6:二つ名は「薄氷」
「不屈の冒険者……いえ、もっとこう別のが良いわよね」
カウンターで、受付がうなっていた。
度重なる死地からの生還を受け、ギルド本部から少年へ正式な「二つ名」を授与することになったのだ。
「なんだっていいですよー」
当の少年はカウンターでジュースを飲んでいる。
「『不死身』はどうだ?」
「安直すぎるわよ。それに縁起が悪いわ」
「じゃあ『竜殺し』は?」
「もっとこう、本人の雰囲気に合ったものじゃないと……」
受付の眉間のしわが深くなっていく。
「おちびちゃん冒険者とかでもいいんじゃねえか?」
そう呟いた誰かが受付に睨まれて肩をすくめる。
一人のベテラン冒険者が、あー、とため息交じりの声を出した。
「『薄氷』、なんてどうだ?」
「薄氷?」
「こいつ、見た目きれいだし、細い体ですぐに折れそうだろ?」
「……うーん、すぐ割れそうな名前ですね?」
少年は首をかしげたが、すぐにニコッと笑った。
「でも、きれいな名前ですね。気に入りました!」
「……まあ、本人がそれでいいなら、もうそれでいいわ」
確かにきれいだし、と思いながら、受付は半目になる。
そのまま、決定書類に判を押した。
「ごちそうさま」
少年は飲んでいたジュースのコップを、カウンターへ返す。
「いっきまっすよー!」
掲示板から依頼書を一枚、さっと取り、拳を上げてドアを出ていく。
受付は、その小さな背に手を振って送り出した。
ー終わりー




