第3話 犬の姿で、香港の雨の中で
医師の耳に残った最後の鼓動の残響は虚無へと消え去り、耳障りな周波数へと砕け散ると、19世紀初頭のアメリカ郊外の空間を引き裂くような、馬車の車輪がガラガラと鳴る音へと変形した。
傲慢な放浪の浪人は目を覚ました。彼の嗅覚は即座に何千もの入り混じった匂いの爆撃を受けたが、最も彼を驚愕させたのは、自分の視界が草むらと同じ低さにあることに気づいた時だった。かつて剣を振るい敵の首を切り落としたタコだらけの両手はもうない。人間の言葉を発する声帯もない。造物主は人間の傲慢さに対し、最も残酷な罰を下したのだ。重い記憶と守り抜きたいという渇望を抱えた魂を、金色の毛並みをした大きな野良犬の肉体に閉じ込めたのである。
運命は、ある雨の夜に彼がクロエを見つけ出すことを許した。静かな瞳を持つその少女が、ずぶ濡れの犬を胸に抱き寄せた時、彼の胸の中の羅針盤は激しく脈打った。彼は彼女を見つけたのだ。しかし、今回の賭けは絶対的な無力感に満ちていた。
獣の皮を被って生きる間、彼は人間の記憶と認識を完全に持ち合わせていたが、その種の沈黙の中に閉じ込められていた。過酷な労働を終え、クロエが一人で泣いている夜、彼は静かに歩み寄り、彼女の膝に顎を乗せた――それは、雪に覆われたあばら屋の下での遠い前世から馴染みのある、あの姿勢だった。そしてクロエの手は、全く異なる姿形をしているにもかかわらず、なぜか無意識のうちに彼の乱れた毛並みに入り込み、うなじを優しく掻いてくれた。その身体的記憶は、決して奪うことのできない絆の証であったが、同時に、彼女の名前を呼ぶことすらできない彼にとっては残酷な拷問でもあった。
彼は、ろくでもない彼氏が腕を振り上げ、彼女を壁の隅へと平手打ちするのを目撃した。侍の心臓が咆哮し、怒りが沸点に達した。彼は飛びかかってあの男の首の骨をへし折り、彼女を腕に抱いて守りたかった。しかし、彼にできることといえば、牙を剥き、意味のない「ワンワン」という声を上げ、男のズボンの裾に噛みつくことだけだった。意識が明確であればあるほど、その無力感は彼の魂を深くえぐった。
そして、残酷な解放の時が訪れた。ある午後、クロエが歩道沿いを歩いていた時、雷鳴にパニックを起こした荷馬車が制御不能となり、歩道へ向かって突進してきた。すべては一瞬の出来事だった。金色の犬は一切の躊躇なく、生命の限界の速度で飛び出し、その重い体全体を使って激しく体当たりし、クロエを安全な芝生へと突き飛ばした。
「バキッ」という乾いた音が響いた。犬の体は馬の蹄の下で砕かれ、土の道の一部を血で赤く染めた。肉体的な苦痛は、徐々に霞んでいく彼の瞳に浮かぶ満足感に比べれば無に等しかった。今回も契約を果たすことはできなかったが、彼に後悔は一切なかった。
馬のいななきが歪みゆく空間を引き裂き、渦を巻いて、物売りの声と人力車のベルの音が入り混じる濃厚な音の連なりへと爆発した。1878年、小雨がぱらつく中、香港で最も混雑する旺角の交差点が現れた。
六十八歳のレオンは傘を差し、慌ただしく行き交う人々の波に紛れて、混雑した交差点で待っていた。馬車の流れが少し途切れた時、彼は急いで車道に足を踏み出した。
突然、彼の胸の中の羅針盤が脈打った。
それは軽いさざ波のような脈打ちではなかった。何万ボルトもの高圧電流が同時に心臓を直撃したかのような、恐ろしい衝撃だった。彼女がここにいる。すぐ近くに。レオンの涙が雨水と混ざり合って溢れ出した。何世紀にもわたる苦難の解放が彼を窒息させた。今度こそ、彼は自由な都市に立つ、一人の普通の男なのだ!
