5:最高難度の討伐依頼
王国から、冒険者ギルドへ最高難度の討伐依頼が届いた。
山脈に巣食う古竜の討伐。過去に何十人ものベテランが命を落としている。
依頼内容を見てギルド全体の空気が重くなる。
武器の手入れをもう一度する者。
神妙な顔で度数の強い酒を一気に飲み干す者。
ただ、少年だけがいつものように淡々と装備を整えていた。
「待て! 行くな、おちび! せめて遺書くらい書いていけ!」
「はい、わかりました。帰ってきてから書きますね」
「帰ってきたら意味ねえだろ!」
叫びを背に受け、少年は軽やかな足取りで出発していった。
◇
――3日後。
ギルドのドアが開き、少年が帰ってきた。
擦り傷一つない、ぴかぴかした姿で。
「ただいまですー。竜の素材ってどこに置けばいいですか?」
その小さな姿が見えた瞬間、皆の声も動きも止まる。
受付は、驚きのあまり動かした腕でインク瓶を落とした。
青黒のシミが床に広がっていく。
「い、生きて……!? いや待て、お前どうやってあの竜の巣から生還した!?」
「え? ああ、3回目でやっと倒せたんですよ」
「……3回?」
「はい。1回目は竜が留守でして。2回目は寝てたのでいけるかなーと思って突撃して。で、3回目でちゃんと討伐できました。運が良かったんです」
爽やかな笑顔である。
「いや、運だけで3回も竜の巣に突撃して帰ってこられるか!」
その叫びに、傍らにいた男が、やってらんねえ、とため息をつき、酒を煽った。
受付がやっと我に返り、笑いながらインクの掃除を始めた。




