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【第1章】 第4話 初めての観測会

―第4話 「初めての観測会」


「今日、ほんとにやるんですか?」


 放課後の部室で、透真はそわそわしながら窓の外を見た。


 空は綺麗に晴れている。


 夕暮れの青が、少しずつ夜へ変わり始めていた。


「やるよ〜」


 和希が機材ケースを持ちながら笑う。


「今日は雲ないし、かなり見えると思う」


「っ……!」


 透真の目が一気に輝く。


 その反応を見て、裕翔が隣で吹き出した。


「ほんとわかりやすいな」


「だ、だって今日条件良いし……!」


「うんうん」


 完全に面白がられている。


 透真がむっとしていると、薫が横から小さく呟いた。


「子どもかよ」


「……薫だってちょっと楽しそう」


「は?」


「さっきから望遠鏡ずっと触ってるし」


「整備してるだけ」


 即答だった。


 でも図星なのか、少しだけ耳が赤い。


 そんなやり取りをしながら、一行は屋上へ向かう。


 夜の校舎は昼間より静かだった。


 階段を上がる音だけが響く。


 最後の扉を開けた瞬間、ひんやりした風が吹き抜けた。


「……わあ」


 透真が思わず足を止める。


 空が、広かった。


 まだ完全な夜ではない。


 群青色の空に、一番星が小さく光っている。


 その景色だけで、胸がいっぱいになる。


「透真、こっち」


 和希に呼ばれ、透真は慌てて駆け寄った。


 屋上にはすでに望遠鏡がいくつか並べられている。


 昴が慣れた手つきで機材を調整していた。


 夜風に黒髪が揺れている。


 透真は少しだけ見惚れた。


「触ってみる?」


 不意に昴が言う。


「え……いいんですか」


「壊さなければ」


 透真は恐る恐る望遠鏡へ近づいた。


 レンズ。


 架台。


 細かな調整ネジ。


 近くで見ると、思った以上に精密だ。


「すご……」


 思わず呟く。


「これ反射式ですよね? 鏡筒の長さ的に焦点距離も結構あって……」


 また始まった。


 裕翔が小さく笑う。


 和希も「出た出た」と肩を震わせていた。


 でも透真は気づいていない。


「あと、このタイプだと木星とかかなり綺麗に見えません? え、今日見れますか」


「見れると思う」


「ほんとですか!?」


 透真が勢いよく顔を上げる。


 その瞬間、昴と目が合った。


 昴は一瞬だけ目を丸くして、それから小さく笑った。


「……そんなに嬉しい?」


「嬉しいです」


 即答だった。


 迷いがない。


 その真っ直ぐさに、昴は少しだけ視線を逸らす。


「ほら、見るなら早くしろ」


 薫が望遠鏡の位置を調整する。


「ずっと騒いでると見逃すぞ」


「え、どこですか!?」


 透真が慌てて覗き込む。


 数秒後。


「……っ!」


 息を呑む音がした。


「木星……!」


 透真の声が震えていた。


「すごい、ちゃんと縞見える……衛星も……!」


 目を輝かせたまま、透真は夢中で望遠鏡を覗いている。


 その横顔を。


 みんな、静かに見ていた。


 好きなものを前にした時だけ見せる顔。


 無防備で。


 まっすぐで。


 どうしようもなく、目が離せない。


「……ほんと、楽しそう」


 和希が小さく笑う。


 すると裕翔が、どこか誇らしそうに言った。


「昔からああなんですよ」


 その声は優しかった。


 夜風が静かに吹き抜ける。


 透真はまだ気づいていない。


 今この瞬間。


 自分がみんなに見つめられていることに。




読んでいただきありがとうございます!

透真が初めて天文部の観測会に参加する回です。


和希と薫は小学生からの仲で、

薫の入部動機は和希がいるからです。(恋心は無い)


毎日12時か21時に投稿予定です५✍⋆*

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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/

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