【第2章】第2話 放課後の帰り道
―第2話 放課後の帰り道
雨上がりの空は、少しだけ紫がかっていた。
放課後。
校門を出た透真は、空を見上げながらゆっくり歩いていた。
「……晴れたなあ」
ぽつりと呟く。
雨で洗われた空気は冷たくて、夕焼けの境目がいつもより綺麗に見えた。
「また空見てる」
隣から裕翔が笑う。
「だって今日、雲の流れ綺麗」
「はいはい」
慣れた返事だった。
昔から透真はこうだ。
空を見て立ち止まる。
月を見てぼーっとする。
星が見えたら急にテンションが上がる。
裕翔にとっては、もう当たり前の光景だった。
「でもさ」
裕翔がペットボトルを片手に歩きながら言う。
「透真が部活入るとは思わなかった」
「え」
「一人でも平気なタイプじゃん、お前」
透真は少し考える。
確かに、昔から大人数は得意じゃなかった。
一人で本を読んだり、空を見たりしてる方が落ち着く。
でも。
「……天文部、居心地いい」
その言葉に、裕翔が少し目を細める。
「ふーん」
「みんなちゃんと話聞いてくれるし」
「うん」
「星の話しても引かない」
「そこ重要なんだ」
「重要」
真顔で返されて、裕翔が吹き出した。
透真は少し不満そうに眉を寄せる。
「笑わなくてもいいじゃん」
「いや、透真ってほんと変わんないなと思って」
「変わってる?」
「昔から星の話になると止まんなかった」
その言葉に、透真は少しだけ懐かしそうな顔をした。
夕暮れの光が黒髪に落ちる。
「……覚えてる」
「覚えてるよ。小学生の時とか、夜中に急に電話してきたじゃん」
「え」
「“今日流星群見える!”って」
「あ……」
透真の顔が少し赤くなる。
「しかもめちゃくちゃ早口」
「……ごめん」
「なんで謝るんだよ」
裕翔は笑った。
「俺、パジャマのまま外連れ出されたんだからな」
「だって絶対見た方がいいと思って……」
「まあ綺麗だったけど」
その時の透真は、今よりもっと小さかった。
目を輝かせながら空を指差して、
『今の見た!?』
って何度も聞いてきた。
あの頃から変わっていない。
好きなものを見る時の顔も。
夢中になると周り見えなくなるところも。
「……危な」
「え?」
次の瞬間。
透真の身体がぐらりと傾いた。
空を見上げたまま歩いていたせいで、段差に気づかなかったらしい。
転びかけた腕を、裕翔が反射的に掴む。
「だから前見ろって」
「……あ」
気づけばかなり近かった。
透真は目を瞬かせる。
裕翔の手はまだ透真の腕を掴んだままだ。
「ぼーっとしすぎ」
「ごめん」
「また謝る」
呆れたように言いながらも、裕翔は手を離さなかった。
そのまま自然に歩幅を合わせる。
透真は特に気にしていない。
昔からこうだから。
でも裕翔は、自分でも気づいていなかった。
透真に対してだけ。
昔からずっと、無意識に手が伸びることに。
「……裕翔?」
「ん?」
「ありがと」
透真が少しだけ笑う。
その顔に、裕翔は一瞬黙った。
夕焼けの光が透真の横顔を柔らかく照らしている。
なんか。
最近ちょっと、危ない気がする。
何がとは言えないけど。
「裕翔?」
「……いや、なんでもない」
裕翔は小さく息を吐く。
そしていつもの調子で、透真の頭を軽く小突いた。
「次転びそうになったら首根っこ掴むからな」
「猫じゃないんだけど」
「似たようなもんだろ」
「違う」
そんなやり取りをしながら。
二人はゆっくり、夕暮れの道を歩いていった。
読んでいただきありがとうございます!
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今回は幼馴染 裕翔との帰り道のシーン。
幼馴染だからこその距離感や昔の思い出など織り交ぜて作りました!
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毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*
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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/




