょっと切ってもらおう。

 レアカツ用以外の部分は刺身とユッケでいくか。あと、そうだ。もらい物のアボカドがあったはず。これでサーモンポキも作ろう。


 サーモンに包丁を入れる。

 刺身は包丁の扱いの実力が如実に出るな、と思う。

 切り口はまっすぐ、表面はなめらかで、角のキリッと立つ刺身は、一朝一夕で身につくものではない。

 僕? まだまだです。プロの切った刺身と見比べたら、ガタガタもいいところ。


 それでもなんとか、背側、腹側のいいところを刺身にする。

 盛り付けるのは、大きな丸い皿。朝、大根を千切りにしてつま(・・)を作っておいたので、それを中央に盛って、山を作る。

 あとは円状に丸くサーモンの刺身を盛り付けていけばいい。

 真ん中には、刺身を何枚か重ねて巻き、バラの花みたいな見た目に整えて盛り付ける。ぐっと華やかになった。

 食べる直前まで、乾燥防止にラップをして冷蔵庫に置いておく。


 刺身にしなかったところは、薫にごろごろとサイコロ状にカットしてもらい、半分はサーモンユッケに、もう半分はサーモンポキにする。


「ユッケはわかるんですけど、ポキってなんですか?」

「えっと、ハワイの郷土食で……、お刺身と野菜を和えたやつ、かな」


 詳しくは知らない。ちらりとソファの方を向くと、一輝先輩がもうスマホで調べ始めていた。知識欲のある人である。


「元々、ポキとはハワイの言葉で『小さく切る』のような意味があるらしい。昔から捕れた魚をポキにしていたようだが、ハワイに外の人間がやってくるたびに食文化を吸収し、漁獲量が安定してからはマグロやカツオを使うレシピが多いとか」

「へえ……。ちなみに一輝先輩はハワイに行ったことあります?」

「ない。だが、いつか行ってみたいと思っているぞ」


 一輝先輩には、さぞかし夕日のビーチが似合うだろう。


「ふふ、ハワイに行ったら、ことちゃん。海辺で水着デートをしよう。玲音と薫は日本でお土産を楽しみにしているといい」

「取らぬ狸の皮算用だ! いや、一輝なら旅費くらい簡単に出せるか。抜け駆け防止用に、僕も貯めておかないとな……」

「ずるいっす。うちはあんまりお金ないから……」


 薫がしょぼくれた声を出したので、一輝先輩は慌てて、


「もちろん冗談だぞ。うむ。四人分出すとも」


 と言った。いやいや。


「それはさすがに悪いので、旅行はもっと近場にしましょう。薫も泣き真似しないの。ほら、次はタマネギとアボカドね」

「む。泣き真似だったのか?」


 薫が舌を出して笑った。悪い子め。


「えへへ、ごめんなさい。でも、これで言質が取れましたね。こと先輩、近場なら旅行に付き合ってくれるそうですよ」

「え? いや、もし行くなら、っていう仮定の話であって――」

「玲音、どこがいいと思う?」

「うーん、近場なら温泉とか?」


 ダメだ。もう玲音と一輝先輩が協議に入っている。

 薫はくすくす笑って、タマネギに取りかかった。……そして本当に泣いた。


「うー。タマネギを泣かずに切る方法ってないんすか?」

「なくはないけど、悪い子には教えない」

「うう……! でも、ちょっと意地悪なこと先輩も新鮮でいいっすね」


 やかましい。


 刻んだサーモン、タマネギ、アボカドを、ごま油、醤油、砂糖、おろしニンニク、わさびで作ったタレで和えて、ちょっと置いておく。食べる直前に炒りごまを振れば完成だ。

 ユッケも同様に、刻んだサーモンを、ごま油、醤油、コチュジャン、おろしニンニクとおろし生姜で作ったタレで和えて置いておく。こっちは食べる直前に卵黄を乗せて、刻み海苔を散らそう。


 さて、それでは――、お待ちかねのサーモンレアカツに取りかかるとする。



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