第30話 極厚カツ丼と体育祭(9)
その日、玲音と薫の強い希望により、リノベ古民家で晩ご飯を食べることと相成った。なお我が校は「ファミレス等での打ち上げ禁止」であるため、体育祭後はみんなさっさと家に帰される。もうちょっと緩くてもいいのにね。
とはいえ、そのおかげで、古民家に集まれるのである。各自、自宅でシャワーを浴びて、着替えて集合するという手間があったけれど……それ以上に、どういうことなのか、聞きたかったのだ。
「さて、説明してもらおうか、一輝」
と、玲音が言った。飾り気のない白いワイシャツにスキニージーンズという、玲音らしいシンプルな私服だ。
大盛りの茶碗を片手に持っていなければ、見惚れていたことだろう。
「そっすよ! なんで負けたんですか、俺ら」
薫が味噌汁を飲みながら、悔しそうに言った。Tシャツにショート丈のサロペットパンツを合わせている。健康的な四肢がまぶしい。
「何もずるいことはしていないぞ。ただ、正々堂々と戦っただけだ」
一輝先輩はソファに腰掛け、余裕綽々の態度で豚バラとキャベツの炒め物をご飯にバウンドさせている。
……なんと、黒いドレスワンピースである。例の海外ブランドのものだろう。制服以外は、基本的にそのブランドで揃えていると以前言っていた。似合いすぎていて、玄関で迎えた際、本当に見蕩れてしまった。
あと、ご飯前にジャケットを脱いだから、その腕とか胸元とかが艶めかしくて、そのう……。視線のやり場に困る……。
……僕? 僕は上下ジャージです。料理してたからね。
「もちろん、B組連合の一員として、戦略は提案したがな。単独競技は、一位と二位が玲音と薫に独占されてしまう――これは誰だって分かることだ。二人はあまりにも強いからな。……だが、体育祭は大きな目で見れば団体戦。ルールそのものには、いくらでも付け入る隙があった。もう気づいているだろう?」
「……点数配分だね?」
玲音が嘆息して言った。
点数配分というと、一位は50点、二位は40点……になるやつか。
「そうだ。私の策はシンプルだぞ。個人競技の一位と二位はもう逃していい。その代わり、三位から五位までを独占できるようなメンバーを選出し、練習を積もう――それだけだ。そうすれば、一つの競技で60点を得ることができる」
薫が「そっか」と頷いた。
「仮に、一位と二位を同じ組が独占したら90点ですけど、そうはならないっすもんね。だって、俺と玲音先輩が一位と二位を分け合うわけですから」
「そうだ。無論、三位から五位を独占できなかった競技もあるが、うち二つを取れれば30点から50点にはなる。大きな点数差にはならない」
一輝先輩は、澄まし顔でほうれん草のおひたしに箸を伸ばした。
「あとは、個人の強さが影響しにくい全体競技。これは全て勝つつもりで臨んだぞ。玉入れ、応援合戦、障害物競走、綱引き……。プロの動画を参考に、徹底的に勝利を追求し、パフォーマンスやフォーメーションを練り上げたのだ」
「玉入れってプロいるんですか?」
「何にだって、熟練者はいるものだぞ、姫ちゃん。……というわけで、二人とも素晴らしい選手ではあったが、大局観が足りておらず、賭けは私の勝ちだ。なので、勝者の特権により、約束通り――」
一輝先輩の切れ長の瞳が、僕を貫いた。
「――姫ちゃんを一日独占させていただく。姫ちゃん、いつ空いてる?」
……。
えっ? 僕ですか?
よろしければ、
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