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王子様系女子達が僕の家に入り浸って楽しんでいる秘密のこと  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!


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40/50

第40話 俺っ子で小悪魔な王子様系後輩と映えデート(3)


 土曜日、お昼前。

 僕は電車に乗って、少し大きい駅に向かっていた。車窓の向こう側で、近所では見ない高さのビルや、巨大な広告が、次々に流れていく。

 僕の住む古民家のある一帯が()なら、このあたりは()だ。


 駅に着く。

 百貨店と繋がった広い駅で、いわゆるターミナル駅というやつ。

 人混みに揉まれながら改札を出て、駅前広場の時計台の下に向かう。


『着いたよ』


 薫にそうメッセージを入れておく。約束の時間まであと十五分ほどあるから、気長に待とう……、と思っていたら、スマホがすぐに震えた。


『俺も着きました!』


 手短なメッセージと共に、ハートまみれの猫のスタンプ。

 もう着いているのか。そうなのか。顔を上げて周囲を見回す。

 私服は一度見たことがあった。Tシャツとショート丈のサロペットパンツ。

 あの日と同じ服を着ているかどうかはわからないけれど、薫は健康的できらきら(・・・・)した“王子様”だから、見逃すことはまずない。

 ……なのに、見つからない。


『本当にいる?』

『いますよ! 探してみてください。変装してますんで』


 また猫のスタンプ。ふむ。

 もう一度、ぐるりと見回す。やっぱり、薫はいない。

 でも、ばっちりと目の合う相手がいた。時計台の下、僕から三メートルほど離れたところに立っている美少女(・・・)だ。

 その美少女は、口元は黒いマスクで見えないけれど、目を弓の形にして、にやにやと笑っている。


 フリルの付いたピンクのブラウスに、黒い編み上げのリボンスカート。首元にはハートの装飾が光るチョーカー。靴は厚底のパンプス。

 髪型は赤いメッシュの混じったツインテール。まぶたではラメが輝く。黒いマスクと合わせて、いかにもスタンダードな地雷系ファッションだ。


 視線を合わせて、凝視してしまう。別人だったらどうしよう――、という不安は、二秒で消えた。この瞳は、だって、薫しかない。

 ……え、本当に?

 恐る恐る近づいて、


「薫……だよね?」


 と、確認してみる。

 地雷系美少女はマスクを指でずり下げて、ぷるぷるの唇でにんまりと笑った。


「正解です! えへへ、姫先輩なら気づいてくれると思ってたっす」


 ……。絶句する僕をよそに、薫は得意げな顔で言葉を続ける。


「ふっふっふ。玲音先輩や一輝先輩は背が高くてスタイルもいいっすからね。どんな服でも注目されるっす。でも、俺はさほど背が高くないから、地雷系コーデでもあんまり注目されないんですよ。賢いでしょ。えっへん!」

「いや、もう普通に美少女過ぎて注目されてるよ……」


 言ってから、ちょっと後悔。

 薫が見るからに「ははーん」という表情になったからだ。


「俺、美少女ですか? 美少女なんですね?」

「……まあ、うん。客観的に見て、そう評価するしかないんじゃないかと思うよ。世間一般の趣味嗜好に照らし合わせれば、間違いなく美少女の範疇に入っているだろうね。アンケートをとったわけじゃないけども」

「客観的とか世間一般とかじゃなくて、姫先輩がどう思っているのかを聞きたいんですけど?」


 薫が唇を尖らせて見上げてくる。

 至近距離から、じー……、と。


「じー……」

「擬音を自分で言うなよ……」

「返事があるまで凝視するっすよ。じー……」


 この後輩は、まったく……。

 僕は顔を逸らした。はずい。頬が熱い。


「……可愛いよ。よく似合ってる」

「やたー!」


 薫が小さく跳ねてガッツポーズする。

 ファッションは地雷系でも、振る舞いは完全にいつもの薫だ。ちょっと安心。

 安心したからか、心の余裕も生まれてくる。


「にしても、すごい変装だね。髪が長いのと赤いのは、ウィッグ?」

「いや、エクステっす。今朝、ママにやってもらいました。……行きましょっか」


 薫が、ちょっとそわそわしながら言う。

 そうだった。ここは目的地ではなく、待ち合わせ場所。

 これから、僕らはその、いわゆるデート的なことをするのである。



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