2:崖と岩場とおちびちゃん
ギルドを出て街道を歩きながら、同行した二人のうちの片方が、少年に声をかけた。
「おい、おちび」
「え? 僕の事ですか?」
「ああ、それだけちっこいなら、おちびでいいだろ」
その言葉に、もう一人が笑って付け足す。
「それとも、おちびちゃんにしたほうがいいか?」
先輩冒険者の二人に揶揄われた少年は、えぇー、と不満そうな声を出す。
それでも、息ひとつ切らさず先輩たちについて行った。
見た目よりも体力はあるようだ。
依頼の薬草を採取した帰り道。
「おい、おちび。ここの岩場は、足元に注意を――」
と先輩冒険者の一人が言った瞬間だった。
山道の強風が吹き荒れ、足場が崩れ、少年は真っ逆さまに崖下へと落ちていく。
「――しまっ!?」
同行した先輩冒険者たちが青ざめ、慌てて崖下を覗き込んだ。
数百メートル下の谷底。
生きて帰れるはずがない。
「なんてこった……初日から……」
「おちび……」
二人とも絶望に包まれた、次の瞬間。
「あ、落とした薬草、拾っておきましたよー」
ぬっと、崖のフチから手が伸びてきた。
少年は何事もなかったかのように崖を登り切り、息ひとつ乱さず、笑顔で立っていた。
「お、お前……今、落ち……」
「え? はい、まだ動けますが」
少年は薬草の束を腰に戻すと、鼻歌まじりに山道を下りはじめた。
崖のフチに残された二人は、しばらく動けなかった。
「……なあ」
「……」
「先輩ー、置いていきますよー」
先の方から、のんきな声が響いた。




