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第10話 ガラスの檻が開く夜

12月はシベリアから押し寄せる寒波とともに襲来し、東京全体を重苦しい灰色の雲と、ハラハラと舞い散る初雪で覆い尽くした。

今年の冬は例年よりも寒かった。しかし、外の肌を刺すような寒さも、ハルトの心を包み込んでいる混沌に比べれば、何でもないように思えた。

居酒屋で六度目の人生の金色の犬の魂が無意識にナツミの掌に頭をすり寄せてしまい、あの調子が狂った夜以来、ハルトの理性の世界は完全に揺らいでいた。彼はパニックに陥っていた。潜在意識の中で叫び声を上げている真実から、極限の執着によって逃れようとあらゆる手段を講じた。彼はフユカにしがみついたのだ。

フユカとの約束さえ果たせば、あの「冬の花」との未来をしっかりとロックしさえすれば、ナツミに対するあらゆる疑念や、驚くほどの心の震えは、初雪のように自然と消え去るはずだと、彼は自分に言い聞かせた。

そうして、12月下旬のある日の午後遅く。オフィスが年末決算の書類の山で溢れかえっている中、ハルトはすでに上品な黒のウールのトレンチコートを着込み、重要なデートのために早退する準備をしていた。彼は今夜、正式にプロポーズし、フユカの指に婚約指輪をはめるつもりだった。

オフィスの隅では、ナツミが髪をボサボサにして、両手でキーボードをカタカタと叩き、パソコンのモニターには技術仕様の表がびっしりと表示されていた。窓ガラスの外では、吹雪がビュービューと唸り声を上げていた。

ハルトが襟を直し、鞄を持ってドアに向かうのを見て、ナツミは顔を上げた。彼女は、いつもとは違う着飾った彼の姿を見て、黒い瞳を少し瞬きさせた。

「ちょっと、デザイン班長」ナツミが声をかけ、部屋の静寂を破った。「まだ午後3時半なのに、仕事サボってどこへ行く気?プロジェクトの原稿も印刷終わってないのに、逃げ出すつもり?」

ハルトは足を止めた。振り返り、オフィスの青白い蛍光灯の下にいるナツミを見た。彼女は本当にだらしなくて、意地っ張りに見えた。茶色いお団子ヘアは片方に傾き、古びたTシャツの上にダボダボのセーターを羽織っている。ロマンチックな要素は微塵もなく、「完璧」という基準は彼女には一つも当てはまらなかった。

しかし、その乱れた、むき出しのリアルさこそが、ハルトの胸を締め付けた。

「俺は…ちょっと私用があるんだ」ハルトは彼女の視線を避け、言葉を濁した。「大切な約束が」

ナツミは一拍、沈黙した。いつもの毒舌も、皮肉もなかった。彼女はゆっくりと椅子から立ち上がり、デスクから離れて彼に近づいてきた。

彼女の足取りは羽のように軽かった。ナツミが彼の前に立った時、二人の距離はほんのわずかだった。ハルトは息を呑んだ。彼女に染み付いた馴染みのある香りが、彼の鼻腔を直撃した。それは高価で豪華な香水ではなく、苦いブラックコーヒーの匂いと、素朴で奇妙なほど温かい洗濯石鹸の香りが混ざり合ったものだった。

ナツミは手を上げた。彼女の細く長い指が、片方が折れ曲がっていた彼のトレンチコートの襟に触れた。彼女はそれを丁寧で細やかにまっすぐに直し、そして彼の胸元の生地のシワをそっと撫でて平らにした。

その仕草はあまりにも自然で、優しかった。それはガールフレンドの世話焼きではなく、心の底から理解し合えるソウルメイトからの労わりだった。

ナツミは輝く瞳を上げ、彼を真っ直ぐに見つめた。彼女の唇が弧を描き、笑顔を作った。それはハルトがこれまでに見た彼女の笑顔の中で、最も輝かしく、最も純粋なものだった。嫉妬も、利己心も全くなく、ただ絶対的な寛容さだけがあった。

「キマってるわよ」ナツミは、疲れでかすれた声で囁いた。「今夜はすごく風が強くなるわ。あんたのお姫様をしっかり風から守ってあげなさいよ……絶対に彼女を幸せにするのよ、このバカ」

ドーン。

まるで一本の稲妻が落ちてきて、ハルトの頭の中にある最後の防衛システムを完全に破壊したかのようだった。

彼女は彼を祝福しているのだ。彼女は自らの手で、誠意と無私の心のすべてを込めて、彼を別の女性の元へと押し出しているのだ。ナツミは彼が自分のものになることなど一度も求めたことはなかった。彼女はただ静かにそこに立ち、夏の炎のように激しく燃え上がり、そして彼が安全な港を見つけられるように、自ら身を引いたのである。

