【第1章】第3話 透真のオタクモード
―第3話 透真のオタクモード
「で、透真はなんで星好きになったの?」
放課後。
天文部の部室で、和希が何気なくそう聞いた。
窓の外は夕焼け色で、部屋の中にはゆったりした空気が流れている。
透真は借りた星図を眺めていた手を止めた。
「……流星群です」
「流星群?」
「小学生の時に、たまたま見て」
そこまで言って、透真は少しだけ視線を上げる。
夕陽が黒髪に薄く差し込んでいた。
「あの時、すごく綺麗で……なんか、ちゃんと覚えてるんです。空気とか、星の光とか」
その声は静かだった。
けれど、好きなものを話す時特有の熱が少しずつ混ざっていく。
和希は頬杖をつきながら笑った。
「へえ、ロマンチックじゃん」
「別にそんな……」
透真が小さく首を振る。
その時、部室のドアが開いた。
「うるさ……って、なんだいるのか」
入ってきたのは、少し目つきの悪い男子だった。
黒髪に、少し着崩した制服。
耳には小さなピアスが光っている。
「薫〜、遅い」
「購買混んでた」
和希が透真たちを見る。
「あ、紹介まだだったね。こいつ薫」
「……どうも」
ぶっきらぼうな声。
でも透真はその名前に少し反応した。
「あ……薫って、同じクラスの」
薫は一瞬だけ目を細める。
「……ああ。窓際の」
「窓際の?」
「ぼーっと空見てるやつ」
「……見てた?」
「見えてた」
即答だった。
透真が少し気まずそうに黙る横で、裕翔が笑いを堪えている。
「透真、結構有名だぞ」
「なんで」
「昼休みに星の本読んでるから」
「えっ」
「あとたまに独り言してる」
「……してない」
「してる」
否定しきれない透真に、和希が吹き出した。
そんな中、部室の隅で本を読んでいた伊織が静かに顔を上げる。
「透真」
「……え?」
「星の話、好きなんだよね」
突然話を振られて、透真は少し驚く。
伊織は変わらず静かな顔のまま続けた。
「この前、図書室で天体の本読んでた」
「……あ」
見られていた。
透真が少し恥ずかしくなっていると、伊織はぽつりと呟く。
「何がそんなに面白いの?」
その問いに。
透真の目が、ぱっと輝いた。
「えっと……まず星って全部同じに見えるけど、実際は全然違って」
始まった。
裕翔が「お」と小さく笑う。
「色も違うんです。温度で変わるから。青白い星は温度高くて、赤っぽいのは少し低くて……あと星座も、昔の人が勝手に線繋げてるだけなのに、そこに物語があるの面白くて!」
どんどん早口になる。
透真自身、止まっていないことに気づいていない。
「望遠鏡も種類あるし、反射式と屈折式で違うし、月見るだけでもクレーター全然違って見えるし、あと流星群って毎年同じ時期に見える理由が──」
「待って待って待って」
和希が笑いながら止めに入った。
「情報量すごい」
「……あ」
透真がようやく我に返る。
顔が一気に赤くなった。
「す、すみません……!」
「だからなんで謝るんだよ」
薫が呆れたように言う。
でもその口元は少しだけ笑っていた。
透真はさらに恥ずかしくなる。
「いや、なんか……喋りすぎた気が」
「まあ喋りすぎではある」
裕翔が即答する。
「でも楽しそうだった」
「……」
「目、めちゃくちゃキラキラしてたし」
「っ……!」
透真が言葉に詰まる。
その反応が面白くて、和希がまた笑った。
一方で。
昴は窓際から静かにその様子を見ていた。
そして小さく呟く。
「……いいな」
「え?」
透真が振り返る。
昴は少しだけ目を細めた。
「好きなもの話してる時の顔」
その言葉に。
透真の胸が、少しだけざわついた。
読んでいただきありがとうございます!
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星が大好きな透真 ついつい早口になっていくのが可愛いんです♡
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