【第1章 】第2話 天文部見学
―第2話 天文部見学
「天文部……?」
透真が小さく呟くと、目の前の先輩は「うん」と軽く頷いた。
「俺、二年の和希。天文部」
柔らかく笑いながら差し出された手に、透真は少し戸惑いながらも頭を下げる。
「一年の、透真です」
「こっちは?」
「裕翔」
ぶっきらぼうに答えた裕翔を見て、和希はふっと笑った。
「仲良いね」
「まあ、腐れ縁なんで」
「へえ」
和希はどこか面白そうに二人を見比べる。
その視線に、なぜか裕翔が少しだけ透真の前へ立った。
和希は気づいたように目を細めたけれど、特に何も言わなかった。
「で、天文部。見学来る?」
その言葉に、透真の目が少しだけ揺れる。
天文部。
その響きだけで、胸の奥が少しそわついた。
「……星、見たりするんですか」
「するよ」
「望遠鏡とか……」
「あるある。部室にも行く?」
透真の目が、ぱっと輝く。
その変化を見て、和希は一瞬きょとんとしてから吹き出した。
「あはは、わかりやす」
「え?」
「いや、好きなんだなって」
透真は少し恥ずかしくなって視線を逸らした。
そんな透真を見て、裕翔が小さく笑う。
「始まった」
「……何が」
「好きな話の時だけ目キラキラすんの」
「してない」
「してるって」
和希は楽しそうにそのやり取りを見ていた。
「いいじゃん。そういうの」
その声は優しかった。
透真は少しだけ安心したように息を吐く。
「じゃあ案内するよ」
和希に続いて、三人は校舎を歩く。
天文部の部室は特別棟の三階らしい。
階段を上がる途中、和希がふと思い出したように振り返った。
「そういえば、もう一人いるかも」
「もう一人?」
「部長」
その言葉と同時に、和希が部室の扉を開けた。
カラン、と小さな音が鳴る。
部屋の中は思っていたより静かだった。
本棚。
星図。
古い望遠鏡。
窓際には大きな天体写真が並んでいる。
「……すご」
透真が思わず呟く。
その時だった。
「和希」
低く落ち着いた声。
窓際にいた男子生徒がこちらを振り返る。
黒髪。
整った横顔。
制服はきっちり着こなされていて、姿勢も綺麗だった。
透真は少しだけ息を呑む。
なんとなく。
夜が似合う人だ、と思った。
「見学?」
静かな声だった。
でも冷たいわけじゃない。
和希が笑いながら頷く。
「一年生。空好きなんだって」
すると、その先輩──昴はゆっくり透真を見る。
まっすぐな視線。
透真は少し緊張して背筋を伸ばした。
「一年の透真です」
「……昴。部長してる」
短い自己紹介。
それだけなのに、不思議と印象に残る。
昴は窓の外へ視線を向けながら言った。
「今日、夜晴れるらしい」
その一言に、透真の顔がぱっと明るくなる。
「ほんとですか?」
「うん。観測には良さそう」
「今の時期だと、春の大三角見えますよね。あと北斗七星も結構綺麗で……」
そこまで言って、透真はハッと口を閉じた。
しまった。
また早口になっていた気がする。
恐る恐る周囲を見る。
裕翔は吹き出しそうな顔をしていた。
和希は肩を震わせて笑っている。
そして昴は──
少しだけ目を見開いていた。
「……詳しいな」
その声に、透真はさらに恥ずかしくなる。
「す、すみません……」
「なんで謝るんだよ」
和希が笑う。
「好きなんでしょ?」
透真は小さく頷いた。
すると昴が、ふっとほんの少しだけ口元を緩める。
「……いいと思う」
静かなその言葉に。
透真の胸が、少しだけ温かくなった。
読んでいただきありがとうございます!
ちなみに天文部は2年生部長の昴、和希の他に
一応幽霊部員が数人いますがほぼ参加してないです
部活として成り立たせるための数集め部員です(笑)
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