ハルトの胸が痛んだ。酸っぱく、息が詰まるような感覚が喉に込み上げてきた。放浪の旅人の心臓が叫んでいた。手を伸ばして、その痩せ細った体を強く抱きしめ、すべてを投げ捨ててこう叫びたかった。「お姫様なんていない!俺がそばにいたいのは、お前みたいな炎なんだ!」

しかし、彼にはできなかった。「架空の責任」という名の枷が彼の手を固く縛り付けていた。ハルトの目は赤く充血し、胸を引き裂こうとする感情を抑え込むために、血が滲むほど唇を強く噛み締めた。彼はひどく乾いた声で短く頷き、声を詰まらせながら言った。「わかってる……わかってるよ……ありがとう、おばさん」

そう言い残すと、ハルトは鋭く背を向け、ドアを押し開けて足早に外へ出た。彼はもう一秒たりとも振り返る勇気がなかった。なぜなら、もし一瞬でもためらえば、自分の臆病な壁が彼女の目の前で崩れ去ってしまうと恐れたからだ。

外に出ると、雪はさらに激しく降り始めていた。真っ白な雪の結晶が東京の街灯の光の中を舞い、冷たく、ぼんやりと霞んでいた。

ハルトは六本木にある高級フレンチレストラン——彼が前から予約していた場所——に到着した。店内の空間は暖かく、心地よいバイオリンの音が響き、揺らめくキャンドルの光が高価なガラスの壁に影を落としていた。

フユカはすでに席に座って待っていた。今夜の彼女は、体にフィットしたアイボリーホワイトのニットワンピースを着て、肩まで下ろした髪には繊細なパールのヘアクリップをつけていた。フユカは冬の童話から抜け出してきたお姫様のように美しかった。彼女のすべてが完璧で、基準通りで、非の打ち所がなかった。

「ハルトくん、来たね」フユカは甘く微笑み、立ち上がって彼を迎えた。「体が温まるように、赤ワインを頼んでおいたの」

「ああ、遅れてごめん」ハルトは無理に笑顔を作り、雪にまみれたトレンチコートを脱いでラックに掛け、彼女の向かいの席に座った。

食事が運ばれてきた。精巧で高価な料理が、白い磁器の皿に美しく盛り付けられていた。フユカは相変わらず気を配り、優しく彼の皿に料理を取り分け、その日あった些細で可愛い出来事について楽しそうに話していた。

しかし、食事が始まってから今まで、ハルトはずっと心ここにあらずで座っていた。彼の視線は時折、曇った大きなガラス窓の外へ向けられ、吹雪の中を急ぎ足で過ぎ去る人混みをぼんやりと追っていた。彼の心はここにはなかった。狭いオフィスに、あの優しい笑顔に、そしてナツミの「絶対に彼女を幸せにするのよ」という言葉に、釘付けになっていたのだ。

フユカはナイフとフォークを動かすのを止めた。楽しげなおしゃべりも止まった。彼女は目の前に座る男を静かに見つめ、彼の生気のない目と、隠しきれない落ち着きのなさを見つめていた。

非常に繊細な女性であるフユカは、誰よりもハルトのことを理解していた。彼女は気づいていた。彼の肉体はここに座っていても、彼の魂は……とっくの昔に別の場所に置いてきぼりになっていることに。

「ハルトくん」フユカが声をかけ、気まずい空気を破った。

「え?どうしたの?」ハルトはハッとして振り返り、慌てて作り笑いでごまかそうとした。「スープ、口に合わなかった?」

フユカは笑わなかった。彼女は小さく首を振り、彼の目を深く見つめた。彼女は自分の隣に置かれたブランド物のハンドバッグから、透明なフィルムで覆われた硬い紙のファイルを取り出し、テーブルの上にそっと置いた。

一番上にフランス語で書かれたタイトルを見て、ハルトは固まった。「Institut Supérieur d'Arts Appliqués - Paris」

パリ高等応用美術学院からの、正式な合格通知書だった。

「フユカ……これは……」

「先週、正式な確認通知を受け取ったの」フユカは落ち着いて言い、潤んだ瞳で彼を見つめた。「ハルトくん、私たちが初めて会った日のこと、覚えてる?あの頃の私は、ただの臆病な女の子で、人混みが怖くて、騒音が怖くて、自分のデザイン画を他の人に見せることさえ怖がってた」

