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その乙女、機動要塞 ~転生女王は超文明で滅びゆく王国を救う~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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その乙女、売却する

ここまで読んでいただきありがとうございます。


本作は「女王による国家運営」と「SF超文明」を組み合わせた戦記ファンタジーです。

内政、外交、巨大兵器、ロボット、戦争などがお好きな方に楽しんでいただければ幸いです。


どうぞよろしくお願いいたします。

 『 魔導ゴーレムを射撃で撃破したことにより、実績解除にて装備開発ツリーが新たに解放されました 』


「でもさ、どうせ~素材ないと無理なんでしょ?」

 『当然です』


「はぁ」

 ため息でへろへろに崩れ落ちるユナ。

「おい大丈夫か?」

「疲れてるっていうよりも、やばいよこの国」 

「何がやばいの?」 

「お金がない! 食べ物もない! 人も減ってる!」

「食べ物ないのは困る」

「困るだけじゃないのよ死んじゃうの。じゃあどうしようって話よね」


 そこへエメリッヒがノックをして執務室へ入ってくる。

「陛下、財務状況をまとめてきましたが、主だった貴族たちが簒奪して金貨を奪っていきましたので、残っていたのはわずかに金貨3000枚ほどです」


「そ、それって、何日持つの?」

「おおよそですが、20日程度かと」

「おふっ!」

「20日後に飯が食えなくなるのは嫌だなぁ」


「金がないと何もできないけど……やりたいことは山積みでもう天に届くほどにありまくりなのよ」

「陛下、どうされますか?」

「どうって お金出して」

「無理言わないでください……」

 ユナは側で膝をついて控えているシバタのやや癖のある黒髪をくしゃっと撫でる。こうするとどこか落ち着くからだ。


 その時、視線の先には執務室内の調度品が目に入る。

 お茶の給仕セット。

 豪華な金模様の入った高級品であり、カップも職人の手による一級品で年代物……


「あっ! 売りましょう!」

「う、売るといってももう穀物倉庫や交易品倉庫も、貴族たちのせいでからっぽで」

「いえ、この城にはあるでしょ? ほらそこのティーポットにティーカップ!

 高く売れそうなものは片っ端から私が収納するから、エメリッヒはすぐに! 今すぐに港町レヴァントでの窓口というか売却先を手配してちょうだい」


「売却先、つまり買い手を紹介するということですか。う~む」


「ほら! 悩んでる暇ないって、今頭に思い浮かんでる嫌そうな奴でもいいからすぐに紹介状書いて」


「そ、そんなに顔に出ていましたか?」

「出てたな、めっちゃ嫌そうだった。ユナが嫌いなキノコを食べる時みたいな顔してたよ」

「うんうん」


「……求めるのは人格じゃなくて、契約をちゃんと履行するかどうか、この一点でいいの」

「でしたら、1人当てがあります、すぐに書状をしたためましょう」


「お願いね、じゃあシバタ! 片っ端からこの城にある売れそうな品々、収納していくわよ!」


「いいね! 売っていっぱい食べ物買おうぜ」

「買おう! その前に売る!」


 ユナとシバタの二人はそれはもう遊びの感覚で片っ端から売れそうな調度品や絨毯、家具、壺、それにカーテンやらシャンデリア、彫像や貴族の収奪から免れた宝物や宝石の類を全て収納していく。


「陛下! おやめください! その壺は200年前の名工シュヴァーゼンの遺作なのですぞ! 国宝認定されるのを待っていた品でございます!」


「だったら高く売れそうね! あとそっちのテーブルセットも ほいっと」

「うぎゃああああああ!」


 残った貴族や役人たちの悲鳴がその日の王城から途絶えることはなかったという。


 ・

 ・

 ・


 半日をかけてユナとシバタ、そしてゼノがやってきたのはリシュメアの港町レヴァント。

 ここはリシュメア経済を語る上で欠かすことのできない町である。


 中央大陸は卵を横に寝かせたような楕円形に近い形をしているが、中央部へV字のの切り込みが入っておりその左側、つまり西側の海岸がリシュメア側になる。しかもぴょんっと飛び出た半島がありここにあるのが港町レヴァント。


