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第8話 花火と、ひまわりの横顔

7月は猛烈な熱波とともに東京に押し寄せた。表参道沿いの青々とした木々からはけたたましい蝉時雨が響き、アスファルトから立ち昇る熱気と混ざり合って、息苦しい空気を作り出していた。

休日のハルトとフユカのデートは、もっぱらエアコンの効いたショッピングモールや高級レストランの中へと移っていった。フユカは暑さをとても嫌がった。彼女の透き通るような白い肌と華奢な体質は、夏の焦げるような日差しには合わないようだった。

ハルトは銀座の高層階にあるフレンチレストランで、フユカの向かいに座っていた。

「このスープ、すごく美味しいね、ハルトくん?」フユカは微笑み、ナプキンで丁寧に口元を軽く押さえた。

「うん、君の口に合ってよかったよ」ハルトは頷き、愛情のこもった眼差しで彼女を見つめた。

「会社の先輩たちに海に行こうって誘われたんだけど、日差しが強すぎるから断っちゃった。休日くらいは、こんな涼しい場所でハルトくんのそばにいたいだけだから」と彼女は答え、その笑顔は相変わらず甘く、従順だった。

ハルトは手を伸ばし、彼女の髪を優しく撫でた。彼は本当にその笑顔を愛していた。フユカを守り、欠点のない完璧なデートを演出することは、彼に大人の男としての誇りを感じさせた。彼は喜んで安全な港、彼女が寄り添うための木陰の役割を演じていた。

ただ、時折レストランの透明なガラス越しに、通りに火を降らすような眩しい夏の日差しを見ていると、ハルトの中に奇妙な衝動が芽生えることがあった。放浪の浪人の魂の中にある野生の一部が、あの外へ飛び出し、汗を流し、夏の激しさを享受したいと渇望していたのだ。しかし、嬉しそうにケーキを口に運ぶフユカを見つめ直すと、彼は微笑んでその衝動をしまい込んだ。彼女は日差しが好きではない。そして彼は、いつも彼女に喜んでいてほしかった。

週半ばに入ると、デザインオフィスの空気は全く違う色合いを帯びていた。

ビルのセントラル空調システムが故障し、半分の出力でしか稼働していなかった。オフィス全体がサウナのように蒸し暑かった。

「ハルト!デザインの締め切りまであと2時間よ。縁取りの色、確認してくれた?」

ナツミが歩み寄り、書類の束を彼の机に叩きつけた。彼女はシンプルな白いTシャツに、裾をロールアップしたジーンズ姿だった。普段の長い髪は頭の頂点で高いお団子に結い上げられ、汗ばんだうなじを露わにしていた。ノーメイクで、紙扇子をパタパタと激しく扇ぎ、暑さで両頬を赤くしていたが、その目は強烈な生命力でキラキラと輝いていた。

「今やってるよ、おばさん。こんなに暑いんだから、パソコンにも少し息継ぎさせてやれよ」ハルトは笑ってごまかしながら、手を休めずにマウスを動かし続けた。

「言い訳しない!早く手動かして!このプロジェクトが終わったら、屋台のかき氷奢ってあげるから!」

そう言うと、ナツミは勢いよく部長の机へと走り、予算について再び議論を始めた。彼女の甲高い声がオフィス中に響き渡り、明確で、断固としていて、エネルギーに満ち溢れていた。

ハルトはマウスを止め、無意識にナツミの背中を追っていた。フユカが静寂の中でしか咲かない月下美人だとすれば、ナツミは太陽の下で不屈に咲くひまわりと全く同じだった。困難やプレッシャー、あるいは息苦しい天候でさえ彼女を萎れさせることはなく、むしろ、かつてないほど輝かしく、リアルに彼女を輝かせていた。

ハルトのアイデアを守るために部長と熱心に言い争っているナツミの首筋を汗の雫が滑り落ちるのを見た時、ハルトの心は突然一拍ズレた。保護も、距離感もない。彼女からは、彼が非常に見慣れていて心地よく感じるほど、波長の合う生命力が放たれていた。彼は急いで顔を背け、仕事に集中するために自分の頭を軽く叩いたが、ナツミの輝きはひっそりと彼の心に一筋の光を焼き付けていた。

7月末。東京最大の隅田川花火大会が開催された。

周辺の通りには何万人もの人が押し寄せていた。ハルトはフユカの手をしっかりと握り、人混みをすり抜けるための盾となって辛抱強く歩いた。今夜、フユカは青い浴衣を着て、髪には精巧な絹の花飾りをつけ、お姫様のように美しかった。

