4:地下迷宮
冒険者の一人が勢いよくドアを開けて駆け込んできた。
足も服も泥だらけで、手が震えて椅子の背をうまく掴めずにいるその男は、何とか椅子に座った。
そうして、息を切らしながら、途切れ途切れに告げた。
「罠が……床が抜けて」
「おちびだけ下に落ちて」
「戻る道が塞がって」
「まだ……皆、中にいるんだ…探してると思う……」
男が必死に絞り出す報告を聞き、受付の顔からすーっと血の気が引いていく。
羽根ペンを動かす手が完全に止まった。
「救助……そうだ、救助を……」
男は震える声で、うわ言のように繰り返した。
その言葉に、受付が慌てて立ち上がろうとした、その時だった。
「ただいま戻りましたー、皆さんとはぐれちゃったので一人で戻ってきちゃいました。連絡お願いします」
ギルドの重いドアが開き、あまりにのんきな声が響き渡った。
その声を聞いた連絡係の男は椅子を倒す勢いで立ち上がった。
そこにいたのは、頬に少しだけ泥をつけ、満面のニッコニコな笑顔を浮かべた少年だった。
――俺は全力で走ってきたのに、どうやって。
思考が追いつかない男の口から出たのは、全く別の疑問だった。
「……なんでお前が一番元気なんだよ!」
叫びとなって吐き出された疑問に、少年は満面の笑みのまま答えた。
「落ちたところがちょうど出口の横だったんですよー」
ほどなく、足を引きずり、表情を失くした仲間たちも戻ってきた。
疲れ果た連絡係と、ぽかんとしている受付嬢、それから最後に一人だけ元気いっぱいの少年を見て。
「なんでお前……いや、もういいよ……」
誰かが掠れた声で呟いた。




