地球侵略②
初めまして。ここまで読んでいただきありがとうございます。
本作は「女王による国家運営」と「SF超文明」を組み合わせた戦記ファンタジーです。
内政、外交、巨大兵器、ロボット、戦争などがお好きな方に楽しんでいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
深呼吸をしたこともあってか少しずつ冷静さが戻ってきた時、シオリちゃんが囁き声で教えてくれる。
「おねえちゃんスマホが鳴ったみたい」
(そうだ、パパとママは無事なの!?)
慌ててスマホを確認すると、そこには防災情報が何度も発信されてた。
謎の敵勢力からの攻撃を受けていること、そして敵の兵器はその大きさのため地下鉄構内には進入しにくいことから、地下鉄構内に自衛隊が設置した臨時の避難所への案内だった。
「位置情報はっと……あっ」
回線状況が悪いためか数秒だけ、今いる場所の情報がマップに表示される。
「ここからなら、大江戸線の地下鉄駅が近そう、あそこなら深いしシオリちゃんを助けられる」
「お姉ちゃん?」
「大丈夫、私が必ず避難所まで連れて行くからね、そこでシオリちゃんのパパとママを探しましょうね」
「うん、お姉ちゃんのパパとママもね」
その優しさに思わずシオリを抱きしめる、そしてまぜてまぜてとやってきたハルも抱きしめる。
優奈は決して勇敢なほうではなく、どちらかといえば石橋を叩いて渡るタイプではある。
だからこそこの状況で脚が震えていながら動けるのは、シオリとハルという存在がいてくれるから。
人は守る存在があると強くなれる。強くあらねばと優奈は自分に言い聞かせる。
優奈は瓦礫の隙間から位置を確認する。どうやら3ブロック先に地下鉄の入口を示す案内板が出ているようだ。
優奈は慎重に1人通りに出て周囲を観察した。
道路には乗り捨てられた乗用車や横転したバン、そして金属生物モドキによって切断された人の手足がまるで台風後に散らばる木々の枝のように散乱していた。
足元に転がってきたその一部がつま先にぶつかり思わず声をあげそうになる。
それは高校らしい少年の頭だった。
断末魔の表情でまだ涙の痕があるそんな幼さの残った少年の残滓が目に焼き付いてしまう。
悲鳴を上げそうになるのを堪え、地下鉄入口までのルートを確認するとどうやら殺し尽くしたとして金属生物モドキの姿は見えない。
「い、今。いま、今じゃなきゃだめ、だめ、落ち着くの、私がどうなっても絶対にシオリちゃんとハルを」
その時、ハルが飛び出してきて優奈の足に飛びついてきた。
「ハル?」
「わふ」
その口には自らリードを咥えており、尻尾さえ振っている。
でも、優奈には分かる。震えてるんだと。
優奈はリードを首輪から外す。「ハル、私についてくるのよいいわね」
「わふ」
小さく答えるハル。
シオリちゃんを抱っこすると優奈は必死に走った。
ハルは瓦礫やガラス片を避けながらついてきてくれる。
賢い子だ。悲しい時落ち込んだ時、必ず側にいてくれた親友。
遠くのビルが隣のビルを巻き込んで崩れていく様が視界に入る。
構わずに優奈は地下鉄への階段を駆け下りた。
転ばないように、階段に散らばるコンクリート片や衝撃で落下した看板などを避けながら。
長いエスカレーターは既に停止しており、その独特の歩幅のある階段をゆっくりだが確実に下りていく。
「シオリちゃん、もう少しだからね。はぁはぁ」
「うん! ハルくんもちゃんとついてきてくれてるよ」
「ハルもう少しだから!」
ハルは吠えずに先行する。
エスカレーターを降りた先、長い廊下に人影はなく血の跡もない。
動かない自動改札を抜け、ホームへと降りて行こうとした時、赤い誘導灯が目に映る。
” 臨時避難所 ” と書かれたA4用紙が貼り付けてある看板が設置してあり物資の入った段ボールが近くに積み上げられている。
生きている人の気配を感じ、はやる心を押さえつけながら優奈たちは急いでホームへの階段を駆け下りようとするが、突如天井が崩れてきた。
思わずシオリとハルを抱きしめる優奈だったが、土煙の中から現れたのはあの金属生命体モドキ。
『 あんしん して ください あなた を かいほう します 』
奇怪な体から生えている鎌や鋏は、いったい何人を殺したのだろうと思うほどに血にまみれている。
そんな存在が、あんしん して だと? 優奈は怒りを覚えながら、なんどかシオリちゃんを助ける方法に思考を巡らす。
「ワンワンワン!」
ハルが、間に入って吠えはじめる。
「ハル!」
まるで優奈たちを守るようにあの金属生命モドキに吠え続けている。
ギャリキュリキュリキュリ……
「シオリちゃん! 走って!」
シオリは素直に走ってくれた。脇を通り抜けながら階段を駆け下りていく。
だが、奴はそんなに甘くなかった。
後ろ向きでも容赦なく襲い掛かる刃が二人を襲った。
「危ない!」
思わずシオリの背中を押したことで彼女は間一髪凶刃から逃れられたが、優奈は壁に叩きつけられてしまった。
はやく、にげなきゃ あれ? 身体が、う、うごか
自分の体から赤いモノが大量に流れているのが分かる。
ああそうか、わたし、死ぬのか
その時、頬にあたたかいものが触れた。
ハル だった。
寄り添うように、ぱたりと倒れたハルは、それでも 私を守ろうと……
「ハル、ごめんね、ずっと、ずっとい……」
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