【第2章 近づく距離】第1話 雨の日の部室
第2章のスタートです。
この章は透真と各部員の放課後の日常を描いています。
―第1話 雨の日の部室
朝から降り続いていた雨は、放課後になっても止む気配がなかった。
窓ガラスを叩く雨音が、静かな部室に響いている。
「今日は観測無理そうだな」
窓の外を見ながら、昴が静かに呟いた。
その声に、透真は机の上の星図から顔を上げる。
「……やっぱりですか」
少しだけ残念そうな声。
その反応に、和希が苦笑した。
「そんなわかりやすくしょんぼりしなくても〜」
「してません」
「してるしてる」
完全に顔に出ていた。
透真はむっとしたまま、再び雑誌へ視線を落とす。
今読んでいるのは望遠鏡特集だった。
新型機の紹介ページを真剣な顔で見つめている。
「……あ」
小さく声が漏れる。
「これ、軽量化されてるんだ……」
そこから先は、ほとんど独り言だった。
「でも口径このサイズでこの重さってすごいな……持ち運びかなり楽になりそう……」
和希が肩を震わせる。
「始まった」
部室の隅でスマホを触っていた薫が、呆れたように顔を上げた。
「また星の話?」
「“また”って何ですか」
「今日だけで三回目」
「そんなにしてた?」
「してた」
即答だった。
透真は少し考えてから、小さく首を傾げる。
「……でもこれ結構すごくて」
「お前、ほんと好きな話になると止まんねえな」
薫は呆れているのに、なぜか会話を切らない。
透真も自然と薫の方へ向き直る。
「薫って機材詳しいですよね」
「普通」
「普通じゃないと思います」
「……なんで」
「前、望遠鏡の調整すぐ直してたから」
ちゃんと見ていたらしい。
薫は少しだけ言葉に詰まった。
「別にあれくらい」
「でもすごかったです」
透真は本当に感心した顔をしていた。
変に取り繕った感じがない。
まっすぐだ。
だから調子が狂う。
「……お前距離近いよな」
「え?」
「褒める時とか」
「そうですか?」
「無自覚なんだよなあ」
和希が笑いながら会話に入ってくる。
そのまま透真の頭にタオルをぽすっと乗せた。
「髪濡れてる」
「わっ」
「さっき屋上行ったでしょ」
「ちょっと空見たくて……」
「風邪ひくよ〜」
和希は慣れた手つきで透真の髪をわしゃわしゃ拭き始める。
「自分でできます」
「はいはい」
「ほんとに」
「透真って放っとくと無茶するタイプっぽいし」
「しません」
「する」
今度は昴が静かに言った。
透真がそちらを見る。
「昴先輩まで……」
「昨日も帰り際、校庭で空見てただろ」
「……見てました」
「ほら」
完全に見抜かれていた。
透真が小さく唇を尖らせる。
そんな顔すら、年相応で無防備だった。
その時。
ピシッ、と大きな雷の音が響いた。
直後、部室の電気が消える。
「え」
一瞬で部屋が暗くなった。
聞こえるのは雨音だけ。
「停電か」
昴の低い声が静かに響く。
薄暗い部室の中、窓の外だけがぼんやり青白い。
透真は自然と窓際へ近づいた。
ガラス越しに雨粒が流れていく。
曇った空。
当然、星は見えない。
それでも透真は静かにその景色を眺めていた。
「透真?」
和希が呼ぶ。
透真は少しだけ振り返った。
「……あの…昴先輩」
「ん?」
「この雨、夜まで残りますかね」
暗い部室の中で、透真の瞳だけがやけに光って見えた。
昴は数秒黙る。
「どうだろうな」
「今日、ちょっと楽しみにしてたんです」
透真はまた窓の外を見る。
そして少しだけ困ったように笑った。
「…昴先輩?」
「……何」
「晴れると思いますか」
その上目遣いに。
和希が思わず吹き出しかける。
(あー……これは駄目だ)
透真本人は何もわかっていない。
昴は小さく息を吐いてから、静かに答えた。
「……夜中には抜けるかもな」
「ほんとですか」
ぱっと表情が明るくなる。
その変化があまりにも素直で。
昴は少しだけ視線を逸らした。
「期待しすぎるな」
「でも、ちょっと楽しみになりました」
嬉しそうに笑う透真を見て、和希は肩を震わせる。
「昴、今ちょっと甘くなかった?」
「……うるさい」
薫はそのやり取りを黙って見ていた。
窓際に立つ透真。
雨音。
薄暗い部室。
星は見えないはずなのに。
どうしてか、その空間だけは妙に目を引いた。
読んでいただきありがとうございます!
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第2章スタートです!
透真と各部員との絡みを書いていきます!
透真に「先輩?」と上目遣いさせたかったので描きました(笑)
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毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*
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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/




