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その乙女、機動要塞 ~転生女王は超文明で滅びゆく王国を救う~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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その乙女、帝国軍を撃退する

ここまで読んでいただきありがとうございます。


本作は「女王による国家運営」と「SF超文明」を組み合わせた戦記ファンタジーです。

内政、外交、巨大兵器、ロボット、戦争などがお好きな方に楽しんでいただければ幸いです。


どうぞよろしくお願いいたします。

 いつも通りに行動しなさい


 これには多くの民や兵士たちも驚き、そして落胆した。

 女王の座を押し付けられた小娘だから逃げる準備をして、我先に王都から姿を消しているだろうと。


 その夜、王都は夜遅くまで争ったり逃げ出す算段ができずに立ち往生し、諦め、そして酒に逃げる者たちで溢れやがて朝がやってきた。


 帝国軍が到着しその布陣を終えたのは、昼過ぎになってからのことだった。


 対してリシュメア王国は城壁に兵士が200ほどいるだけで、正面決戦はないと思わせるものだ。


 帝国軍の指揮官ガルガンは、セオリー通りに魔導ゴーレム5機を先行させ一気に城壁を破る作戦を実行するつもりのようだ。

 兵たちは魔導ゴーレムが先端を開くので、後方のテントでゆったりと過ごしている者が多い。


 魔導ゴーレム。

 150年ほど前、神聖ヴァルダリア帝国の大賢者エンジュにより発案され開発が進められていた魔導兵器。


 元々は野良のゴーレムを捕獲し人が乗れる騎乗鞍をつけ、魔導回路を接続し人が操縦できるようにしたものだった。

 そのため機体数の確保が難航したが、ダンジョン資源を活用することで召喚士によりある程度任意のゴーレムを召喚製造できるようになった。

 この技術革新により、全高5m程度で現在は開墾や工事に使われることが多いワーカー級、さらに軍事用の8m級、10m級が開発され、素材も洗練されていく。


 こうして幾年の年月を経て実戦配備されているのは、ヴァルダリア帝国軍標準配備のナザール級8mクラスの魔導ゴーレムだ。

 猪のように首がほぼないずんぐりとした体型であるが、鉄と真鍮と岩をベースとした強固な装甲と魔法防御力を積みこんでいるためもはや人では抗することの叶わぬ代物に成り果ててしまっている。


 そんな魔導ゴーレムが5機。


 帝国軍の先陣を切って開戦の合図も狼煙もなく、地響きを立てながら、草原を踏みしだき王都リシュタールの閉じられた門へと近づいていく。


 そこに通用門から現れた人影が二つ。


 1人は少女、1人は少年ではあるが彼が手に持っているのはリシュメア王国の王旗。


 魔導ゴーレムの操呪兵たちはいわばエリートのため、同行した紋章官からリシュメアに関する貴族や王家に関わる紋章などについては事前レクチャーを受けていた。


 『待て、あれはリシュメア王国の王しか掲げることのできない王旗 太陽と月の紋章 ならばあれは……』


 魔導ゴーレム5機が1人の少女から目が離せなかった。

 しかもその少女が身に着けているのは、奇妙だがとても美しく可憐な衣服。

 付き従う少年も凛々しく、そして泰然としていた。


 王旗を掲げた白銀の髪をした少女が魔導ゴーレム ナザールの隊長機の目の前まで到着した。

 魔導ゴーレムに対しその少女は臆することなく、堂々とした態度だ。


 対して帝国側は正面に3機。念のため 離れた両脇から半包囲するように警戒している。


 その時だった。


 ” 

 私は先日、リシュメア王国 女王に就任した ユナ・シュラノ・リシュメアです。


 神聖ヴァルダリア帝国軍に告げます。ただちに撤退してください。


 さもなくば、こちらは全力であなたがたを撃退することになります。


 いいですか? 無駄な血が流れることになりますよ?


 ”


 ユナ女王のかわいく優しい声質なのに、凛とした雰囲気に思わず魔導ゴーレム隊は圧されていた。


 『その要請を受けることはできない!

