第9話 耳の後ろを掻く指
11月は、冷たい風を東京の交差点に吹き込ませ、新宿御苑の紅葉を燃えるような赤に染め上げた。今年の秋は遅れてやってきたが、心が痛むほど静かで憂いを帯びた美しさを持っていた。
夏の夜の花火大会以来、ハルトは自分の胸の中で奇妙な不安定さが膨れ上がっていくのをはっきりと感じていた。認めたくはなかったが、彼が人生で二人の女性に費やす時間は、極端なほどに対立する二つの半分に引き裂かれようとしていた。
週末、ハルトの世界はフユカという名の平穏で満たされた。
二人は六義園の燃えるような紅葉の下を一緒に散歩した。フユカは薄手のベージュのウールコートを着ており、その姿は水墨画のように優雅で儚かった。秋風が吹き抜け、ハルトが軽く肩をすくめた時、フユカはすぐに立ち止まった。彼女は優しく背伸びをし、チェック柄のウールのマフラーを自らの手で彼に巻き直し、そしてハンドバッグから小さな水筒を取り出した。
「ほうじ茶を少し飲んで、体を温めて」フユカは微笑み、湯気が立ち上る琥珀色の液体を小さなキャップに注いで彼に手渡した。
彼女の優しい笑顔と、髪の毛一本一本にまで及ぶような細やかな気配りを見て、ハルトの心に絶対的な温もりが込み上げた。最近、フユカはパリに送るための追加書類の準備でとても忙しく、目の下にはクマができていたが、それでも彼への気遣いを忘れたことは一度もなかった。ハルトは温かいお茶を一口飲み、自分に言い聞かせた。「ここが僕の帰る場所だ。家庭的な女性、僕が命を懸けてでも守らなければならない完璧な家庭だ」。彼は彼女の手を握り、自分のコートのポケットに入れ、そのかけがえのない平穏の中で自分の魂を子守唄のように眠らせた。
しかし、週末の休日が終わると、ハルトはナツミという名の、忙しく、騒がしく、活気に満ちた現実へと投げ戻された。
会社は年末のプロジェクトに向けたラストスパートの段階に入っていた。仕事のプレッシャーが全員の肩に重くのしかかっていた。ロマンチックなアフタヌーンティーも、温かいウールのマフラーもない。ハルトとナツミの間のコミュニケーションは、素材の仕様に関する激しい口論であり、パソコンのモニターにびっしりと貼られた蛍光イエローの付箋紙だった。
しかし、その混沌の中でこそ、日常の習慣が自然と彼らの生活に入り込んできた。
ある晩秋の午後。ハルトがデザインの行き詰まりで頭を抱え、風邪で絶え間なくくしゃみをしていると、安い風邪薬のシートが彼の机に「ポンッ」と投げ落とされた。
「飲め!ズーズーうるさくてこっちまで頭が痛くなるわ!今ここで倒れられたら、あんたの首絞めてやるからね、このバカ!」ナツミは書類の束をパラパラとめくりながら、きつい口調で言った。
甘い言葉も、優しい気遣いもない。しかし、ハルトが薬の粒を取り出して口に放り込んだ時、彼の唇には思わず笑みがこぼれていた。あるいは、午後8時まで残業していた時のこと。外の通りから石焼き芋の売り声が聞こえると、ナツミは慌てて買いに走った。二人は会社のベランダに立ち、体裁など気にせず、火傷しそうに熱い芋をかじりながら図面について議論し、秋風に髪を乱されるがままにしていた。
ガラスの檻の中のロマンスはないが、ハルトは自分の血が沸騰しているのを感じた。彼は最も「自分らしく」いられ、生き生きと、リアルに、そして快適に現在を転げ回ることができた。フユカのそばにいる時、彼は休息を得た。しかしナツミのそばにいる時、彼は戦うためのエネルギーを充電していた。彼の胸の中の天秤は50:50のラインで揺れ動き続け、大人の男の精神を搾り取っていった。
11月半ばのある夜のことだった。
会社は秋のプロジェクトの無事終了を祝う飲み会を開催した。誰もが羽目を外して飲んでいた。ナツミは普段とても酒に強いのだが、今日は何人かの部長から焼酎のロックを立て続けに飲まされ、すっかり泥酔してしまった。
