魂の行方
初めまして。ここまで読んでいただきありがとうございます。
本作は「女王による国家運営」と「SF超文明」を組み合わせた戦記ファンタジーです。
内政、外交、巨大兵器、ロボット、戦争などがお好きな方に楽しんでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
どこまでも続く雲海。
雲の上には突き出した巨大な山の頂が春のタケノコのようににょきにょきと生えているようだった。
そこには日本の古民家、神社やお寺のような建物が並び多くの着物を着た人々が走り回っておりただ事ではない何かが起きていることだけは伝わってくる。
その頂きの際にあった東屋には、人ならざる異様な存在が空を睨みつけるようにして悔恨の表情をしている。
赤銅色の肌、左右3本ずつ、計6本の腕。
彼は目の前で横たわる女性の頭を撫でながら膝をつく。
「救ってやれなかったのか。すまぬ」
「阿修羅王よ、この勇敢で美しい女性は須弥山へお導きなさってすぐ事切れたようです」
「幼き少女を救うため、我が身を犠牲にした乙女よ。せめて魂だけは御霊だけは、なんとか穏やかな世界へ送ってやらねばならぬ」
両の手で優しく包むのは、傷だらけの女性からぽうっと抜け出てきた光り輝く魂であったのだろう。あの阿修羅王が涙を流しながら、愛おしそうにその魂を撫でている。
「もう一つ、救えた魂がございました」
天人という多くの仏神を補佐し執務事務を担当する天上界、須弥山の住人である天人の1人がお日様色の魂を差し出した。
「ぬう、これは……この乙女を守ろうとした忠犬の魂か。見事なり、そなたのような勇敢な魂を救えたこと、この阿修羅王、誇りに思うぞ。この魂も穏やかな世界へ送ってやろうではないか」
「その件ですが、魂の波長が摩利支天様と合うようですので既に導く手配をしてくださっているようです」
「そうか……しかしのう、なぜ我らが大地は滅びねばならぬ。ち、きゅうと皆は呼んでいたな」
「正体不明の敵により、地球上の国家はほぼ壊滅。人の持つ武器はまったく歯が立ちませんでした。滅びるでしょう人類は。そしていずれこの天上界も……」
天人は泣いていた。
「なればこそ、仏神や他の神々までが須弥山や天界に呼び寄せることができる資質を持つ者たちをなんとか助けようと今必死になっておる。
我が身を削りながら、四天王など、神力を使いすぎてもう体の半分が崩れかけておる……せめて……次の地では安らかに、せめて我が力の加護を与えよう……」
阿修羅王の手から魂が天に向けてそっと掲げられる。
その光景はいたるところで起こっていた。
人、そして仏神たちでさえ滅びの危機にある。
阿修羅王には見えていた。さきほどの乙女の魂に寄り添うように、あのお日様色の魂が近づいていくのを。
「せめて、転生した先が優しい世界であることを願おう」
◇
許さない 憎い 悔しい 痛い 苦しい
それは怒りにも似た願いだった。
せめて、せめて、我ら滅ぶとしても、その存在した証だけは 数多の世界へ放とう。それこそが我らが存在した証。
その名は 超次元機動要塞…… ……
それは証であり、イーヴァに抗おうとする者たちへ繋ぐ最後の希望。
ふわふわと浮いているような感覚、そんなものを優奈であった魂は感じていた。
それらの感情にも似たエネルギー体が優奈の中へ染み込み、そして溶けて行った。
猛烈な感情の暴流に自我が圧し潰されそうになるも、ハルが舐めてくれた頬がやけに温かい。
そして…… 意識が沈んでいく。
死かもしれないし、それは消滅かもしれない、そう思っても抗する術もなく沈みゆく意識がやがて閉じていく。
次に目を開けた時、それは産声を上げたときであることをまだ優奈は知る由もない。
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