土手の芝生に座る場所を見つけた時、フユカは下駄の鼻緒で赤く擦れたかかとをそっと撫でた。

「足、痛い?少し冷たい水と絆創膏を買ってくるよ」ハルトは優しく尋ね、チラシで彼女を扇いだ。

「うん…早く戻ってきてね。人が多くて怖いから」フユカは涙ぐみながら頷いた。

ハルトは慌てて人混みをかき分けて進んだ。買い物を済ませるのに20分近くかかった。しかし、芝生に戻ると、フユカが落ち着かない様子で立ち尽くし、スマホを握りしめ、パニックに陥った表情をしているのを見た。

「どうしたの、フユカ?」ハルトは駆け寄った。

「ハルトくん!」フユカは顔を上げ、その涙ぐんだ目には珍しく強い決意が宿っていた。「ごめんなさい…パリのインテリアデザイン専門学校からメールが来て、時差の計算ミスでポートフォリオの提出期限が早まったの。締め切りは今夜の11時!今すぐ家に帰ってファイルを書き出さなきゃ!」

ハルトは一瞬フリーズした。彼はフユカがずっとフランス留学の夢を抱いており、このポートフォリオを準備するために何度も徹夜していたことを知っていた。

「僕が送っていくよ!今の時間は電車はすごく混んでるから、タクシーで——」ハルトは言いながら、急いで彼女のハンドバッグを拾い上げた。

しかし、フユカは手を伸ばして彼を遮り、首を横に強く振った。「間に合わないよ。道がすごく渋滞してる。さっきお兄ちゃんに電話して、駅の北口に車を停めて待っててもらってるから、そこまで走れば間に合う。あなたがついて来たら、二人とも足止めを食らっちゃう」

「でも、足が痛いんだろう、それにここは人が多すぎて——」

「一人で大丈夫!」フユカは微笑んだ。それは、自分の野心を守るために懸命になっている女の子の、信じられないほど力強い笑顔だった。彼女は背伸びをして、ハルトの頬に軽くキスをした。「あなたはこの花火大会を1ヶ月も楽しみにしてたじゃない。残って見ていって。実は…私、大きな爆発音もすごく怖くて、心臓がバクバクしちゃうの。密室に帰った方が、安心して作業に集中できるかもしれない。終わったら電話するね!」

そう言うと、彼女は手を振り、浴衣の裾を掴んで足早に走り出し、人混みの中へと消えていった。ハルトは絆創膏と2本の冷たい水を手に持ったまま、呆然と立ち尽くしていた。

彼は彼女の後ろ姿を見送り、小さく微笑んだ。彼は落胆も怒りも感じていなかった。それどころか、彼女を誇りに思っていた。フユカは暑さに弱く、人混みを怖がるかもしれないが、自分の未来に対しては信じられないほど決断力があった。ハルトは気づいた。彼がどれほど彼女を愛していても、あの華やかなパリにある静かなインテリアデザインの世界に一緒に足を踏み入れることはできないのだ。彼らは二つの平行線を歩いており、彼はそれを尊重していた。

周囲の押し合いへし合いが突然息苦しく感じられた。ここにフユカがいない以上、彼も芝生の上の場所を確保し続ける気にはなれなかった。彼はビニール袋を提げ、人の流れに逆らって歩き、休む場所を探すために、稲荷神社の裏手にある人気のない静かな路地へと曲がった。

神社の苔生した石段を越えようとしたまさにその時、ハルトの足がピタリと止まった。

赤い提灯の薄暗い光の下、一番高い石段にペタンと座り込んでいる人影があった。

ナツミだった。

彼女は優雅な浴衣など着ておらず、ロックバンドのロゴがプリントされたオーバーサイズのTシャツに、デニムのショートパンツ、そしてビーチサンダルという出で立ちだった。茶色い髪は高い位置で無造作なお団子にまとめられ、後れ毛がパラパラと落ちている。ナツミは膝に腕を乗せて座り、片手でキンキンに冷えたアサヒビールの缶を持ち、その遠い視線は隅田川の上の真っ暗な夜空に向けられていた。