ハルトは黙って聞いていた。胸が少し締め付けられた。

「もしあなたがそばで守ってくれなかったら、あなたが徹夜でコーヒーを淹れてくれて、『君のデザインは世界に出る価値がある』って根気よく励ましてくれなかったら、多分……一生このポートフォリオを送る勇気なんて持てなかったと思う」フユカは微笑んだ。それはハルトがこれまで見た中で、最も輝かしく、自信に満ち、成長した笑顔だった。「あなたは自らの手で、私にとって最も頑丈で安全な城を築いてくれた。おかげで私は安心して夢を温めることができた。この合格通知書は……半分はあなたの努力の賜物だよ。ありがとう、ハルトくん。あなたは本当に、私が安全圏から一歩踏み出すための勇気を与えてくれたわ」

「フユカ……」ハルトは声を詰まらせた。先ほどの自分の上の空な態度への罪悪感が、彼を深くうつむかせた。「僕は……ずっと君を守るって約束したのに、今夜の僕は……」

「ハルトくん、自分を責めないで」フユカは優しく彼の言葉を遮り、彼が固く握りしめている手にそっと触れた。彼女の声は低く、理解に満ちていた。「あなたはとてもよくやってくれた。あなたは私を十分に守ってくれたわ。でもね……吹雪に属するために生まれてきた男の人が、一輪の花を守るためだけに、自分をガラスの檻に閉じ込めるべきじゃないの」

ハルトは言葉を失った。顔色を変えて彼女を見上げた。

「さっきのあなたの目を見て、冬が来るたびに、いつもぼんやりと別の影を探しているあなたの姿を見て……私にはわかっていたの。あなたが話してくれた前世の夢の話、私はずっと心に刻んでいたわ」フユカは手を引っ込め、穏やかに微笑んだ。「あなたは私に勇気を与え、パリへ飛ぶための翼をくれた。だから今度は……私があなたに、自由な空を返す番ね」

「フユカ……ごめん……僕は……」ハルトの喉はカラカラに乾き、引き留める言葉を一つも口にすることができなかった。彼女が正しいと分かっていたからだ。彼の偽りは、彼女の利他主義によって許されたのだ。

「謝らないで。この恋には誰のせいでもない。私たちはお互いを良くするために助け合ったんだから」フユカは立ち上がり、華奢な肩にフェザーコートを羽織った。立ち去る前に、彼女は身をかがめ、ハルトの額に優しく、敬意を込めたキスを残した——感謝と別れのキスを。

「あの人なら、あなたと一緒に吹雪の中を突き進めるわ。彼女を見失わないでね、私のヒーローさん」フユカは小声でそう言うと、背を向けてレストランのドアへと真っ直ぐ歩いていった。

彼女は頭を高く上げ、涙を一滴も流さずに歩き去った。なぜなら彼女は、自分自身の最も輝かしい未来へ向かって、最も誇り高い道を歩んでいると分かっていたからだ。

ハルトはその場に釘付けになって座っていた。曇ったガラスドアの向こうに徐々に消えていくフユカの後ろ姿を見つめながら、彼の胸の中は空っぽになったが、奇妙なほど安堵していた。フユカは感謝と共に去っていった。彼女は彼を縛り付けていた責任の誓いを自らの手で解き、この別れを二人にとって成長の転機に変えたのだ。

そして、その自由が訪れたまさにその瞬間、予期せぬ寒気がハルトの背筋を走った。

今日の午後のナツミの疲れた笑顔。「今夜はすごく風が強くなるわ」という言葉が耳元に響いた。誰もいないオフィスで、一人で書類の束を抱えて黙々と作業している彼女の姿が、突然はっきりと目の前に浮かんだ。

東京には吹雪が降り注いでいる。ナツミ……彼女はまだ外で一人なんだ!

千年の苦難を耐え抜いた魂の直感が、突然悲鳴を上げた。九度の輪廻の神託が彼の脳裏で爆発した。

ハルトは狂ったように椅子から跳ね起きた。彼はトレンチコートを掴み、レストランのドアを飛び出した。骨を刺すような寒さも、容赦なく顔に打ちつける雪の結晶も無視して、放浪の旅人は真っ暗な夜の中を全速力で駆け抜けた。

運命の交差点が、前で彼を待っている。そして今度こそ、彼は絶対に、たとえこの命をかけても、彼女を失うわけにはいかないのだ!


お読みいただきありがとうございます!

次話は明日19時20分に更新します。


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