彼は振り返り、群衆をかき分け、狂乱したような眼差しで彼女の姿を探した。
しかし、造物主は最も残酷なチェスの打ち手だった。過度の感情の昂り、何世紀にもわたって抑圧されてきたものが、極めて強力な運命のシグナルと共鳴して爆発したことは、人間の肉体という生物学的な耐久限界を完全に破壊してしまった。強烈な心筋梗塞がレオンの左胸を襲った。彼の心臓は、最も激しく脈打ったその瞬間に鼓動を止めたのだ。
レオンはよろめき、砕け散りそうな胸を強く押さえ、凍てつく石畳の道に崩れ落ちた。彼は地面に横たわり、血走った目で、通り過ぎていく無数の足を必死に見上げた。彼女はすぐそこにいる。突然倒れた見知らぬ男を振り返って見ているかもしれない。それが自分の運命の相手だとは全く知る由もなく。
血の泡が煮えたぎる最後の息を振り絞り、レオンは両手で路面を掻きむしり、灰色の空に向かって首を仰け反らせ、魂が引き裂かれるような絶叫を上げた。
「なぜだ?!」
その瞬間、宇宙のあらゆる動きが突然断ち切られた。霧雨の雫は、砕けた水晶のように空中に浮かんだまま静止した。香港の交差点の喧騒が消え去った。レオンの足元の水たまりから燃え盛る赤い光が放たれ、渦を巻きながら、性別のない、威厳に満ちた輪廻の支配者のシルエットを形作った。
レオンは命乞いをしなかった。心臓発作が彼の肉体を殺しつつあったが、彼の魂は極限の怒りの炎の中で燃え盛っていた。
「私を弄ぶのはこれで十分か?!」レオンの声は砕け、涙にまみれながらも挑戦に満ちていた。「あなたは私を、愛することを許されない兄に変えた…私を、吠えることしかできない犬の体に投げ込んだ…五大陸に私を放り投げ、誰も拾おうとしない落とし物のように扱った!」
彼は静寂に包まれた路面に強く拳を叩きつけ、歯を食いしばりながら、遺言となる最後の言葉を絞り出した。
「私はただ…一度でいいから『自分自身』でありたいだけだ!アーサー男爵でも、大富豪レオでも、名もなき野良犬でもない…私はただ、私が本当に属する場所へ戻りたい!だからお願いだ…この忌々しい羅針盤を取り上げてくれ!これは彼女を救う助けにならない。彼女の名前を呼ぶ前に私を殺すだけだ!これを取り上げ、座標を、心の準備をするための時間を与えてくれ…もう二度と、こんな馬鹿げたショック死をさせないでくれ!」
至高の存在は…沈黙した。それは長く、重く、驚くほど人間味を帯びた間だった。七度の苦難を経てすり減った魂の剥き出しの苦悶を前に、人間の生死を司る目に見えない実体でさえ、その痛みの重さを感じ取ったかのようだった。
「要求は受理された。しかし、すべての契約には代償が伴う」
その声にはもはや嘲笑はなく、重く冷酷な妥協の響きを帯びていた。燃え盛る赤い光が微かに揺れた。
「お前の胸から『苦悶の羅針盤』を回収しよう。来世からは、心の準備ができるよう、絶対的な座標をお前に与えよう。しかし覚えておけ。導きとなる心臓の脈打ちがなくなった時、お前は無数の人の影の中で盲目となるだろう。私は彼女の破片——脆い性格、無意識の習慣、見覚えのある面影——を人間の世界に散らばらせ、織り交ぜて残しておく。羅針盤が失われた時、お前は自分自身の肉眼で、何が欺瞞の殻であり、何が本物の魂であるかを見極めなければならない」
燃え盛る赤い光は砕け散った。時間は再びそのリズムを刻み始めた。取引は完了し、レオンは冷たい路面で息を引き取った。