 我らはリシュメア王国討伐の命令を受けている! 王族は拘束後に四肢を切断し処刑とある。

 兵たちの前で無様に泣き叫びながら死んでもらおう! 抵抗する意志は確認した、リシュメア王国兵もまた同じ死を与えてやる!』


「そうですか、なら仕方がないですね」


 リシュメア側でも守備隊の兵士が魔導ゴーレム隊の拡声器により、自分たちが凄惨な死を遂げるのだということが伝わりパニックで混乱する者たちが現れ始めた時のこと。


 ユナはすっと右手を前に出す。

 その手にはいつの間にか何かが握られている。


 『隊長、何かするつもりのようです』

 『このナザールの魔法防御力ならばおそれことはなっ』


 ユナの手に握られたナニカから、一条の光が発せられた。青白い光が魔導ゴーレムの騎乗鞍を貫いていた。

 あまりの超高熱に頭部騎乗鞍周辺が真っ赤にドロドロと溶解しており、魔導ゴーレム:ナザールはそのままどうっと後ろに倒れてしまう。


 隊長機が倒れきる前にユナが放った光はさらに2つ。前方にいた魔導ゴーレムの騎乗鞍が同じように貫かれそして溶け落ちている。


 ユナが手にしていたのは銃だった。

 ゆっくりとした優雅な手つきでその銃口を残った右側の魔導ゴーレムに向けた瞬間、彼等は逃げ出した。


 喚きながら恐怖で取り乱しながら、自軍の方向へと突進を始めてしまう。


 草原が抉られ、街道の石畳が吹き飛び、街路樹をなぎ倒し、魔導ゴーレム ナザール2機があぐらをかいて見物していた兵士たちへ向かってきたのだ。


 まるで平家が三味線担いで逃げていくような有様であり、帝国軍は総崩れ。


「リシュメアの新兵器だ!!

「即死魔法が来るぞおおおおおおお!」

「いやだあああああああ! しにだぐねえええええええ!」


 たった3発。

 3発で敵軍を退けてしまうことに成功したのだ。


 『PAB—01 過剰出力によりオーバーヒート、メンテナンスへ入ります』

「よく3発もってくれたわ」

「すごいなユナ。たしかフォトンブラスターだっけ? ようはビーム兵器だよな」


「そんなものよ。それよりよく逃げなかったわね」

「逃げるつもりだったよ。あとちょいでな、ユナを担いで逃げるくらいどうってことないから…… いやでもやばかったかもしれない」

「え? まだ何か狙われてる?」

「いや担ぐには最近体重増えたぽいからさっおぐっ!」


 それは見事なレバーへの一撃であった。

「次はないって、分かってるわね」

「は、はい、ずびまぜん……うっ後、あとからくるっいでえええ」


「乙女の体重ってものはね、世界が滅んでもいじっちゃだめなのよ」


 気づくと何かが聴こえてくる。

 それは城壁で耐えてくれていた兵士たち、そして見守ってくれていた民が大歓声を上げている。


「今回は、いえ、はじめて、初めて守れたわ。よかった」


 泣き始めるユナは震えていた。


 護には分かっていた。ずっと、ずっと震えていたことを。

 だから、護は優しく頭を撫でる。

「初めてではないんだよな、俺はずっと前から救われてるんだ」


「ぐすん、何か言った?」

「ボディーブローが痛いって言ったんだよ」


 城壁の尖塔から事態を見守っていたゼノ。

 側には猫人族のメイドでユナを溺愛しているリアが控えていた。


「あのゼノ様、ユナ様はいったどうやって帝国軍を追い払ったのですか?」

 ゼノは不敵な笑みを浮かべながら興奮している。


「さすがはユナ様です。

 あれは彼女のクラスによる特殊な力ではありますが、それを最大限に活かしたのはお嬢様の勇気と知恵によるものです。

 帝国軍には既にリシュメア軍は大半が逃げ出して大した戦力が残っていないとの情報が入っていたでしょう。


 さらに魔導ゴーレムという強力な魔導兵器でほぼ片が付く。


 ならば彼等が考えるのは自分たちが死ぬリスクがほぼないという安堵感です。

 その安堵感が伸びきったところ、その最大のポイントでユナ様は魔導ゴーレムをあっさり3機も倒してしまった。


 そうなれば次にその力が向かうのは自分たち。


 魔導ゴーレムを倒すほどの謎の新兵器、力、であれば、兵士たちは逃げ出すしかないでしょう。

 恐怖は伝染し、瞬時に広がります。もっとも、その下地作りと伝染に少しばかり我が配下が細工をしまたしたがね」

「うおおお! すごい、さすがユナ様!」


「ですが、護。君にそこまでの覚悟があったとは。斥候からの暗殺攻撃を防ぎきり、ユナ様に気づかせないままに葬っている。これが守護の力か」

 

お読みいただきありがとうございました。

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