夜11時のお開き後、ハルトはこの毛を逆立てた「おばさん」を居酒屋の前の石のベンチまで連れ出し、タクシーを待つ任務を引き受けた。
深夜の秋風は骨まで凍りつくほど冷たかった。ナツミはタートルネックのセーターを着て、アルコールで両頬を真っ赤に染め、トロンとした目はぎゅっと閉じられていた。彼女は石のベンチに座り、起き上がり小法師のようにゆらゆらと揺れていた。
「じっとしてろよ、おばさん。地面に転げ落ちるぞ」ハルトは文句を言いながら、タクシーを呼ぶためにスマホのボタンを押し、顔をしかめて彼女を横目で見た。
小言を聞いて、ナツミが薄く目を開けた。アルコールに浸かったトロンとした目が、不機嫌に顔をしかめるハルトの顔を真っ直ぐに見つめた。突然、彼女は「えへへ」とバカっぽく笑った。
ナツミは体を前に乗り出し、突然両手を伸ばして、ハルトの両頬をピシャッと挟み込んだ。そして、まるで無意識の本能のように、彼女の指が彼の髪に入り込み、上に向かって撫で上げ、そして……耳の後ろのうなじの辺りを、優しく掻き始めたのだ。
「うるさいなぁ……猿みたいにシワ寄せちゃって……」ナツミはろれつの回らない声でブツブツと呟いたが、耳の後ろを掻くそのリズムは信じられないほど規則的で、手慣れていた。「よしよし……そんなにキャンキャン吠えないの、バカ犬……」
普段のハルトなら、彼女の手を払いのけ、この奇妙な撫で方に対して大声で怒鳴りつけていただろう。
しかし、そうはならなかった。ナツミの柔らかい指が耳の後ろを優しく掻いたまさにその瞬間、奇妙な電流がハルトの背筋を走り抜けたのだ。苛立ちで強張っていた彼の筋肉のすべてが、突然……ドロドロに溶け落ちてしまった。
ドクン。
それは男としての胸のときめきではなかった。魂の最も深い底からやってきた、生物学的な反射だった。無意識のうちに、ハルトの目はゆっくりと半開きになった。彼の頭は思わず傾き、彼女の手のひらに少し寄りかかり、圧倒されるほどに見覚えのあるリズムを持った、その乱暴な撫で方を受け入れるために軽く擦り寄った。
そして、古いフィルムの束が旅人の心の中で炎上した。
六度目の人生。19世紀初頭、アメリカの静かな郊外。彼が人間ではなかった人生。彼はマックスという名の金色の毛並みの大きな犬で、一年中家のポーチの周りをうろついていた。外の雷雨に不安になってクンクンと鳴いたり、エサを求めて激しく吠えたりするたびに、飼い主のクロエが駆け寄ってきて、その細い両手で彼の頬を挟み、耳の後ろに指を入れてまさにこのように優しく掻きながら言ったのだ。「いい子ね、マックス……もう吠えないで、おバカさん」
あの細い手に撫でられる平穏は犬の魂に深く刻み込まれ、その年の短い命を使って、その少女をあらゆる危険から守り抜くと誓わせたのだった。
『彼女の魂は輪廻によって砕け散ってしまった……カミは、その運命の破片を、幾度もの人生を越えてきた最も原始的な感覚や習慣の中に隠したのだ……』
潜在意識の中にある神の啓示が、雷鳴のように響き渡った。
机の上で指を三回叩く音。吹雪の中での死に対する現実的な悪態。そして今……六度目の人生で、小さなクロエが犬のマックスにしてくれた、耳の後ろを掻くリズム。
運命のすべての破片が叫び声を上げ、目の前で泥酔している女の子を真っ直ぐに指し示していた。
まさか……
ハルトの胸が窒息しそうになった。恐るべき感覚が襲いかかり、彼の無意識の「享受」を引き裂いた。ハルトは目をカッと見開き、真っ赤な炭火にでも触れたかのようにビクッとして後ろに飛び退いた。
もしナツミが本当に六度目の人生のクロエなら。もし彼女が、一度目の人生で彼に優しさを教え、共に吹雪の中で死んだ貧しい少女、ユキだとしたら……。これまで彼女に対して感じてきたすべての動揺が、本来の自分からの呼び声だったとしたら……じゃあ、フユカに対する僕の愛は一体何なんだ?