暗闇がすべてを包み込んだ。すべての焦燥感を洗い流すような、果てしなく続く深い静寂。そして、振り子時計のゆっくりとしたチクタクという音が響き渡った。
1900年、日本、東京。
カイト、22歳の青年は、鏡の前で丁寧にシルクのネクタイを締めていた。彼の心音はゆっくりと、冷静に刻まれていた。今回、神は約束を守った。システムは彼を日本に戻しただけでなく、時間、場所、部屋番号という絶対的に正確な座標を提供してくれた。胸の中にある呪われた羅針盤は永遠に引き抜かれた。もう、突然の心臓の痛みに命を奪われることもなく、盲目的に何万里も駆けずり回る必要もなかった。
彼は深呼吸をし、真紅のバラの花束を手に、郊外の老人ホームの304号室のドアの前に自信に満ちて歩み寄った。
ドアが開いた。カイトの唇に浮かんだ笑顔が凍りついた。
車椅子に座っていたのは少女ではなかった。それは80歳の老婆、チヨだった。真っ白な髪と、シワだらけの肌。老婆は意味不明な音を呟き、重度の認知症を患う者の濁った目で、無人の庭をぼんやりと見つめていた。
運命の最もダークなコメディが幕を下ろした。神は彼に住所を与え、心の準備をする時間を与えたが、二人の年齢を同期させることを「忘れて」いたのだ。笑うことさえできない、残酷な年齢のズレという騙し討ち。カイトは、魂の羅針盤を剥奪されたことの恐ろしい代償を悟り始めた。もし神からの事前警告がなければ、肉眼でこの部屋に足を踏み入れた彼は、このボケた老婆が愛する女性であるとは、永遠に、絶対に信じなかっただろう。
カイトは唇を強く噛み、バラの花束を背後に隠すと、ゆっくりと歩み寄り、車椅子の横に片膝をついた。
「おばあちゃん、会いに来たよ」
カイトは、20代の最も輝かしい年月を老人ホームに埋めた。彼は毎日通い、自分を赤の他人だと思っている老婆にペースト状の粥を一口ずつ食べさせ、白髪を梳かしてやった。チヨおばあちゃんは頻繁に粥の椀をひっくり返し、時には彼を泥棒だと思って怯え、追い払おうとした。カイトはただ歯を食いしばって片付けをし、その痩せ細った手についた汚れを丁寧に拭き取るしかなかった。
そして、ある凍てつく冬の夜、小さな老人ホームの部屋に響く老婆の呼吸は次第に途切れ途切れになり、まるで残された最後の空気を引きずり出すように、ゼーゼーと苦しそうな音を立てていた。カイトはそばに座り、シワだらけの冷たくなった手を握っていた。突然、老婆の濁った目が微かに開いた。奇妙な光が瞬き、病気の霧をすべて吹き飛ばした。隠されていた運命の破片が、ついに現れたのだ。老婆は苦しそうに首を向け、震える人差し指で布団の上をトントントンと三回、弱々しく叩いた。
「龍馬…」彼女の嗄れた声が、戦国時代での彼の名前をはっきりと呼んだ。「夕ご飯…温めてあるわ…」
カイトの心臓が止まったかのように思えた。恨みの叫びはなかった。静かな涙が青年の頬を伝い落ちた。彼は身をかがめ、最後の呼吸が止まった彼女の目を静かに閉じてやった。
「今世は苦労をかけたね」彼は静寂な虚空に向かって囁いた。「おやすみ。来世では…もっと早く君を見つけると約束するよ」
お読みいただきありがとうございます!
次話から、いよいよ九度目の人生――現代の東京編が始まります。
明日19時20分に更新します。
ブックマーク・★評価・感想、いつでもお待ちしています。