 この港は地政学的な意味でも重要拠点であり、魔導ゴーレムの生産素材の流通路を独占したい帝国にとってリシュメアは目の上のたんこぶでもあった。


 そんな港町レヴァントも、ここ数年の悪政によって景気は落ち込み人々の目にも活気がない。

 潤っているのは奴隷商人ばかりで、縄で数珠繋ぎに連れて行かれる奴隷たちの目は死んだ魚のように生気がなかった。


 そのためにも金だとユナは考えており、早急に資金を作らないといけない。


 ボルグマン海運商会 通称:黒錨商会


 潮風狐と称されるほどの剛腕であり、守銭奴であり、切れ者と噂の人物。


 エメリッヒから既に連絡が届いていたらしく、商会受付ではすぐに二階の応接室へ通されると思ったが、案内されたのは港湾近くの倉庫だった。


 商会職員は一応礼儀をわきまえているが、実に事務的で淡々としている。


「では買い取り希望の商品をお願いします。大きい物だと聞いていますのでこちらのほうがよろしいかと思いまして」


「そうね、じゃあ出していくから査定をお願いするわ」

「えっと、じょ、女王陛下自ら出されるので? というより、女王陛下の服装はそのお忍びということなのでしょうか? 非常にその、素晴らしいお召し物でぜひうちの商会で製造販売をしたいと思いますが」


「そうね、その販売権も一緒に売りましょう。でもかわいいでしょこれ?」

「は、はい……」


 ユナが笑うと花が咲く。そう呼ばれるほどに、ユナは美少女として完璧すぎた。彼女の笑顔で好意を抱かない者はいないだろうというほどに可憐で魅惑的だが、本人にその自覚は皆無である。


 こうしてユナはどんどこどかすか、容赦なく城から持ってきた宝物やら家具やら彫像やら中には城の中庭にあった噴水なども持ってきてしまっている。


 しばしの間、商会職員は口を開けたまま呆けていた。

 倉庫パンパンに出された買い取り希望の絵画や芸術作品、調度品、家具、その他には国宝級の魔法の武器や鎧まであった。


「お前はサルンを呼んで鑑定魔法を使用して買い取り金額の査定を進めろ。後の対応は俺がやっておくからよ」


「は、はい! 分かりました!」


 倉庫の奥から現れたのは、肥えた体に無精ひげ、三白眼に白髪の混じった50代の男性だった。


「おう、あなたが新しい女王陛下か」

「ユナと申します」

「たしかに美しい、時が時ならあなたを奪って各国の王子たちが取り合いを戦争を始めたかもしれない。

 しかし、今となっては帝国の暴虐に怯えて手を出してこないだろう。


 まあそんなことはどうでもいい。


 この、量を一気に運んだのか?」


「私の収納先は少しばかり広いんです。買い取りしてくれるのでしょう?」


「そりゃまあな、リシュメアは歴史もそこそこ古いから、飛びつく各国の貴族たちは山ほどいるだろう、いるんだが、そりゃこちらも危ない橋を渡るんでな手間賃を乗せてもらおう。 


 おっと、自己紹介が遅れたな、俺はこの商会の長をしている、グスタフ・ボルグマンだ。

 ボルグマン海運商会は聞いたことぐらいあるだろう?」


 ドヤ顔で誇ってくるこの男に、護は露骨に嫌な顔をした。


「グスタフ商会長、こちらは買い取りをお願いする側ではあるが、我らの主である女王陛下への礼儀はわきまえてもらいたいものだ」

 ゼノの苦言に思わずグスタフが怯む。

「おう、そりゃすまなかったな。こちとら荒くれの船乗り共を毎日相手にしてるからよ、えっとしてますので」


「堅苦しい敬語は不要よ。ようはビジネス。

 需要があるならこちらの供給したこれらを高く、たかーく! 買い取ってもらいたいものだわ」


「さすが女王陛下、話が分かる! 分かりますね、ざっと見繕ったところで、20億レーネって言いたいところですが」


「20億ではさすがに安すぎる。王国秘蔵の宝物も含まれているのだぞ」

 ゼノが食ってかかるも、グスタフは慣れた手つきで制止する。


「分かってますよ。でもね、この大陸で帝国無視して商売するなんざ無理な話んなんだよ。あっちで賄賂こっちで賄賂、それで大分目減りしちまうんだ。

 くっだらねえぜまったく」


「それで20億レーネですか(おおよそレーネと日本円の感覚近いから 約20億円てとこね)」


「これ以上は無理だ。他で聞くのはあまりおすすめはしないがね、この街にも帝国の間者が多く潜んでるからな。

 うちで取引進めたほうが無難だと思うぜ。それより女王陛下はこの金で何をするつもりなんでさ?」


お読みいただきありがとうございました。

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