ナツミのこの珍しい静けさに、ハルトは呆気にとられた。足音を聞いて、彼女は振り返った。

「あれ?デザイン班長?」ナツミは眉をひそめた。彼女の目はハルトを頭からつま先まで観察し、そして彼のどこか疲れたような表情で止まった。邪悪で、最高に挑発的な笑みがすぐに彼女の唇に描かれた。

「何それ?」ナツミは舌打ちをし、冷笑を浮かべながらビール缶を振った。「お姫様を花火大会にエスコートしてたんじゃないの?なんで本番前にこんな誰もいない路地に隠れて、お葬式みたいな顔してんの?すっぽかされたんでしょ?それともビンタされてここに避難してきたとか?」

ハルトは顔を黒くし、唇を引きつらせた。このおばさんの毒舌は、あらゆる重苦しい雰囲気の天敵だ。彼の中にあった憂鬱さは完全に吹き飛び、代わりに怒りが脳天まで突き上がってきた。

「すっぽかされてねーよ!口のきき方に気をつけろ、今すぐ名誉毀損で訴えてやる!」ハルトはズンズンと歩み寄り、彼女から少し離れた石段にドスンと座り込むと、涼むために苛立ちながら上着を脱いだ。「フユカは留学のポートフォリオを提出するために急用で帰らなきゃならなくて、お兄さんが迎えに来たんだ。俺は水を買う時に警察の交通規制に引っかかって、人混みをかき分けるのが面倒になったから、ちょっと一息つくために静かな場所を探してただけだ!お前みたいに、お祭りの日に神社で一人ぼっちでビール飲んでる奴の方が惨めだろうが!」

「ふん、口の悪い奴」ナツミは唇を尖らせたが、全く怒る様子もなく、ビールを一口飲んで肩をすくめた。「中心部は息苦しすぎて、呼吸ができなかったのよ。ここに座ってる方が涼しいし、後で花火が上がれば、この角度からなら空全体が見渡せるわ。汗臭い匂いを嗅ぎながらギュウギュウ詰めになる必要もないしね」

ハルトは鼻で軽く笑ったが、同意して頷いた。彼女のそばにいれば、大人の男として振る舞う必要も、頼りがいのある姿を見せる必要もない。気兼ねなく口論し、愚痴をこぼすことができる。完璧な殻はすべて自動的に剥がれ落ちるのだ。彼はミネラルウォーターのキャップを開け、ゴクゴクと飲み干した。二人はしばらく黙って座り、夏の夜の希少な風を楽しんだ。

「あのさ」ナツミが突然口を開いた。その声は低くなり、先ほどのからかうような調子ではなくなっていた。「小さい頃、うちの家はすごく厳しかったの。お祭りのたびに、お母さんに息苦しい浴衣を無理やり着せられて、しずしずと歩け、走り回るな、汗をかくなってみっちり言われて。息が詰まりそうなくらい窮屈で、夏が嫌いだった時期があったわ」

ハルトは黙って耳を傾けた。ナツミが初めて心を開いたことに少し驚いていた。

「でも大人になって、私はそういうルールを全部蹴っ飛ばすことに決めたの」ナツミは薄く笑い、手のひらを広げて風を受けた。「私はTシャツにビーチサンダルで、汗だくになるまで走り回るのが好き。自分の好きなものは自分の手で勝ち取りたいし、自分の思い通りに自由に生きたい。人生は短いんだから、他人を喜ばせるためだけに完璧な型に自分を押し込めるなんて、疲れるだけじゃない」

ここまで言って、ナツミは突然ハッとした。彼女は手を引っ込め、お団子ヘアをくしゃくしゃにしてからハルトを横目で見て、恥ずかしそうに咳払いをした。「おかしいわね……なんで今夜、あんたみたいな馬鹿に、子供の頃の鬱憤なんて長々と話しちゃったのかしら?きっとビールのせいでおかしくなってるのね!」

「ハリネズミのおばさん」の子供のような動揺を見て、ハルトの胸には信じられないほど素朴で誠実な感情がこみ上げた。彼女の「完璧な型に自分を押し込める」という言葉は、ハルトが常に隠し続けてきた疲労感そのものを意図せず突いていた。

静かな夏の風の中、突然彼の中に衝動が湧き起こった。先ほど彼女にからかわれたことで防壁がすべて崩れ落ち、今のハルトは彼女と共有したいと思った。過去の重荷を一度だけ脱ぎ捨てることを試してみたかったのだ。