彼は誓いを立てた。あの「冬の花」にすべての愛と責任を注ぎ込んだのだ。フユカこそが、あの年の吹雪の中にいた少女の生まれ変わりだとずっと信じてきた。もし今、ナツミを認めてしまったら、それは人違いをしていたということになる。これまでフユカに向けてきたすべての保護、すべての無理な努力は、自分自身で作り上げた妄想の嘘に過ぎなかったということになる!
「いや……違う」ハルトは呟いた。秋風が吹き荒れているというのに、額には冷や汗が滲んでいた。「酔っ払いが変なことをしただけだ……偶然だ、全部ただの幻覚だ」
彼は恐怖を感じていた。これほど多くの人生を歩んできた勇敢な旅人が、初めて極度の臆病者になったのだ。彼は、自分が間違った相手に誓いを立ててしまったという現実に直面することを恐れた。フユカがもたらしてくれている完璧で平穏な世界を、自分自身の手で破壊しなければならないことを恐れたのだ。
ハルトは歯を食いしばり、狂おしく打ち鳴る心臓の鼓動を抑え込もうとした。ちょうどその時、タクシーが到着した。彼は慌ててナツミを後部座席に押し込み、ドアをバタンと閉め、運転手に彼女の住所へ送り届けるよう指示すると、凍える歩道に釘付けになったまま、溺れかけた人のように荒い息を吐いた。
恐怖は、極端なまでの執着へと変わった。人は自分の核となる信念を奪われそうになった時、自分自身を誤魔化すために、常に最も安全なものにしがみつこうとするものだ。
人気のない交差点の真ん中で、ハルトは震える手でスマホを取り出した。彼はフユカの番号をダイヤルした。
電話はすぐに繋がった。フユカの寝起きの、柔らかく甘い声が響いた。「ハルトくん?飲み会終わったの?たくさん飲んだ?」
その穏やかな声を聞いて、ハルトは目をぎゅっと閉じた。彼は自分に言い聞かせた。これこそが僕の現実だ。これこそが僕が守るべき人なんだ。ナツミに対する奇妙な感覚など、すぐに消し去らなければならない馬鹿げた本能の塊に過ぎない。この50:50の天秤は危険すぎる。破壊しなければならない。
「フユカ」ハルトは口を開いた。心の中で叫び声を上げている真実を否定するかのように、その声を極限まで断固としたものにして。「今年のクリスマス……空いてる?」
「え?クリスマス?まだ一ヶ月以上先だけど……もちろん、あなたのために時間は空けてるよ」フユカは少し驚いたようだったが、すぐに嬉しそうに答えた。
「前もってレストランを予約しておきたいんだ。大切なデートをしよう。僕は……君との将来について、正式に話し合いたいんだ」
ハルトはスマホを強く握りしめ、その鋭い目は暗い夜の虚空を頑なに見つめていた。彼は決めたのだ。「ナツミ」という名のこの馬鹿げた感情に、これ以上一秒たりとも自分を支配させない。フユカとの未来をしっかりと固め、彼女を唯一の運命に変え、心を蝕むあらゆる疑念を自らの手で握り潰すのだ。
放浪の浪人は、自分を守るための最も卑怯な方法を選んだ。真実を叫んでいる魂を覆い隠すために、新しい約束を使うという方法を。
お読みいただきありがとうございます!
次話は明日19時20分に更新します。
ブックマーク・★評価・感想、いつでもお待ちしています。