「なあ、ナツミ」ハルトは頬杖をついて彼女を見つめながら呟いた。「もし俺が、よく夢を見るって言ったら……どう思う?自分が昔の時代の旅人だった夢だ。俺と愛する女性が吹雪の中に閉じ込められて。そして二人とも死んだ。でも死ぬ前に、俺は彼女を抱きしめて、輪廻のすべての人生を使って再び彼女を見つけ、どんな犠牲を払ってでも彼女を守ると誓ったんだ」

彼は自嘲気味に口角を上げ、ナツミが大河ドラマの見すぎだと皮肉るのを待った。フユカはかつてこの夢を聞いて感動の涙を流した。しかし、ナツミは違った。

ナツミは少し顔をしかめた。彼女はビール缶を石段に置き、彼をじっと見つめた。「私は、あんたの夢の中のその旅人を非難するわ。すっごく大馬鹿野郎ね」

ハルトは固まった。「は?」

「人を守るって誓っておきながら、二人揃って吹雪の中で凍え死ぬなんて、それが守るってこと?」ナツミは舌打ちをし、その口調は極めて現実的だった。「ロマンチックに抱き合って死ぬのが愛じゃないわ。愛っていうのは、生き延びる方法を見つけることよ!彼女を背負ってそこから逃げ出して、火を起こして、二人でアツアツの鍋を食べに行くべきでしょ!」

ハルトの呼吸が突然止まった。

「それにね」ナツミは暗い夜空を見上げた。「もし彼が本当にその女の子を愛していたなら、彼女が誰かに守ってもらうのを待つだけの、弱い、冷たい存在のままずっと閉じ込められてるなんて望まないはずよ。本当に愛してるなら、相手が太陽の光を浴びて、自由に走り回って、自分自身の力で強くなってほしいって願うものよ。生死をかけた誓いだなんて……立派に聞こえるけど、本当はすごく身勝手なことじゃない」

ガーン。

彼女の叱責の言葉には優しさの欠片もなかったが、それは旅人の潜在意識の最も暗い部分に落ちた雷のように響いた。ナツミは彼を、守られるべき存在という視点からは見ていなかった。彼女は、共に命を燃やし尽くすことを切望する対等な二つの命という、生命の視点から彼を見ていたのだ。

ドーン!

ハルトの心臓が最も激しい鼓動で震えたまさにその瞬間、夜空を引き裂くような耳をつんざく爆発音が響き渡った。花火が上がり始めたのだ。

稲荷神社の角から、巨大な黄金の菊が咲き誇り、ナツミの顔全体を照らし出した。彼女の目は大きく見開かれ、何万ものまばゆい光線を反射していた。彼女は身をすくめることも、怖がって耳を塞ぐこともなく、頭を高く上げ、生命力に満ち溢れた輝くような笑顔を弾けさせた。

「うわあ!すごい綺麗、ハルト!見て!」ナツミは空を指差し、無邪気に彼の肩をバシッと強く叩いた。

ハルトは空を見なかった。ただ静かに彼女の横顔を見つめていた。花火はナツミの目の奥で踊り、鮮やかで野生のままだった。ハルトの胸の中で、原始的な鼓動が激しく湧き上がった。心の羅針盤はない。ただ、細胞の隅々まで震えている血と肉でできた一人の人間がいるだけだった。

彼はそっと手を上げ、自分の左胸に当てた。引き裂かれるような葛藤が訪れた。

彼は先ほどのフユカの慌ただしいキスを思い出した。パリについて話した時の彼女の決意に満ちた目を思い出した。彼は今でも彼女を心から大切に思っていたし、彼女の夢を守りたいと思っていることはわかっていた。

それなのに……なぜ今、燃え盛る空の下で、彼の魂は隣で騒々しくビールを飲んでいる女の子に、息が詰まるほどの共鳴を感じているのだろうか?

ハルトはフユカを見捨てたいわけではなかった。彼女を嫌悪しているわけでもない。彼はただ、自分の心臓が二つに引き裂かれていることに気づき、絶対的なパニックに陥っているだけだった。彼の中の天秤は完全にコントロールを失い、50:50という恐ろしく不安定なラインで止まってしまっていた。片方は優しさと責任感に満ちた理性の愛、もう片方はむき出しの生命の共鳴。

九度の誓いを背負う放浪の浪人は、夏の夜の花火の下に初めて立ち、自分の魂が本当にどこに属しているのかわからず、途方に暮れていた。


お読みいただきありがとうございます!

次話は明日19時20分に更新します。


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